ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2019年春学期)
憩いの川、鴨川
前川 江玲奈
(2017年度入学 鈴木ゼミ一期生)

 鴨川は、桟敷ケ岳付近を源とし桂川の合流点に至るまで京都市内の南北を流れる約23kmの河川である。また、流域面積は210㎢である。淀川水系であり、一級河川とされている。悠久の歴史の中で千年の都と京文化を育んできた川であり、今も大都市にあって清澄さを保ち、老若男女憩いの場として多くの人に親しまれている。

 今から1200年前の延暦13年(794年)、桓武天皇は長岡京から京都に都を移した。京都の地は、中国の風水という考えによれば「四神相応」の地で、鴨川はその守り神の一つとして平安京にとって重要な意味を持つ川であったとされている。平安京ができた頃、しばらくの間、神事は桂川で行われていたが、次第に鴨川で行われるようになった。このため鴨川は神聖な川とされている。また、京都の三大祭りの「葵祭」では、行列に参加する人々が、上賀茂神社や下鴨神社の境内で身を清めるために、鴨川やその地下水を使っている。

 今は穏やかに見える鴨川だが、その治水は昔、京都の人々を度々悩ませた。昭和10年には豪雨により鴨川から水が溢れ、大洪水が起こった。多くの家屋が流され、多くの死者もでた。これを契機として鴨川では昭和11年から22年にかけて抜本的な河川改修が進められ、現在では京都の街が鴨川の浸水被害を受けない整備水準を達成させている。今私たちが目にしている鴨川は、昭和の改修工事によって形作られたものなのだ。

 鴨川は季節の移り変わりとともに様々な顔を見せてくれる。ここでは、季節ごとの鴨川の魅力を紹介していきたいと思う。まず、春は河川敷に桜が咲き乱れ、桜の名所としても親しまれている。また、鴨川左岸の三条大橋から七条大橋までの間は「花の回廊」として整備が進められており、しだれ桜やソメイヨシノのほか、しだれ柳などが四季折々楽しめる散策路となっている。つぎに、夏の風物詩としては、やはり料理店や茶屋が川の上や川のよく見える屋外に座敷を設け、料理を提供する「納涼床」が最もよく知られているのではないだろうか。川の涼を感じながら食事を楽しむこの光景はとても風情があり、日本らしいので観光客にも大人気だ。鴨川が一番賑わっているのは、納涼床のあるシーズンなのではないかと感じる。また、秋は紅葉に染まった木々を楽しむことができる。あまり騒がしくなく、ゆったりしているので地元の人たちにも親しまれている。さいごに、冬の鴨川周辺には、京都を代表する鳥とも言われるユリカモメが多く見られる。ユリカモメは冬以外の期間はカムチャツカ半島で生活し、冬にだけ鴨川に訪れるので風物詩となっている。このように、鴨川は四季折々の魅力を持っており、絶え間無く我々を楽しませてくれる川であると言える。

 鴨川はたくさんの魅力を持っている。その中で私が最も好きなのが「鴨チル」である。これは見ての通り「鴨川でチルする」と言うものである。具体的には、鴨川の河川敷に座ってお酒などを飲みながらおしゃべりをしたり、のんびりしたりすることを言う。最近ではタピオカブームの影響もあって、タピオカを片手に「鴨チル」する人も多く見受けられる。また、「チルする」とは英語のスラング「chill out」からきた言葉で、「くつろぐ」や「まったりする」といった意味がある。友人と食事をしたり遊んだりした後、解散するのは名残惜しい、かといってどこか別の店に入るほどでもない、といったシチュエーションを誰しも経験したことがあると思う。そんな時にうってつけなのが「鴨チル」である。何と言ってもお金が安く済むし、川のせせらぎを聞きながらのんびりするのはとてもリラックスできる。鴨川から見える四条大橋や街の風景も雰囲気があってすごく良い。私は大阪出身なので、大学に入学するまではあまり京都で遊ぶ機会がなかった。だからこの言葉自体知らなかったのだが、”京都の学生感”が味わえると言う意味でも「鴨チル」をしている時間がすごく好きなのだ。

 今回様々なことを調べていく中で、鴨川は京都を語る上でなくてはならない存在だと改めて感じた。生活用水として人々の暮らしを支えるのはもちろん、動植物が溢れる豊かな自然は私たちに癒しをも与えてくれる。個人的に、鴨川の1番の魅力は市街地を流れる川でありながら、自然を目にすることができる点にあるのではないかと思った。それと同時に、賑わった場所の中に自然を感じられるところが京都の良いところだと感じる。京都は世界にも誇るべき日本を代表する観光都市である。そんな場所で毎日を送ることができるのはすごく貴重な事だとだと思う。私はこれまでの学生生活を京都の様々な歴史や魅力に触れながら過ごしてきた。今までは京都を知っていく側の人間だったのだが、これからはこの4年間の経験を生かして京都を知らせていく側になっていければ良いなと思った。

 

引用文献
鴨川. (日付不明). 参照日: 2020年1月4日, 参照先: ウィキペディア: https://ja.wikipedia.org/wiki/鴨川_(淀川水系)
京都府ホームページ 鴨川. (日付不明). 参照日: 2020年1月4日, 参照先: http://www.pref.kyoto.jp/kamogawa/
京都府建設交通部河川課. (日付不明). わたしたちの鴨川. 京都府建設交通部河川課.
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