ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年)
喫茶翡翠
太田 玲音
(2017年度入学 鈴木ゼミ一期生)

<喫茶翡翠について>
 北大路駅、京都市バス「北大路堀川」下車すぐに翡翠はある。翡翠は昭和36年(1961年)創業の純喫茶であり、現在、四代目となる店主が店を切り盛りしている。昭和レトロな雰囲気の中、ボックス席とカウンター席に加えてラウンド席が合わせて100席用意されており、ゆったりと時間を過ごすことができる。物語に登場するような喫茶店らしい喫茶店であり、実際にドラマの撮影にも使用されたことがある。また、この喫茶店ではコーヒーを抽出する際に一般的なペーパードリップ方式ではなく、ネルドリップ方式を採用していることも特徴である。

<ネルドリップ方式とは>
 ネルドリップ方式とは抽出する際にペーパーフィルターではなく、布フィルターを使用する。ペーパーフィルターよりも厚みのある層をお湯がゆっくり通過してゆくので、より濃度感のあるコーヒーとなる。繊維の厚いフィルターで濾されたコーヒーは口当たりがなめらかでコクのある味わいのコーヒーになるといわれている。そのため、ネルドリップ方式を指して「最高の抽出方法」と言うコーヒー愛好家が数多く存在する。因みに「ネル」とは、手触りが柔らかく起毛している織物「フランネル」のことで、「ネルシャツ」の「ネル」と同じものを指す。

<純喫茶とは>
 以前の日本には昼にコーヒーを提供し、夜にはアルコールを提供するスタイルの喫茶店が存在していた。一方で、そういったお酒を出す喫茶店との差別化を図るために、アルコールを提供しない純粋な喫茶店を「純喫茶」と呼ぶようになったとされている。因みに、喫茶店を開く際には食品衛生法施行令により、「喫茶店営業許可」というものが必要となっている。加えて、アルコールを提供することは出来ず、調理も簡単な加熱のみが許可されている。そのため、現在は喫茶店でも「飲食店営業許可」を取得しているところが多くある。

<京都の喫茶店の歴史>

(七十一番職人歌合 三巻ノ内、巻中(部分)
 室町時代の京都では、喫茶店の源流ともいえる「一服一銭」といわれた茶屋が,東寺の門前で生まれた。その後、明治30年頃に洋風の飲み物を提供するミルクホールが開店し、やがて明治末期にコーヒーと中心に提供するカフェーへと発展した。この頃のカフェーでは接客係の女給を置いたことから、夜には主に酒類を提供し、隣に座る女性に客がチップを払うといった、現在のスナックやクラブのような業態へと変質していった。そして大正から昭和の初めにかけてのカフェー全盛の時代を経て、カフェーからアルコール類を出さない純喫茶が分岐し、現在の喫茶店が誕生した。

<コーヒー消費が多い理由>
 京都市は、全国で指折りのコーヒー消費量の多い都市である。総務省統計局の調べでは、毎年のように年間購入量で全国トップクラスとなっている。総務省統計局が行なった2014~16年平均の家計調査によると、京都市はコーヒーの年間購入量で第1位に位置している。


(Statistical Room 京都の人はコーヒーを良く飲む?? http://www.pref.kyoto.jp/tokei/monthly/tokeikyoto/tk2016/tkroom201603.pdf)

 これに加えて、京都では人口10万人あたりの大学数が全国最多ということもあり、学生や教授が喫茶店に集まりコーヒーを飲む文化が根付いたと言われている。また、昔ながらの商店や飲食店も多いことが影響しているのか、自営業者も他県に比べると多いと言われている。


 また他方では、京都の食文化も影響していると言われている。京都はコーヒーの消費量が多いだけでなく、パンの消費量も全国の中で1位となっており、毎年秋口になると上賀茂神社の境内でパンフェスティバルが開催されているほどである。このようにパン食の文化が根付いていることが影響してコーヒーの消費量が増えることは自然と言える。

<京都の主な老舗喫茶店>
・進々堂 昭和5年創業
・リプトン・ティールーム1号店 昭和5年(1930年)創業
・フランソア喫茶室 昭和9年(1934年)創業
・イノダコーヒー本店 昭和21年(1946年)創業
・喫茶ソワレ 昭和23年(1948年)創業
・六曜社地下店 昭和25年(1950年)創業
・小川珈琲 昭和27年(1952年)創業
・等々

<文化を感じる>

 現在、ありとあらゆる場所に大手チェーンコーヒーショップ(ドトールコーヒーやスターバックスコーヒーなど)が展開しており、これらを利用する機会がとても多くなっている。そのため、喫茶店を利用し時間を過ごす機会が比較的少なくなっている。勿論コーヒーショップと喫茶店が利用者に求められているものは全く同じというわけではない。ただ、同じコーヒーを飲むという行為の中でも喫茶店は大手チェーンコーヒーショップとは異なり、長い時間が培ってきた喫茶店文化を感じることができる。また、喫茶店は慌ただしい日常とは別のゆったりとした時間と空間を過ごすこともできる。このような面で、喫茶店には様々な付加価値があるため、私は改めて喫茶店に立ち寄ってみる価値があるのではないかと考える。

参考
写真引用 喫茶翡翠 公式HP  https://caffe-0201.com/ (2019,5,4) (4,12)
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