ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2019年春学期)
祇園祭
前川 江玲奈
(2017年度入学 鈴木ゼミ一期生)

 祇園祭の由来は今からおよそ1,100年前、平安時代に京都で流行した疫病を鎮めるため、「祇園社(ぎおんしゃ)」(※現在の八坂神社)にて66本の鉾をつくり疫病の退散を祈願したのが始まりである。その後、政治的な問題から祇園祭中止の命令が出ることもあったが、存続を訴え続ける町衆の熱意により、現代まで継承されてきた。その祭事は、7月1日の「吉符入」に始まり7月31日の「疫神社夏越祭」まで、およそ1か月にわたって行われる。なかでも、祭のハイライトは7月17日と7月24日に行われる八坂神社の神輿渡御と33基の山鉾巡行。「京都祇園祭の山鉾行事」はユネスコ無形文化遺産にも登録されている。京都の歴史とともに歩んできた祇園祭は、京都の人たちにとって無くてはならない祭である。

 祇園祭の醍醐味と言えばやはり、山鉾巡行である。山鉾とは、豪華絢爛なタペストリーで飾られた山車のことを指し、その荘厳な姿から「動く美術館」とも称される。全33基のうち29基は重要有形民俗文化財指定にも指定されている。また、2014年より巡行が7月17日の「前祭(さきまつり)」と7月24日の「後祭(あとまつり)」に分かれて行われ、前祭では23基、後祭では10基の山鉾が京都市内を練り

歩く。特に曲がり角で山鉾が方向転換する『辻回し』の瞬間には、迫力があるため沿道から歓声が沸きあがる。33基ある山鉾巡行の順番は、室町時代にどの山鉾がどの順番で巡行するかということで争いが起こったため、現在は毎年7月2日に行われる「くじ取り式」で、くじにより順番が決められるようになった。しかし、毎年先頭を飾る長刀鉾など、いくつかの山鉾は順番が決まっており別名「くじ取らず」と呼ばれている。前祭の先頭を務める「長刀鉾(なぎなたほこ)」は、山鉾の中でも最も注目を集める存在。全基のうち唯一、神の使いとされる人間の子供・生稚児(いきちご)が乗る鉾である。巡行中、生稚児はとても重要な儀式、「注連縄(しめなわ)切り」を行う。
 お稚児さんは山鉾巡行の際、神の領域の境界線として張られている注連縄(しめなわ)を切り、結界を解く「注連縄(しめなわ)切り」を行う役目を担い、10歳前後の男児が務める。お稚児さんは毎年違う人が推薦などを通して選ばれるが、本人を含めその家族も祭事があるときは学業や仕事よりも優先し、関係者への謝礼や宴会代など多額の費用も負担することから、京都の老舗が協力し、その御子息がお稚児さんを務めることが多い。他の鉾の稚児が人形である中、長刀鉾だけは今でも生稚児が乗ることで注目を浴びているが、その伝統を支えるために地元の人たちの祇園祭への理解や協力、保存会の方々の努力があると言える。
 7月に入ると、神事の打ち合わせや、氏社である八坂神社の神職の方からお祓いを受け、祇園祭の無事を祈願する「吉符入(きっぷいり)」がそれぞれの山鉾町で行われる。長刀鉾の吉符入は例年5日に四条烏丸にある保存会所の2階で行われるが、その後に大きく開かれた窓から今年のお稚児さんが一般の方に向けてお披露目される。また、長刀鉾のお稚児さんは山鉾巡行での役目を全うするため、氏神である八坂神社の本殿にてお祓いを受ける。この儀式は「お位もらい」とも呼ばれ、五位の少将、十万石の大名と同じ格式を授けられるといわれており、厳粛に行われるため一般の人は本殿の中に立ち入ることはできない。この日を境に、お稚児さんは神の使いとして過ごすことになるのである。お位もらいが終わると、お稚児さんは公の場では地面に足をつけることが許されなくなり、「強力(ごうりき)」と呼ばれる男性の肩に担がれて移動する。また、女人禁制の言い伝えに従い、お稚児さんの世話は着物の着付けから食事の用意まで、すべて男性がすることになっている。お稚児さんは八坂神社まで白馬に乗って移動する。長刀鉾の役員も含め大人数で行進する様はさながら大名行列のようで、そこだけ時代を遡ったかのような不思議な感覚になる。歩くペースで行進されるので、歩道で一緒に歩いてついていく方も大勢見受けられる。

 宵山は、7月17日の前祭と24日の後祭に行われる山鉾巡行の前々日から3日間に渡って行われる「前夜祭」のような祭で、山鉾巡行に続いて観客数が多い人気の祭行事である。「前祭」の宵山は、14日の「宵々々山」から16日の「宵山」までの3日間開催され、夕方になると吊るした駒形提灯に火がともった山鉾に「コ・ン・チ・キ」の音色の祇園囃子を伴い、市街を引っ張って歩く。また、前祭りの宵山の15日と16日は夜になると露店や屋台が沿道に並ぶので観客が多いので、18時から23時頃まで四条通りの八坂神社から堀川までは、歩行者天国になる。「後祭」の宵山は、21日の「宵々々山」から23日の「宵山」までの3日間開催され、前祭の宵山ほど賑わいはないが、1100年以上に渡って続いている京都の伝統的な宵山の風景を見ることができるという。

1. さいごに
 私は、去年初めて祇園祭に足を運んだのだが、その際に強い感銘を受けた。祇園祭が始まった1100年前に比べると、当然京都の街は大きく発展を遂げ、変貌したといえるだろう。そんな中でもずっと変わらず伝統を引き継いでいるのが素晴らしいと思った。現代にこのような歴史のある行事をしても違和感を感じないのは、政府が条例などを設け、京都のこの伝統的な街並みを維持させてきたおかげなのではないかと感じる。京都は今後もこの伝統を守り、末長く日本の代表的な歴史的都市であり続けて欲しいと感じた。また、改めて祇園祭について調べてみて、まだまだ自分が知らないことがたくさんあると感じた。今年の祇園祭は、今回学んだことを意識して去年よりも有意義な時間を楽しみたいと思った。

引用文献
わかさ生活. (日付不明). 京都の伝統 祇園祭. 参照日: 2020年2月14日, 参照先: わかさ生活公式ホームページ: https://www.wakasa.jp/area/kyoto/gion/
株式会社S-fleage. (日付不明). 【2018年版】京都の祇園祭りはどう楽しむ?おすすめの見所と楽しみ方. 参照日: 2020年2月14日, 参照先: 八坂通り燕楽 公式ホームページ: https://ja.travel-kyoto-maiko.com/traveltips/6880
京都観光協会. (日付不明). 参照日: 2020年2月14日, 参照先: 京都観光Navi: https://ja.kyoto.travel/event/major/gion/
京都通百科事典. (日付不明). 祇園祭. 参照日: 2020年2月14日, 参照先: 京都通百科事典: https://www.kyototsuu.jp/Sightseeing/MatsuriGionMatsuri.html
中河桃子. (日付不明). 京都・祇園祭の絶対外さない楽しみ方ガイド. 参照日: 2020年2月14日, 参照先: ぐるたび: https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_2576/
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