ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年春学期)
テーマ「私の好きな京都」
宮内 魁大
(2018年度入学 鈴木ゼミ2期生)

 抹茶は、緑茶の一種である。碾茶を粉末にし湯を加え撹拌した飲料である。茶道で飲用として用いられるほか、和菓子、洋菓子、料理の素材として広く用いられている。源流は中国にあるが、日本発で世界的に知られるようになった。

<効果,成分>
  茶には眠気の除去や利尿作用など様々な効能がある。特に抹茶は茶葉を粉にして飲むため、葉に含まれる栄養素をそのまま摂取することができる。抹茶に含まれる主な成分は次のとおりある。

お茶の成分 一覧
・カフェイン  ・タンニン  ・ビタミン  ・ミネラル  ・アミノ酸(テアニン)
・たんぱく質  ・セルロース  ・サポニン  ・カテキン/ポリフェノール類
・鉄などの各種ミネラル類  ・香気成分(数十から数百種類)

<歴史>
 喫茶の風習は中国の唐代から宋代にかけて発展したものである。8世紀頃、中国の陸羽が著した『茶経』には茶の効能や用法が詳しく記されており、これは固形茶を粉末にして鍑(現在の茶釜の祖先)で煎じる団茶法であった。抹茶の発生は10世紀と考えられている。文献記録は宋時代に集中しており、蔡襄の『茶録』(1064年)と徽宗の『大観茶論』(12世紀)などが有名である。これらの文献では龍鳳団茶に代表される高級な団茶を茶碾で粉末にしたものを用いており団茶から抹茶が発生した経緯をよく表している。この抹茶を入れた碗に湯瓶から湯を注ぎ、茶筅で練るのが宋時代の点茶法である。京都の建仁寺、鎌倉の円覚寺などで行われるの四つ頭茶会はこの遺風を伝えている。日本には平安時代初期に唐から喫茶法が伝えられたが、抹茶法が伝わったのは鎌倉時代とされる。その伝来としては、日本の臨済宗の開祖となる栄西が1191年、中国から帰国の折に茶種と作法を持ち帰りその飲み方などが日本に広まったという説が有名である(茶道の項を参照)。
栄西の『喫茶養生記』には茶の種類や抹茶の製法、身体を壮健にする喫茶の効用が記されている。1214年には源実朝に「所誉茶徳之書」(茶徳を誉むる所の書)を献上したという。この時代の抹茶は、現在のような緑色ではなく茶色であった。
 伊藤園の2019年CSR報告書によれば、抹茶の歴史は茶葉の状態の違いや使用器具の違いから大きく4つの時代に分けられている。

第一期:800-1200年頃。茶葉は「餅茶」。粉砕には「薬研」を使用。
第二期:1200-1300年頃。茶葉は「露天栽培てん茶」。粉砕には「薬研」を使用。
第三期:1300-1600年頃。茶葉は「露天栽培てん茶」。粉砕には「切線主溝型茶臼」を使用。
第四紀:1600~現代。茶葉は「覆い下てん茶」。粉砕には「平滑周縁型茶臼」を使用。

第一期の餅茶というのは茶葉を煮た又は蒸した後に餅をつくように臼と杵を使ってついたものを乾燥させたものだ。第二期以降のてん茶は茶葉を蒸した後に冷却して乾燥させたものである。その後粉砕器具で細かくすることで抹茶パウダーができあがる。この茶葉と粉砕器具の違いによって抹茶の状態は変わってくる。
 昔の抹茶はただ苦いだけだった。抹茶はミルクや生クリームなどの乳製品との相性が良い。これは抹茶の旨味とミルクの甘味の組み合わせが、おいしさを引き立てることが関係している。ところが、昔の抹茶は苦味のほうが圧倒的に強かったとされている。先の報告書では4つの時代の抹茶を再現して試飲テストが行われた。その結果、第一期の抹茶は苦味が強く、第二期の抹茶から旨味が感じ、第三期は渋みやすっきりとした旨味、第四紀は甘味と旨味が強いという違いがでた。つまり甘味や旨味という抹茶の特徴は江戸時代から生まれた。こうした味の違いの理由には、栽培方法が大きく関係している。日に当てて育てる方法(露天栽培)では旨味の成分となる「テアニン」から苦味の成分となる「タンニン」が作られることで苦味が強くなる。一方で日光を遮断する覆い下栽培ではテアニンからタンニンが作られにくくなるため旨味が強くなる。
 さらに、 同じく4つの時代の抹茶を再現したテストではお湯に溶かした時の様子も違っていた。まず大きく違うのは色だ。第一期は茶色、第二期は緑色、第三期も緑色、第四紀は濃い緑色をしている。抹茶といえば緑のイメージが強いが昔は茶色い飲み物だった。
 また、粉砕方法の違いによって粒の大きさも違う事がわかった。薬研を使っていた第一期と第二期はそれぞれ約252μmと約148μmなのに対し、茶臼を使うようになった第三期と第四紀はそれぞれ約8.4μmと7.7μmでした。第一期や第二期は第三期や第四紀と比べて10倍も大きい粒をしていた。人の舌は30μm以上だとざらつきを感じるため、昔の抹茶はザラザラしていたようだ。粒の大きさはお湯への溶けやすさにも影響し薬研を使ったものはお湯に溶かしてもすぐに沈殿する一方で、茶臼を使ったものは溶け込みが良かった。
このように昔の抹茶は苦くてザラザラしていたが、昔の人は抹茶を眠気覚ましや消化を助ける薬として利用していた側面が強く、味わいは二の次だったのかもしれない。そんな薬として用いられた飲み物が今では世界中で人気の味になっている。この違いにとても驚く。抹茶は今後さらに進化を遂げていくかもしれないと私は思う。

<参考文献>
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宇治抹茶問屋4代目が教えるお抹茶のすべて / 桑原秀樹
伊藤園(2019)CSR報告書

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