ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年春学期)
京菓子
速水 雪乃
(2018年度入学 鈴木ゼミ2期生)

 京菓子は京都の土地で生まれ育ち、京都の人に愛されてきた和菓子である。京都は寺社仏閣の多い土地柄であり、伝統の祭礼や儀式のために多くの菓子が生み出されてきた。その他に仏様に供える供せん菓子、茶の湯によって洗練された茶菓子が作られ、発展した。京菓子は年中行事や季節感を大切にする京都の人々の美意識によって育まれてきた。これらの歴史は知られていないので、古代まで遡り菓子について述べていく。


唐菓子の一種「団喜」

 (木の実)や久多毛能(果物)である。この間食は果子と呼ばれた。その後、奈良・平安期には唐の国から「唐菓子(からくだもの)」が伝来した。「唐菓子」は米や麦の粉を水で練り、いろいろな形にして油で揚げたものといわれている。この唐菓子が和菓子に大きな影響を与えたとされる。
 同様に、大陸から伝わった喫茶も大きな影響を与えた。臨済宗の開祖である栄西が宋から茶を持ち帰り、禅僧や武家の間に広めた。喫茶の文化が深まる中でわび茶が出現し、茶の湯が広まった。室町時代の茶席には点心と呼ばれる軽食に、羹(あつもの)という汁があった。具材によって種類が異なり、その中に羊羹があった。羊羹はもともと羊の肉が入った汁だったが、日本は獣肉食の習慣がなかったため羊の肉に似せて麦や小豆の粉でかたどったものを入れていた。その羊の肉に似せて作っていたものが汁物から離れて誕生したのが羊羹の始まりである。また、当時の茶会記には、栗・饅頭・昆布・ふの焼きなどが菓子に用いられていたという記述があった。大航海時代には、ポルトガル人やスペイン人により南蛮菓子としてボーロ・金平糖・有平糖(あるへいとう)・カステラ・パンがもたらされた。
 これらの菓子は江戸時代に入って大きく発展した。江戸時代には京菓子と江戸菓子の二系統が対立し、それぞれの特徴を生かして成長を遂げた。現在食べられている和菓子の多くは江戸時代に誕生したものである。


一和のあぶり餅

 このような歴史を持つ和菓子は寺社仏閣周辺でも楽しめる。京都で一番古い門前茶屋は今宮神社の参道にある。それが一文字屋和輔(一和)だ。向かいに建つかざりやとともに店の表で「あぶり餅」を焼き続けている。今宮神社を参拝した時にあぶり餅を食べることは定番で、お正月にはどちらの店にも行列ができている。あぶり餅は一口サイズの餅が手作業で串に通されていて、炭であぶった香ばしさと白味噌のたれが絶品である。あぶり餅は、戦乱や飢饉の時に庶民に振る舞われ、病気・厄除けのご利益がある。この他にも上賀茂神社のやきもち、下鴨神社のみたらし団子、北野天満宮の粟餅など有名な門前のお菓子がある。寺社仏閣の雰囲気とともに、京都らしさが感じられておすすめである。


紫陽花がモチーフの和菓子

正月の和菓子「花びら餅」

 私が和菓子に興味を持ったのは、小学生の頃である。紫陽花をモチーフにした和菓子がとても可愛らしかった。寒天が露のようにキラキラと輝き、目を惹かれた。「食べるのが勿体無い」と感じたことを鮮明に覚えている。和菓子は茶道を始めるきっかけにもなった。茶道では主菓子(練り切り・饅頭・団子・ちまき・きんとんなど)と干菓子(落雁・金平糖など)が使われる。茶菓子には茶会を豊かにする役割がある。例えば、季節を表現し、お茶のおいしさを引き立てる。大学の部活動でも茶会を開催しており、テーマと季節に合わせた和菓子でお客様に楽しんでいただいている。今までの茶会の中で、学祭の時にテーマの「月」に合わせて和菓子屋にオリジナルの和菓子をつくってもらったことが印象深い。

 今まで様々な京菓子を見てきた。京菓子は味覚で味を、嗅覚で香りを、触覚で口当たりや喉越しを、視覚で色や見た目の美しさを、聴覚で菓子の名前を聞くなど、五感で楽しむことができる。特に、目で見て季節を楽しめる点が特有の魅力だと思う。季節を表す和菓子は、昔からの行事に関連のある和菓子と四季を表現する和菓子に分けられる。新年行事「歯固めの儀式」を簡略化した花びら餅や「夏越祓」という行事に関係する水無月などが行事関連の和菓子になる。また、四季を表現する和菓子は、形や色で季節が感じられる。これは、季節を象徴する自然や物がかたどられている。
 お店に行くと、四季折々の季節の移ろいが感じられる。京都には数多くの和菓子屋がある。最近ではカフェが併設された和菓子屋も存在し、気軽に立ち寄りやすい。季節が変わるごとに和菓子屋を訪れてみてはいかがでしょうか。

参考文献
井上由理子(2004), 京都の和菓子 老舗の味へおこしやす 学習研究社
全国和菓子協会, 和菓子の歴史, https://www.wagashi.or.jp/monogatari/shiru/rekishi/ (参照 2020-07-01)
京菓匠鶴屋吉信オンライン, 京菓子の歴史, https://www.tsuruyayoshinobu.jp/shop/pages/gallery_history.aspx, (参照 2020-07-01)
鎌倉 豊島屋, 京菓子上菓子時代, https://www.hato.co.jp/history/period5.html (参照 2020-07-23)

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