「京都といえばこれ」、思い浮かべただけでも多くある。抹茶、寺社仏閣、鴨川、着物。これらに留まらず、京都には数え切れない魅力が存在している。それらの魅力をより引き立てるものが、京都の品のある景観だ。先に述べた抹茶やお寺などは単体でも魅力がある。しかし、それらを他の街で体験することと、品のある京都で体験するのでは大きな違いがある。抹茶やお寺、着物を着る体験などは京都に行かなくてもできるだろう。しかし多くの人はやはり京都で体験したいと考えている。ではそのような品のある景観が、なぜ都市化の進む現在まで保たれているのかを考察していく。
　歴史的で品のある街並みを今に伝える京都。なぜそのような景観が現在にまで保たれているのか、その理由は京都が厳しい景観規制によって守られているからである。規制の内容は『京都市景観計画』によって示されている。『京都市景観計画』とは、京都の優れた景観を守り、育て、つくり、そしてこれらを生かしていく為、景観づくりに関する総合的な計画として、平成17年12月に策定された。これにより現在の京都の美しい景観が保たれている。
　特に注目したいのが、街にあふれる看板だ。本計画における、「屋外広告物等景観整備計画」の項目では、指定された地区において、「木や鋳物等の素材を用いた歴史的、伝統的な雰囲気を持つ屋外広告物が数多く表示されており、これらの屋外広告物と町並み及び建造物とが調和して、伝統的なたたずまいを形成している。この地区では、これらの屋外広告物の保存を行うとともに、町並み及び建造物と調和した屋外広告物等により景観の整備を図るものとする」とある。これにより京都市の指定された区域では、全国チェーン店舗の看板でも他市町村で見るものとは少し違ったデザインとなっている。その代表的なものが次の写真だ。

上記の写真は、左が全国の一般的な「セブンイレブン」である。右の写真は京都市烏丸にある「セブンイレブン」だ。見比べてみると、やはり京都市は歴史的な風貌を感じるつくりとなっている。京都の全ての店がこのような意匠ではないが、他にも多種多様な看板に京都らしいデザインが施されている。これらは『京都市景観計画』に基づく規制によってつくられたものであり、このように他市町村とは違った看板が見られることも、私たちからすれば大きな魅力である。

　次に、私の出身県にある奈良市と京都市の違いを考察する。奈良と京都では地域イメージの捉え方が異なる。例えば、私個人の意見に過ぎないが、奈良はやはり「大仏と鹿」のイメージが強過ぎる。大仏殿や奈良公園以外の観光地等を訪れても、「大仏と鹿」のイメージが強いあまり、その他の観光地等では魅力が伝わりにくい。奈良には京都にも負けない文化財が多く存在しているが、大仏と鹿以外を観光する場合、その観光地等の予備知識がなければそれらを楽しむ事ができない。それに比べて京都の良さは、誰もがイメージする「古都」の雰囲気が味わえる分かりやすさがある。
　私自身、京都産業大学に通うようになってから、「古都」の雰囲気を体感する事がある。特に京都の中心部は高いビルに囲まれ、都市化が進展しているにもかかわらず、先に述べた看板などに京都らしさが表れている。歩くだけで京都の風情と都会を同時に味わえることが魅力だ。

本レポートを作成する事で、京都の景観が保たれている理由や、奈良市とは違う魅力を再認識することができた。これらの景観は多くの人たちの知恵によって作られた『京都市景観計画』や、看板に施された工夫のおかげで生まれたものだ。都市化が進む中でも、京都の品のある景観をよりわかりやすく伝えている背景について知ることができた。

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