ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年春学期)
暮らしの中の堀川
加藤 龍之介
(2018年度入学 鈴木ゼミ2期生)

 私の好きな京都は「堀川」である。
 私が堀川を選んだ理由は、川が好きということだ。なかでも、川の流路や形態の歴史、利用のされ方などを調べたり、考察することが好きだ。川は自らの力、もしくは人の手によって流れを変え、地形や暮らしに影響を与える。大きな変化であれば扇状地や三日月湖、形に残らない変化なら染め物やカッパ伝説も、川がつくり出したものだ。人の心から雄大な地形までをも変えながら流れる川は、単なる水の流れを超えた何か特別なものがあるように感じる。昔の人が、龍を川の神として祀った背景も、川の流れに神聖さを感じたからだろう。かくいう私も名前に「龍」の字が入っているためか、川があると気になってしまう。私は西賀茂に下宿しているため、京都駅へ向かう市バスの車窓から堀川をよく見る。初めて堀川を目にした時、都会の道路のすぐ側を川が流れている光景は珍しく、興味を持った。鴨川や高瀬川と違い、あまりスポットライトの当たらない堀川だが、調べるうちに深い歴史のあることがわかってきた。

 現在の堀川は琵琶湖疏水の分線を水源とし、鴨川をサイフォンで立体交差したのち、紫明通から地上へ流れ出ている。そして、堀川紫明で堀川通に入り、二条城付近まで地上を流れた後、暗渠である堀川下水放水渠を通り、近鉄上鳥羽口駅付近で再び地上へ顔を出し、鴨川に注ぐ。

 京都に平安京が築造された当時、碁盤の目の南北方向に沿って何本もの川が設けられていた。川は生活用水や物資の運搬、農業用水や「友禅流し」など、様々に利用されてきた。『延喜式』の「京程」よると、造営当初の堀川小路の規模は川幅約12m、左右にはそれぞれ幅約3.45mの道路を持つ合計幅約24mと記載されており、小路ながら大路規模の幅を持っていたことがうかがえる。右京にも同じ構造の西堀川小路が造られたが、そちらは右京の荒廃に伴ってほぼ現存していない。また現在の堀川も、戦後の浸水対策事業によって水源が絶たれ、合流式下水道の雨天時の放流先としての機能を持つ、コンクリートで底張りされた水路になっていた。

 京都では昔から川を生活の中に取り入れてきた背景があり、堀川の地域に暮らす人々からも、清流を復活させたいという声が多数上がっていた。これを受けて京都市は、「憩い」と「やすらぎ」の水辺空間の創出と、災害時の消防利水として活用できるようにすることを目指し、平成9年度から堀川水辺環境整備事業を開始した。事業は元誓願寺通から押小路通の堀川開渠部、堀川通・紫明通の親水施設の大きく2つに分かれる。堀川開渠部では元からある川を活かし、せせらぎや遊歩道、ベンチ、ステージなどを整備した。上流の堀川通・紫明通においては、中央分離帯に生えている樹木を活かし、地域のシンボルとなるように、新たに川を整備した。万が一水の供給が止まった場合でも、交差点地下の横断管の水を消防利水として使えるようにするなど、防災面にも配慮がなされている。
 堀川の清流復活にあたっては、堀川中央幹線建設事業が大きな役割を果たしている。これは堀川通の地下に直系6mの巨大な下水管路を整備する事業で、この事業によって雨天時において堀川に放流していた下水の吐口を塞ぐことができた。
 これらの「堀川水辺環境整備構想」を策定するにあたり、京都市では沿川住民の意見を構想に反映させるため、ワークショップを開催した。整備区間を5つに分けたゾーン別ワークショップで、「堀川を探検する」、「整備目標を語り合う」、「目標からデザインにする」といった活動を行った。平成12年12月からおよそ10ヶ月にわたり82回のワークショップが開催され、延べ1000人を超える参加があった。何度も目標に立ち返り、模型の制作や他の川の事例をして、ついに平成13年9月29日に堀川の整備構想が発表された。私はこのことを聞いて、住民が川の整備に携わるということは、住民の地域づくりに対する意欲の高さの表れであり、住民自治が発達した京都ならではのことだと感じた。

 今回の原稿を書くにあたり、実際に堀川の地上区間を歩いて観察した。それにより、水辺で遊ぶ子供や、ベンチでくつろぐ大人の姿が多数見られ、親水公園として地域住民の憩いの場になっていることを感じることができた。鴨川などとは違い、堀川を訪れる観光客は少ない。しかし、街中の川ならではの暮らしとの距離の近さと、ゆったり流れる時間という魅力が、堀川にはあると私は考えた。

<参考文献>
・堀川水辺環境整備事業,京都市情報館,京都市役所,2010,3,31, https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000070401.html (2020,6,30)
・堀川小路,花の都,理覚 http://www.mutsunohana.net/miyako/oji-koji/#etc2-64 (2020,6,30)
・もう一つの堀川,発掘ニュース87,公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所,2008-10, https://www.kyoto-arc.or.jp/news/leaflet/237.pdf (2020,6,30)
・人々の川への思いが伝わる場所・堀川,明日の下水道第67号,一般社団法人日本下水道施設業協会,2014-07
  http://www.siset.or.jp/contents/dl.cgi?conid=323&oid=599325&id=327 (2020,6,30)
・堀川(京都府),Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%80%E5%B7%9D_(%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C) (2020,6,30)

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