ゼミ生が語る「私の好きな京都」(2020年春学期)
京都の喫茶店について
大内 清楓
(2018年度入学 鈴木ゼミ2期生)

 コーヒー消費量が日本一の政令指定都市・京都市。街には日本のコーヒー文化の歴史を感じられる喫茶店やカフェが新旧多く存在し、珈琲文化圏を形成している。1930年(昭和5年)に創業し、京都で初めてフランスパンを提供したことでも知られている『進々堂』を初め、国の登録有形文化財にもなっている1934年(昭和9年)創業の『フランソア喫茶室』、また京都モーニングで有名な1958年(昭和33年)創業の『イノダコーヒー』など、日本に喫茶文化が広がった時期に創業した喫茶店が多く残っており、魅力溢れるお店が多い。京都で喫茶店が根付いた歴史や、喫茶店の魅力などを調べてみたい。

 喫茶店の歴史は室町時代の1400年頃にさかのぼる。東寺の門前などでは喫茶店の源流ともいえる「一服一銭」といわれた茶屋が出店されていた。近年になり、1897年(明治30年)に洋風の飲み物を提供するミルクホールが開店。その後、昭和初期の全盛時代に「カフェー」と呼ばれるものに発展した。「カフェー」とは、女給がコーヒーや洋酒を客席に運び、流行歌を歌うなどのサービスを提供する店で、サロン的な場所となっていた。そして、「カフェー」からアルコール類を出さない「純喫茶」に分かれ、現在の喫茶店へと繋がる。喫茶店という呼び名の方が古いイメージだが、実際は喫茶店より前に「カフェー」が生まれていたのである。

また、京都の喫茶店は建物が歴史的であるという特徴がある。例えば、国の重要文化財「京都文化博物館別館」内の旧日本銀行京都支店の金庫室を使って、2014年(平成26年)2月4日にオープンした『前田珈琲文博店』。旧日本銀行京都支店として使用されてきた建物であり、1988年(昭和63年)から京都文化博物館別館として公開されている。1906年に竣工され、明治を代表する洋風建築として1969年(昭和44年)に国の重要文化財に登録された。他には四条河原町にある『フランソア喫茶室』は、1934年(昭和9年)9月に誕生した。2003年(平成15年)1月31日に喫茶店として全国初となる国の登録有形文化財に建物が指定された。

 次に、たくさんある京都の喫茶店の中で私が実際訪れたお気に入りの喫茶店を二つ紹介する。

 一つ目は中京区にある『Coffee&Bar六曜社」。老舗喫茶店として知られている。1950年(昭和25年)に地下で開店し後に喫茶店は1階へ移転した。地下店はバーになったが、1985年(昭和65年)頃から昼間に関しては自家焙煎のコーヒーの店として営業が始まった。1階の店には『六曜社珈琲店』、地下の店には『六曜社地下店」という看板が掲げられている。私は一度『六曜社地下店』を訪れた。階段を降り、扉を開けるとコーヒーのいい匂いが店内に広がっている。隠れ家のように薄暗くて落ち着く。名物はコーヒーと自家製ドーナツ。特にドーナツは、甘さ控えめ、手作りで素朴な味が良い。レトロな店内で過ごす時間は、新鮮だけどどこか懐かしい雰囲気を感じることができた。ただ、現代では珍しく分煙されていないので好みは分かれるだろう。

 二つ目は錦市場の近く、富小路沿いの建物の2階にある『喫茶 百景』。2019年(令和元年)8月にオープンした新店である。錦市場の近くという街中にもかかわらず、店内はおしゃれな音楽が流れる落ち着いた雰囲気の隠れ家的な喫茶店。以前はブティックだったスペースをカフェに改造されたと聞いた。打ちっ放しの店内にエジソンバルブのLED照明が素敵。バスクチーズケーキがおいしくてすぐに食べきってしまった。

 私がこの二つのお店に惹かれているのには共通点がある。それは、店内の雰囲気だ。人通りが多く喧騒な街中から離れ、コーヒーやスイーツを嗜みながら落ち着いた時間を過ごすことができる。隠れ家的なところに非現実を感じる。レトロな内装にも惹き付けられる。

 京都の喫茶文化や特徴などを知り、今までよりもさらに喫茶店愛が増した。珈琲を提供する喫茶店は、日本のコンビニエンスストアの倍の店舗数を誇る一般市民の憩いの場である。これからも多くのお店を訪れて、行きつけの喫茶店やお気に入りの喫茶店を増やしていきたい。

出典
http://kyoto00glo.blog.jp/archives/cat_196043.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/茶屋
https://trip-camera.com/odekake-spot/spot-kansai/kyoto/maeda-coffee-bunpakuten/
https://kyotopi.jp/articles/BKK5x

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