北欧神話用語語学解説
京都産業大学外国語学部では、英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ロシア語・中国語・韓国語・インドネシア語を専門的に学ぶことができます。
- ここでは北欧神話用語の語学的な面のみを記述している。それぞれの用語が指している内容については書いていない。
- 見出しのカタカナ表記は日本語で使われているものを優先している。古ノルド語の発音を考慮すると異なるカタカナ表記の方が良いように思われる場合でも、日本語ではあまり見ない表記は避けている。
- 古ノルド語の綴りは、基本的に Cleasby and Vigfusson (1874) An Icelandic-English Dictionary を参考にしている。アイスランド系の綴りで、例えば、「ラグナロク」は、Ragnarøkではなく、Ragnarök、「ヨトゥンヘイム」は、Jǫtunheimrではなく、Jötunheimrとなる。
- 北欧神話用語の語源はしばしば諸説が入り乱れていて混乱を極めている。ここでは語学的に根拠があると思われるものを取り上げてはいるが、それでもそれが正しいとは言い切れず、真相は歴史の闇の中である場合がある。
- 適宜、英語やドイツ語との関連も示した。
- アースガルズ
- 【Ásgarðr】áss(アース神族の神)とgarðr(囲った土地)の複合語。garðrは英語yard(庭)と同源語で、英語garden(庭)、ドイツ語Garten(庭)も同じ語源に遡る。
- アース神族
- 【áss】複数形æsir。ássはアース神族の神を指す単数名詞なので、アース神族を指すなら複数形のæsir。ássはルーン文字ᚨの名前でもある。
- アールヴ
- 【álfr】複数形álfar。英語elf(エルフ)は同源語。
- アールヴァク
- 【Árvakr】ár(早く)とvakr(目覚めている)の複合語で、「早起きの」の意。vakrは、英語wake(眼をさます)、ドイツ語wecken(目覚めさせる)と関連する。
- アールヴヘイム
- 【Álfheimr】álfr(エルフ)とheimr(家・村・地方・世界)の複合語。heimrは英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- アウズフムラ
- 【Auðhumla】auðrは「富」。-humlaは「角がない」と言う意味だと推測されている。全体で「乳がたくさん出る角のない牛」と言う意味だと考えられる。
- アウズムラ
- 【Auðumla】Auðhumlaのhが脱落した形。
- アウズンブラ
- 【Auðumbla】Auðumlaのmとlの間にbが挿入された形。
- アウルゲルミル
- 【Aurgelmir】aur-はaurr(泥)か? -gelmirはgjalla(叫ぶ)やgala(叫ぶ)と関連づけて「叫ぶもの」を意味すると考えられている。
- アルヴィース
- 【Alvíss】al-(この上なく)とvíss(賢い)の複合語。al-は英語all-(この上なく)と同語源。ドイツ語と同語源。víssは英語wise(賢い)、ドイツ語weise(賢い)と同語源。
- アルスヴィズ
- 【Alsviðr】al-(この上なく)とsviðr(素早い・賢い)の複合語。al-は英語all-(この上なく)と同語源。ドイツ語と同語源。
- アングルボザ
- 【Angrboða】angrは「悲しみ」。この語は英語anger(怒り)の語源。全体で「悲しみをもたらす者」の意とされる。boðaはboði(使者)の女性形か。
- アンドヴァラナウト
- 【Andvaranautr】AndvaraはAndvariの属格で「アンドヴァリの」。nautrは「贈り物」だが、強奪されたものについても言う。よって、「アンドヴァリからの贈り物」、つまり「アンドヴァリから取ったもの」と言うことになる。
- アンドヴァリ
- 【Andvari】捕食性の魚の名称らしい。アンドヴァリは魚に姿を変えて食べ物を捕まえていたと言う記述に合う。他方、andvariには「警戒・用心」と言う意味もあるので、この名前は「用心深い者」を意味するともされる。
- イアールンヴィズ
- 【Járnviðr】járn(鉄)とviðr(森)の複合語。járnは英語iron(鉄)、ドイツ語Eisen(鉄)と同源語。Viðr英語wood(森)と同源語。
- イーヴァルディ
- 【Ívaldi】Ýr(イチイの木、[イチイの木から良い弓ができることから]弓)とvaldr(使い手、支配者)の複合語に由来し「弓の使い手」あるいは「イチイの木の支配者」を意味するという説や、Yngvi(ユングヴィ)とvaldr(使い手、支配者)の複合語に由来するという説がある。
- イザヴェル
- 【Iðavöllr】völlrは「野」。
- イズン
- 【Iðunn】
- ヴァーリ
- 【Váli】
- ヴァール
- 【Vár】「誓い・婚約」を意味するが、この語は複数形várarのみで用いられ、単数形で用いられるのはこの女神の名前だけ。
- ヴァナディース
- 【Vanadís】vanaはvanr(ヴァン神族の神)の複数属格で「ヴァン神族の」の意。dísは「女神」の意。全体で「ヴァン神族の女神」で、フレイヤのこと。
- ヴァナヘイム
- 【Vanaheimr】vanaはvanr(ヴァン神族の神)の複数属格で「ヴァン神族の」の意。heimrは「家・村・地方・世界」の意で、英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- ヴァナルガンド
- 【Vánagandr】VánarはVán(ヴァン川)の属格で「ヴァン川の」の意。vánには「希望」の意味があるが、川の名前としては皮肉で「絶望」を意味しているとも言われている。gandrの意味ははっきりしないが、ここでは「怪物」のようなものの意。
- ヴァフスルーズニル
- 【Vafþrúðnir】
- ヴァラスキャールヴ
- 【Valaskjálf】valaは「殺された者の」の意。skjálfは「棚」の意で、英語shelf(棚)と同源語。
- ヴァルキュリャ
- 【valkyrja】英語Valkyrie。ドイツ語Walküre。val-はvalr(殺された者)。-kyrjaはkjósa(選ぶ)の派生形で「選ぶ者」という意味とされている。全体で「戦場で殺されたものを選ぶ者」の意とされる。kjósaは英語choose(選ぶ)と同源語。
- ヴァルハラ
- 【Valhöll】val-はvalr(殺された者)。höllは「館」。Höllは英語hall(ホール、館)、ドイツ語Halle(ホール)と同語源。
- ヴァン神族
- 【vanr】複数形vanir。vanrはヴァン神族の神を指す単数名詞なので、ヴァン神族を指すなら複数形のvanir。
- ヴィーグリーズ
- 【Vígríðr】vígは「戦い」の意。
- ヴィーザル
- 【Víðarr】
- ヴィリ
- 【Vili】「意志」の意。英語will(意志)、ドイツ語Wille(意志)と同源語。
- ヴィンゴールヴ
- 【Vingólf】
- ウートガルザ・ロキ
- 【Útgarða-Loki】ÚtgarðaはÚtgarðarの属格で、「ウートガルズの」の意。ロキと区別するために「ウートガルズの」をつけている。
- ウートガルズ
- 【Útgarðar】útは「外に」で、英語out、ドイツ語ausと同源語。garðarはgarðr(囲った土地)の複数形だが、ここでは「砦」の意味らしい。garðrは英語yard(庭)と同源語で、英語garden(庭)、ドイツ語Garten(庭)も同じ語源に遡る。
- ヴェー/ヴェーイ
- 【Vé/Véi】
- ヴェルザンディ
- 【Verðandi】「なる、起る」という意味の動詞verðaの現在分詞を名詞化した語なので、「なりつつあるもの、起きていること」という意味になる。さらに「現在」を意味すると解釈されるが、この点については「ウルズ」の項を参照されたい。verðaはドイツ語のwerden(なる)と同源語。→ウルズ、スクルド
- ヴェルンド
- 【Völundr】英語Wayland。
- ヴォル
- 【Vör】
- ヴォルスング
- 【Völsungr】複数形のVölsungarはヴォルスング家を指す。
- ヴォルスング家
- 【Völsungar】一族の始祖の名前Völsungr(ヴォルスング)の複数形。
- ウル
- 【Ullr】
- ウルザルブルン
- 【Urðarbrunnr】UrðarはUrðr(ウルズ)の属格で「ウルズの」の意。brunnrは「泉」の意。
- ウルズ
- 【Urðr】「運命」の意。「なる、起る」という意味の動詞verðaの過去形と関連付けて「過去」を意味するとされている。実際に語形を確認すると、1人称複数形urðum・2人称複数形urðuð・3人称複数形urðuの語幹urð-をUrðrの語幹Urð-と同一視したと考えられる。これは、ウルズ・ヴェルザンディ・スクルドの三姉妹を過去・現在・未来を意味すると解釈するための後付けであろう。→ヴェルザンディ、スクルド
- エイクシュルニル
- 【Eikþyrnir】「樫の角をした」の意味と説明されることがあるが、これは、Eikþyrnirをeik(オーク)とþyrnir(棘)に分析した上での解釈であろう。
- エイル
- 【Eir】
- エインヘリアル
- 【einherjar】einnは「1」。heriarはherr(軍勢)の複数形。herrはドイツ語Heer(軍)と同語源。
- エーギスヒャールム
- 【Ægishjálmr】ÆgisはÆgir(エーギル)の属格で「エーギルの」の意。hjálmrは「兜」の意で、英語helm(兜)、ドイツ語Helm(兜・ヘルメット)と同源語。英語helmet(ヘルメット)はhelmの派生語。「恐怖の兜」(Helm of Awe, Helm of Terror)とも呼ばれるが、Ægisをagi(恐怖)に結びつけた解釈かもしれない。agiは英語awe(恐怖)の語源。
- エーギル
- 【Ægir】「海」の意。
- エーリヴァーガル
- 【Elivágar】vágarはvágr(波)の複数形。
- エーリューズニル
- 【Éljúðnir】
- エッグセール
- 【Eggþér】eggは「刃」。-þérは「召使」の意味で名前の後半に使われる。eggは英語edge(端・縁)、ドイツ語Ecke(角・隅)と同源語。
- オーズ
- 【Óðr】óðrには「気の狂った・激怒した」や「心・歌」といった意味がある。
- オーディン
- 【Óðinn】北欧神話のオーディンは、英語やドイツ語ではOdin。北欧以外のゲルマン神話において英語でWodenウォーデン、ドイツ語でWodanヴォーダン、Wotanヴォータンと呼ばれる神に対応する。英語Wednesday(水曜日)は、「ウォーデンの日」。水曜日はラテン語ではdiēs Mercuriī(メルクリウスの日)で、ローマ神話のメルクリウスがウォーデンと同一視されたため、「ウォーデンの日」となった。ドイツ語では水曜日はMittwoch(週の真ん中)と言う。Wodenstag(ヴォーダンの日)と言う言い方もあったが、現在ではドイツ北部に残っているだけらしい。→オティヌス
- オティヌス
- ラテン語Othinus。オーディンのラテン語名。→オーディン
- ガルドル
- 【galdr】
- ガルム
- 【Garmr】「犬」の意。
- ギャラルブルー
- 【Gjallarbrú】GjallarはGjöll(ギョル)の属格で「ギョルの」の意。brúは「橋」の意。
- ギャラルホルン
- 【Gjallarhorn】Gjallarはgjöll(騒音)の属格で「騒音の」の意。Hornは「角・角笛」で、英語horn(角・角笛)、ドイツ語Horn(角・角笛)ど同語源。
- ギョル
- 【Gjöll】「騒音」の意。
- ギンヌンガガプ
- 【Ginnungagap】gapは「裂け目」で英語のgap(隙間)の語源。
- グズルーン
- 【Guðrún】Guð-はgoð(神)で名前の前半で使われる形。rúnは「秘密・ルーン文字」の意。
- グナー
- 【Gná】
- グニタヘイズ
- 【Gnitaheiðr】heiðrは「荒野」の意で、英語heath(荒野)と同語源。
- グニパヘリル
- 【Gnipahellir】hellirは「洞窟」の意。
- グラズヘイム
- 【Glaðsheimr】glaðは「嬉しい」で、英語glad(嬉しい)と同源語。heimrは「家・村・地方・世界」の意で、英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- グラニ
- 【Gráni】「灰色の牡馬」の意。grár(灰色の)の派生語だろう。Grárは英語gray(灰色の)、ドイツ語grau(灰色の)と同源語。
- グラム
- 【Gramr】「怒り」の意。
- グリトニル
- 【Glitnir】「輝くもの」の意味だとされている。glita(輝く)の語幹glit-に名詞化接尾辞-nirをつけたものであろう。
- グリョートトゥーナガルザル
- 【Grjóttúnagarðar】grjótは「石」。túnaはおそらくtún(囲った土地)の複数属格。garðarはgarðr(囲った土地)の複数形。garðrは英語yard(庭)と同源語で、英語garden(庭)、ドイツ語Garten(庭)も同じ語源に遡る。
- グリンブルスティ
- 【Gullinbursti】gullinn(金の)とburst(剛毛)の複合語。gullinnは英語golden(金の)、golden(金の)と同源語。burstは英語bristle(剛毛)、ドイツ語Borste(剛毛)、Bürste(ブラシ)と同源語。
- グルトップ
- 【Gulltoppr】gull(金)とtoppr(房、馬の前髪)の複合語。gullは、英語gold(金)、ドイツ語Gold(金)と同源語。
- グルファクシ
- 【Gullfaxi】gullは「金」、faxは「たてがみ」で、全体で「金のたてがみの(牡馬)」の意。gullは、英語gold(金)、ドイツ語Gold(金)と同源語。→スキンファクシ、フリームファクシ
- グレイプニル
- 【Gleipnir】
- グロッティ
- 【Grotti】
- クワーシル
- 【Kvásir】
- グングニル
- 【Gungnir】
- グンナル
- 【Gunnarr】gunnr(戦い)に-arr(軍勢)を加えた名前。ドイツ語の名前Gunther/Güntherと同語源。
- グンロズ
- 【Gunnlöð】gunnr(戦い)とlöð(招待)の複合語。
- ゲイルロズ
- 【Geirröðr】geirrは「槍」。
- ゲヴィヨン
- 【Gefjon】
- ゲリ
- 【Geri】「狼」の意。gerr(貪欲な)の名詞化。「貪欲な者」から「狼」を意味する。→フレキ
- ゲルズ
- 【Gerðr】おそらくgarðr(囲った土地)からの派生語。garðrは英語yard(庭)と同源語で、英語garden(庭)、ドイツ語Garten(庭)も同じ語源に遡る。
- サーガ
- 【Sága】
- シヴ
- 【Sif】「婚姻関係」を意味するが、この語は複数形sifjarのみで用いられ、単数形で用いられるのはこの女神の名前だけ。
- シギュン
- 【Sigyn】
- シグニュー
- 【Signý】
- シグムンド
- 【Sigmundr】sigrは「勝利」。ドイツ語のSieg(勝利)と同語源。-mundrは「守り、守る者」を意味する。
- シグルーン
- 【Sigrún】sigr(勝利)とrún(秘密・ルーン文字)の複合語。
- シグルズ
- 【Sigurðr】sigr(勝利)とvörðr(見張り)の複合語が縮約したものととされる。sigはドイツ語のSieg(勝利)と同語源。
- シグルドリーヴァ
- 【Sigrdrífa】sigrは(勝利)。drífaはここでは「駆り立てる者」の意味だと考えることができ、そうすると全体で「勝利へと駆り立てる者」と解釈される。英語drive(駆り立てる)を参照。
- シゲイル
- 【Siggeirr】sigr(勝利)とgeirr(槍)の複合語。
- シャールヴィ
- 【Þjálfi】
- シャツィ
- 【Þjazi】
- シュン
- 【Syn】「拒絶」の意。
- ショヴン
- 【Sjöfn】
- スヴァジルファリ
- 【Svaðilfari】
- スヴァルトアールヴ
- 【Svartálfar】svartr(黒い)とálfr(エルフ)の複数形álfarの複合語。svartrはドイツ語schwarz(黒い)と同源語。
- スヴァルトアールヴヘイム
- 【Svartálfheim】Svartálfar(スヴァルトアールヴ)とheimr(家・村・地方・世界)の複合語。heimrは英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- スカジ
- 【Skaði】skaðiは「害、損害」を意味する。
- スキーズブラズニル
- 【Skíðblaðnir】skíðは「木片・薪・かんじき」。この語はski(スキー)の語源。船の形がかんじきに似ていることから船を表す表現に使用される。Blaðnirは、blað(葉)に名詞化接尾辞-nirを付加したものか。blaðは英語blade(刃)、ドイツ語Blatt(葉)と同源語。
- スキールニル
- 【Skírnir】「輝く者」を意味するとされている。skírr(明るい)の語幹skír-に名詞化接尾辞-nirをつけたものか。
- スキンファクシ
- 【Skinfaxi】skinは「輝き」、faxは「たてがみ」で、全体で「輝くたてがみの(牡馬)」の意。skinは、skína(輝く)の名詞形。Skínaは、英語shine(輝く)、ドイツ語scheinen(輝く・〜のように見える)と同源語。→グルファクシ、フリームファクシ
- スクリューミル
- 【Skrýmir】
- スクルド
- 【Skuld】「負債」の意。ドイツ語Schuld(負債)と同語源。さらに「未来」を意味すると解釈されるが、この点については「ウルズ」の項を参照されたい。英語の助動詞shall/shouldやドイツ語の助動詞sollenも語源的に関連している。→ヴェルザンディ、ウルズ
- スコル
- 【Sköll】sköllは「あざけり」を意味する。
- スノトラ
- 【Snotra】snotrは「賢い」の意。snotraは「賢い女」の意であろう。
- スリーズルグタンニ
- 【Slíðrugtanni】slíðrは「恐ろしい」の意。tannは「歯」の意。全体で「恐ろしい歯をした(もの)」と言う意味。tannは英語tooth(歯)、ドイツ語Zahn(歯)と同語源。
- スリュム
- 【Þrymr】「騒音」の意。
- スリュムヘイム
- 【Þrymheimr】þrymr(騒音)とheimr(家・村・地方・世界)の複合語。heimrは英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- スルーズ
- 【Þrúðr】古ノルド語では女神の名前以外では複合語の要素としてしか使われなくっているようだが、語源的には「強さ」の意味だった。
- スルーズゲルミル
- 【Þrúðgelmir】Þrúð-は「強さ」の意(「スルーズ」を参照)。-gelmirはgjalla(叫ぶ)やgala(叫ぶ)と関連づけて「叫ぶもの」を意味すると考えられている。
- スルス
- 【þurs】ルーン文字ᚦの名前でもある。
- スルト
- 【Surtr】svartr(黒い)と関連して「黒い者」などの意味と考えられている。svartrはドイツ語schwarz(黒い)と同源語。
- スレイプニル
- 【Sleipnir】「滑るように早く走るもの」と言う意味と考えられている。sleipr(滑りやすい)の語幹sleip-に名詞化接尾辞-nirをつけたものか。
- セイズ
- 【seiðr】
- セーフリームニル
- 【Sæhrimnir】sær(海)とhrím(煤)と名詞化接尾辞-nirに分解できるので、「海の煤けたもの」と言う意味と考えることができる。イノシシになぜこのような名前が付けたかは議論になっている。
- セックヴァベック
- 【Sökkvabekkr】sökkvaは「沈む」で、bekkrは「長椅子」なので、「沈んだ長椅子」と言う意味だと考えることができる。諸説あり。
- ソール
- 【Sól】「太陽」の意。英語sun(太陽)、ドイツ語Sonne(太陽)と語源的に関連している。ルーン文字ᛋの名前でもある。
- ダーイン
- 【Dáinn】「死んだ」の意。
- ダーインスレイヴ
- 【Dáinsleif】DáinsはDáinn(ダーイン)の属格で「ダーインの」の意。leifは「遺産」の意。
- ダグ
- 【Dagr】「昼」の意。英語day(日)、ドイツ語(日)と同源語。
- タングニョースト
- 【Tanngnjóstr】tannは英語tooth(歯)、ドイツ語Zahn(歯)と同語源。
- タングリスニル
- 【Tanngrisnir】tannは英語tooth(歯)、ドイツ語Zahn(歯)と同語源。
- ディース
- 【dís】「女神」の意。
- デックアールヴ
- 【Dökkálfar】dökkr「暗い」とálfr(エルフ)の複数形álfarの複合語。
- テュール
- 【Týr】普通名詞týrは「神」。英語Tuesday(火曜日)は「テュールの日」。ギリシア神話のゼウス、ローマ神話のユピテル(ジュピター)、その他の印欧語族の神々と語源的に密接に関連しており、印欧祖語から受け継いだ神名である。火曜日はラテン語ではdiēs Mārtis(マルスの日)で、ローマ神話のマルスが軍神であるためにテュールと同一視されたため、「テュールの日」となった。ドイツ語Dienstag(火曜日)については、「テュールの日」に由来するかどうか不明。týrルーン文字ᛏの名前でもある。
- テュルヴィング
- 【Tyrfingr】
- デリング
- 【Dellingr】「夜明け」の意。
- ドヴェルグ
- 【Dvergr】英語dwarf(ドワーフ)。ドイツ語Zwerg(ドワーフ)。
- トール
- 【Þórr】英語Thor。ドイツ語Donar。英語thunder(雷)、ドイツ語Donner(雷)と同語源。英語Thursday(木曜日)、ドイツ語Donnerstag(木曜日)は「トールの日」。木曜日はラテン語ではdiēs Jovis(ユピテルの日)で、ローマ神話のユピテルがトールと同一視されたため、「トールの日」となった。
- ドラウプニル
- 【Draupnir】drjúpa(したたり落ちる)の派生語らしい。英語のdrip(したたり落ちる)と関連する。9夜毎に8個の腕輪がしたたり落ちるということからの名称らしい。
- トロル
- 【troll】
- ナグルファル
- 【Naglfar】nagl(爪)とfar(船)の複合語で、「爪でできた船」を意味する。
- ナンナ
- 【Nanna】喃語nanna(ママ)が起源かもしれない。
- ニーズホッグ
- 【Níðhöggr】
- ニヴルヘイム
- 【Niflheimr】nifl(霧)とheimr(家・村・地方・世界)の複合語。Niflはドイツ語Nebel(霧)と同源語。heimrは英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- ニヴルヘル
- 【Niflhel】nifl(霧)とhel(死者の国)の複合語。Niflはドイツ語Nebel(霧)と同源語。helは英語hell(地獄)、ドイツ語Hölle(地獄)と同源語。
- ニョルズ
- 【Njörðr】
- ノート
- 【Nótt】「夜」の意。英語night(夜)、ドイツ語Nacht(夜)と同源語。
- ノルン
- 【Norn】複数形はNornir。
- バーサーカー
- 英語berserker。ベルセルクの英語。→ベルセルク
- ハティ
- 【Hati】hata(憎む)の行為者名詞で「憎む者」の意か。hataは英語hate(憎む)、ドイツ語hassen(憎む)の同源語。
- バルドル
- 【Baldr】
- ビフレスト
- 【bifröst】北欧神話における虹の呼称。
- ヒミンビョルグ
- 【Himinbjörg】himinnは「天」の意。björgはbjarg(崖)の複数形。Himinnは英語heaven(天)、ドイツ語Himmel(天)と同語源。bjargはドイツ語Berg(山)と同源語。
- ビュグヴィル
- 【Byggvir】bygg(大麦)と関係があると考えられている。
- ヒュミル
- 【Hymir】
- ヒュロッキン
- 【Hyrrokkin】hyrr(残り火)とrjúka(煙を出す)の過去分詞rokkin(煙を出した)のかばん語。hyrr(残り火)とhrokkin(しわのよった)のかばん語とする説もある。
- ヒュンドラ
- 【Hyndla】「雌の子犬」の意。hundr(犬)の派生語か。hundrは英語hound(猟犬)、ドイツ語Hund(犬)と同源語。
- ヒョルディーズ
- 【Hjördís】hjörr(剣)とdís(女神)の複合語。
- ビルスキールニル
- 【Bilskírnir】bilは「瞬間」の意。skírnirは、skírr(明るい)の語幹skír-に名詞化接尾辞-nirをつけたものか。
- ヒルド
- 【Hildr】「戦い」の意。
- ファーヴニル
- 【Fáfnir】
- フヴェルゲルミル
- 【Hvergelmir】hverrは「大釜・温泉」の意。-gelmirはgjalla(叫ぶ)やgala(叫ぶ)と関連づけて「叫ぶもの」を意味すると考えられている。
- ブーリ
- 【Búri】bera(生む)と関係しており、「生む者」といった意味だと考えられる。beraは英語bear(生む)と同源語。→ボル
- フェニヤ
- 【Fenja】fen(沼地)からの派生語で「沼地に住む者」という意味だろうと推測されている。しかし、スウェーデンの言語学者アクセル・コックAxel Kockは、フェニヤとメニヤが共に石臼を引く巨人の女奴隷だったことから、彼女達の名前を穀物やそれを挽くことあるいは奴隷に関わる言葉から解釈を試みるのが良いとし、スウェーデン語の方言fanor(籾殻)やフィンランド語の方言fanu(オート麦の殻)からかつてfana(籾殻)という単語があったと想定し、そこからfenia(籾殻を取り除く)という動詞が派生し、さらにそれが動作名詞として「籾殻を取り除く者」を意味するようになったとして、Fenjaの意味を「(石臼で)籾殻を取り除く者」の意味とした。→メニヤ
- フェンサリル
- 【Fensalir】fenは「沼地」の意。salirはsalr(大広間)の複数形。
- フェンリル
- 【Fenrir】「fen(沼地)に棲むもの」という意味らしい。
- フォーストブレーズララグ
- 【fóstbræðralag】fóstr(養育)、bræðra(兄弟たちの)、lag(同盟関係)の複合語。bræðraはbróðir(兄弟)の複数属格で、英語brother(兄弟)、ドイツ語Bruder(兄弟)の同源語。
- フォールクヴァング
- 【Fólkvangr】fólk(人々・軍勢)とvangr(野原)の複合語。fólkは英語folk(人々)、ドイツ語(民族)と同語源。
- フォルセティ
- 【Forseti】forsetiは「前に(for-)座るもの(-seti)」と分析でき、「裁定者・調停者」の意味がある。しかし、元々は異なる語との説もある。
- フギン
- 【Huginn】hugr(心・精神・考え)の派生語。フギンとムニンはそれぞれ「思考」と「記憶」を意味すると言われているが、これはHuginnとMuninnをそれぞれhuga(考え出す)とmuna(思い出す)の派生語とみなした解釈だろうか。→ムニン
- フッラ
- 【Fulla】fullr(いっぱいの・満ちた)の弱変化女性形。豊富や豊かさを意味していると考えられる。fullrは英語full(いっぱいの)、ドイツ語voll(いっぱいの)と同語源。
- フュルギャ
- 【Fylgja】fylgjaは「ついて行く」を意味する。
- ブラギ
- 【Bragi】bragr(最良の者、詩)と関係あると考えられている。
- ブリーシンガメン
- 【Brísingamen】brísingaはbrísingr(火)のおそらく複数属格で(火の)の意。menは「首飾り」の意。men Brísingaとも。
- フリームファクシ
- 【Hrímfaxi】hrímは「霜」、faxは「たてがみ」で、全体で「霜のたてがみの(牡馬)」の意。hrímは、英語rime(霜)と同源語。→グルファクシ、スキンファクシ
- フリーン
- 【Hlín】
- フリズスキャールヴ
- 【Hliðskjálf】hlið(側面)あるいはhlið(門・開口部)とskjálf(棚・椅子)の複合語。skjálfは英語shelf(棚)と同源語。
- フリッグ
- 【Frigg】英語Friday(金曜日)、ドイツ語Freitag(金曜日)は「フリッグの日」。金曜日はラテン語ではdiēs Veneris(ウェヌス【ヴィーナス】の日)で、ローマ神話のウェヌスがフリッグと同一視されたため、「フリッグの日」となった。
- フリュム
- 【Hrymr】「老いて弱った者」と言う意味だという説は、hrumr(老いて弱った)と結びつけた解釈だろう。
- ブリュンヒルド
- 【Brynhildr】brynja(鎖帷子)とhildr(戦い)の複合語。
- ブル
- 【Burr】「息子」の意。bera(生む)と関係している。beraは英語bear(生む)と同源語。Borrとも言う。→ブーリ
- フルングニル
- 【Hrungnir】
- フレイ
- 【Freyr】本来は「主」の意。
- ブレイザブリク
- 【Breiðablik】breiðr(幅の広い)とblik(輝き)の複合語。breiðrは英語broad(幅の広い)、ドイツ語breit(幅の広い)と同源語。
- フレイヤ
- 【Freyja】「婦人」の意。
- フレースヴェルグ
- 古ノルドHræsvelgr。hræは「死肉」の意。svelgrは「渦巻」の意だが、比喩的に「飲み込むもの」を意味する。
- フレキ
- 【Freki】「狼」の意。krekr(貪欲な)の名詞化。「貪欲な者」から「狼」を意味する。→ゲリ
- フローズヴィトニル
- 【Hróðvitnir】hróðr(名声)か。vitnirは「狼」の意。
- ブローズグホーヴィ
- 【Blóðughófi】blóðugr(血まみれの)とhófr(ひづめ)の複合語。変異形のBlóðhófr(ブローズホーヴ)を参照。→ブローズホーヴ
- ブローズホーヴ
- 【Blóðhófr】blóð(血)とhófr(ひづめ)の複合語。Blóðughófi(ブローズグホーヴィ)の変異形。blóðは英語blood(血)、ドイツ語Blut(血)と同源語。hófrは英語hoof(ひづめ)、ドイツ語Huf(ひづめ)と同源語。→ブローズグホーヴィ
- フロッティ
- 【Hrotti】「剣」の意。
- ヘイズルーン
- 【Heiðrún】
- ヘイムダル
- 【Heimdallr】
- ベイラ
- 【Beyla】
- ヘーニル
- 【Hænir】
- ベリ
- 【Beli】belja(吠える)と関係付けられて「吠える者」を意味するとされる。
- ヘル
- 【Hel】hel(死者の国)の神格化。英語hell(地獄)、ドイツ語Hölle(地獄)と同源語。
- ヘルギ
- 【Helgi】helgiはheilagr(聖なる)の弱変化男性heilagiの短縮形なので、「聖なる者」と解釈できる。しかし、語源は異なるとの説もあり。
- ベルゲルミル
- 【Bergelmir】ber-(熊)あるいはberg(山)。-gelmirはgjalla(叫ぶ)やgala(叫ぶ)と関連づけて「叫ぶもの」を意味すると考えられている。
- ベルセルク
- 【berserkr】ber-(熊)とserkr(シャツ、皮)の複合語で、「熊の皮を着た者」を意味すると考えられる。ber-は、英語bear(熊)、ドイツ語Bär(熊)と同源語。スノッリはber-をberr(裸の)と取って、全体で鎧を着けずに戦に行く者を意味すると解釈した。berrは、英語bare(裸の)と同源語。英語ではberserker[バーサーカー]。
- ヘルモーズ
- 【Hermóðr】herr(軍勢)とmóðr(怒り)の複合語。herrはドイツ語Heer(軍)と同語源。móðrは英語mood(気分)、ドイツ語Mut(勇気)と同源語。
- ホズ
- 【Höðr】「戦い」の意。
- ボル
- 【Borr】→ブル
- マグニ
- 【Magni】magn(力)からか。
- マーニ
- 【Máni】「月」の意。英語moon(月)、ドイツ語Mond(月)と同源語。
- ミーミル
- 【Mímir】
- ミズガルズ
- 【Miðgarðr】miðr(中央の)とgarðr(囲った土地)の複合語。miðrは英語mid(中央の)やドイツ語Mitte(中央)と同語源。garðrは英語yard(庭)と同源語で、英語garden(庭)、ドイツ語Garten(庭)も同じ語源に遡る。
- ミズガルズオルム
- 【Miðgarðsormr】Miðgarðr(ミズガルズ)の属格Miðgarðs(ミズガルズ)とormr(蛇)の複合語。
- ミョルニル
- 【Mjöllnir】
- ムスペル
- 【Múspell】
- ムスペルスヘイム
- 【Múspellsheimr】Múspell(ムスペル)とheimr(家・村・地方・世界)の複合語。heimrは英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- ムニン
- 【Muninn】munr(心・欲望・喜び・愛)の派生語。フギンとムニンはそれぞれ「思考」と「記憶」を意味すると言われているが、これはHuginnとMuninnをそれぞれhuga(考え出す)とmuna(思い出す)の派生語とみなした解釈だろうか。→フギン
- メギンギョルズ
- 【megingjörð】meginは「力」。gjörðは「帯」。
- メニヤ
- 【Menja】men(首飾り)と関連するか。スウェーデンの言語学者アクセル・コックAxel Kockは、フェニヤとメニヤの話の内容から、Menjaをman(奴隷)と関連付けている。→フェニヤ
- モージ
- 【Móði】móðr(不機嫌な)の弱変化男性か。
- モーズグズ
- 【Móðguðr】móðr(激怒)とguðr(戦い)の複合語。
- モックルカールヴィ
- 【Mökkurkálfi】mökkr(雲)とkálfr(子牛)の複合語。kálfrは英語calf(子牛)、ドイツ語Kalb(子牛)と同源語。
- ユグドラシル
- 【Yggdrasill】uggr(恐怖)の変異形Yggr(恐ろしき者[オーディンの別称])とdrasill(馬)の複合語。オーディンが首を吊った木がユグドラシルであり、そのため絞首台を比喩的に「馬」と言う言葉が使われているとしばしば説明されている。
- ユミル
- 【Ymir】
- ヨトゥン
- 【jötunn】
- ヨトゥンヘイム
- 【Jötunheimr】jötunn(巨人)とheimr(家・村・地方・世界)の複合語。heimrは英語home(我が家)、ドイツ語Heim(我が家)と同源語。
- ヨルムンガンド
- 【Jörmungandr】Jörmun-は「巨大な」。gandrの意味ははっきりしないが、ここでは「怪物」のようなものの意。
- ラーン
- 【Rán】「強奪」を意味する。
- ラグナロク
- 【ragnarök】ragnaはregin(神々)の属格で「神々の」の意。rökは「運命」の意。全体で「神々の運命」となる。rökをrökr(黄昏)と取り違えたragnarökrという言葉もあり、このため、しばしば「ラグナロク」は「神々の黄昏」と訳される。
- ラタトクス
- 【Ratatoskr】rata-については諸説あり。toskrは「牙」の意で、英語のtusk(牙)と同語源。
- リシ
- 【risi】ドイツ語Riese(巨人)と同源語。
- リョースアールヴ
- 【Ljósálfar】ljósは「光」とálfr(エルフ)の複数形álfarの複合語。
- ルーン文字
- 【rún】もともと「秘密」という意味。
- レーヴァテイン
- 【Lævateinn】teinnは「小枝」。
- レーラズ
- 【Læraðr】
- ロヴン
- 【Lofn】
- ロキ
- 【Loki】英語Loki。ドイツ語Loki。lúka(閉じる、終わらせる)やlok(蓋、終わり)と関連させて「閉じる者、終わらせる者」を意味するといする説が比較的有力そうである。lúkaは英語lock(錠をかける)と同源語。
- ロスクヴァ
- 【Röskva】röskr(勇敢な)の弱変化女性形。
- ロドゥル
- 【Lóðurr】
©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)
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