財務会計のシステムと基本原則:後半(8期生ゼミ)(2017年10月5日)

こんにちは!8期生の藤井です。遅くなりましたが、秋学期最初の発表は加藤くんが行いました。

2章前半で説明された損益計算では注意することがありました。それは、どのような基準で収益・費用あるいは純財産を決定するのか。なぜなら、用いる基準によって最終的な損益の大きさが変わり、もしかしたら、利益があったとしても損失としていることもありうるからです。したがって、正しい損益計算をするためには、収益・費用あるいは純財産の正しい基準、会計基準が必要となってくるのです。
日本の会計基準は主に企業会計基準、企業会計原則、財務諸表等規則、会計計算原則が挙げられます。これらが一体となることで今日の財務会計の基準を形成しているのです。企業会計基準とは、企業会計基準委員会という公益財団法人・財務会計基準機構が運営している組織が設定した、会計処理及び開示の基本となるルールとなっています。次に挙げた企業会計原則は 1949 年金融庁の企業会計審議会が公表した損益計算書と貸借対照表とに共通するルールを示したものである一般原則、収益・費用の処理と表示の原則である損益計算原則、資産・負債・資本の金額決定と表示の原則である貸借対照表原則という三つの原則から成り立ちます。これらが支える会計基準によって、財務会計の秩序が保たれているのです。そして、財務諸表を利用する人にとってより分かりやすいものとなり、また企業ごとに比較することも可能になりました。
次に、損益計算の基本原則に移ります。損益法による損益計算は、損益=収益-費用 で計算されるために収益と費用を「いつ」「どれだけ」計上するのかが重要となります。したがって、収益・費用を「いつ計上するのか」は認識基準で、「いくらで計上するのか」は測定基準と決まっています。認識基準は、費用を消費という事実の発生に基づいて認識する消費基準と、収益を販売という事実の達成に従って認識する実現基準、これらを組み合わせた発生主義会計により、損益計算は行われるのです。
しかし、発生主義会計以外にも損益を計算する方法はあります。それが、現金主義会計です。これは、現金の収入や支出があったときに、それぞれ収益や費用を認識する方法です。そのために、利益獲得活動に払ったに費用とその収益が適切に対応せず、会計期間ごとの経営成績が損益計算書に正しく反映されないという問題が生じます。よって、現在は多くの企業が発生主義会計を用いります。発生主義会計は先ほど述べたように消費基準と実現基準で成り立っています。財貨またはサービスを消費したときに費用として計上することを消費基準、現金収入に関わらず、販売という事実が生じた時点で収益を認識するが、未実現の収益は認識しないということを実現主義といいます。ただし、有価証券などの金融資産は、時価の変動で当期の損益が当期の損益として認識される場合があるので注意が必要です。
次に費用・収益の測定基準を説明します。費用は過去または現在の支出額に基づき決まり、収益は現在または未来の収益額に基づいて決まります。このように、収益・費用を「いくら計上するのか」は過去・現在・未来における支出額と収入額に基づき判断されます。これを収入支出額基準による測定というのです。費用の発生は、消費基準と収入支出額基準で把握されますが、注意する点が二つあります。一つは、発生学がすべて当期の費用となるわけではない点です。もう一つは、消費基準で 費 用の発生額をすべて認識することはできないという点です。そして、この二つを解決するのが費用収益対応の原則なのです。費用収益対応の原則は、費用の発生額のうち当期の収益獲得に貢献した部分を抜き出し、それを当期の費用とします。
また、設備の修繕のような費用はたとえ財貨を消費していなくても、当期に修繕費用を見越し計上すべきです。したがって、財やサービスが未消費であっても適切な期間損益計算のため、費用を認識する必要があります。この場合、発生費用から期間費用を把握する原則としての機能に加え、一部の費用を認識する費用収益対応の原則が役立つのです。
収益と費用を対応させる方法は、直接的対応と間接的対応があります。売上高と売上原価で用いられる直接的対応は、収益と費用の対応関係を直接的かつ個別的に把握します。支払利息と受取利息で用いられる間接的対応は、同一期間に計上された収益と費用は会計期間を媒介にし、対応関係を把握します。
発生主義会計は、費用収益対応の原則が正しく適用されることで、その合理性を高められます。そのことが、発生主義会計の「期間ごとの収益と費用が適切に対応づけられ、その結果、企業の経営成績が損益計算書へと適切に表示される」という最大の利点を生かせる要因となっています。
資産と負債の金額決定を評価といいます。注意すべき点は、損益法で算定された利益額と財産法で算定された利益額は一致する、ということです。したがって、費用と収益の認識測定基準と資産と負債の評価基準は整合的でなければいけません。この資産の評価基準は大きく二つに分類されます。それが取得原価基準と時価基準です。取得原価基準は、その資産を取得した時点の価格に基づき、その貸借対照価額を決定するものです。取得評価基準では書面に記載された価格を反映させるのみであり、客観的にその価値を把握しやすく、またのちにその価額が妥当かも判断しやすいという特徴があります。ただし、取得後の価格変動を一切反映しません。時価基準は、その資産の評価を貸借対照価額とするものです。もしも、商品の時価を貸借対照価額にした後に時価が取得原価を上回った場合は評価益を損益計算書に計上します。時価基準では主観が入りやすく、その価額の妥当性をのちに見極めることも困難です。ゆえに、客観性と検証可能性が必要と感 じられるならば、取得原価基準。価額の変動を逐一反映させる必要があるならば、時価基準が適しています。
設備、建物などは修繕や補修といった将来の費用を生む資産は費用性資産といいます。費用性資産の取得原価はいったん資産計上されたのち、その消費に応じて各事業年度の費用として配分する必要があります。これを費用配分の原則といいます。代表的には減価償却費がこれに当たります。