国際活動(前半)(2016年11月24日)

7期生の吉田です。11月24日のゼミの活動を報告します。今回のゼミでは教科書の8章「国際活動」の前半部分についてでした。企業活動の国際化のもとでの取引、財務諸表の作成の仕方についてです。
 企業活動が国内だけにとどまらず、国際化していくと財務諸表の作成に影響がある。例えば、輸出入や外資での資金調達と運用などにより、取引に日本円以外の外貨が使われるようになる。このように売買価格その他の取引価額が外国通貨で表示されている取引を外貨建取引と呼ぶ。外貨建取引で使われた外貨は日本円に変えなければならない。このように外貨を用いて測定・表記された項目を日本円に直すことを換算という。換算が必要な3つのケースがある。1つ目は、日本国内に属する本店が外国の取引をした時である。本店の財務諸表に含まれる外貨表示の資産・負債の項目を換算します。外貨建取引についてはその発生時点で日本円に換算して取引記録を行い、外貨建項目は貸借対照表への計上を決算時に再検討する必要がある。2つ目は、日本国内の本店が外国に支店している時である。外貨通貨で表示されている在外支店の財務諸表の項目を、企業全体の財務諸表を作成する前に日本円に換算しなければならない。3つ目は、海外に子会社を持ち、企業集団全体の連結財務諸表を作る時である。これは連結財務諸表を作る際に在外子会社の財務諸表の項目を日本円に直してを親会社の財務諸表と合算しなければならないからである。連結財務諸表とは法律的に親子関係にある2つ以上の企業からなる集団を単一の組織とみなして親会社の当該企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況を総合的に報告するものである。 
 為替レートの変動によって企業の損益に大きく影響が出ます。海外の通貨はその値が常に一定ではないものが存在する。例えばその当時アメリカで$1=100円だったのが$1=80円、120円と円高円安になり自国と他国の通貨の交換比率が変わってしまう。このため、売掛金を回収するまでに為替レートが変動してしまう時がある。この時に生じて得た利益を為替差益、失った損失を為替差損という。このときに発生する損益を損益計算書で表現するにあたって2つの方法がある。1つ目が、1取引基準である。財貨の輸出入と代金の決済が分離できない一連の取引時輸出入の収益や費用を日本円での最終的な決算額で測定します。代金が決済されるまで収益や費用は未確定である。2つ目は、2取引基準である。財貨の輸出入と代金の決済を独立した別個の取引とみなします。売買による為替差益や為替差損は利益とは別に損益計算書に記載されます。また、輸出入による収益と利益は取引発生時点での為替レートによる換算で確定され、その後の為替差益や為替差損は売買の利益とは区別して損益計算書に記入する。また、売掛金の回収よりも先に決算日が来た場合、未回収分の売掛金を決算日現在の為替レートで換算しなおすかどうかという問題が起きる。例えば、原価150万円の車を1台$20,000($1=100円)でアメリカに輸出したとして、このとき得られる利益は50万円である。これが決済日までに$1=85円になったとしよう。取引時の為替レートで換算されたら200万円で損益計算書に計上される。しかし、決済日のレートで換算すると170万円になり、30万の目減りが生じる。よって、財務諸表を表すには売掛金200万円から170万円に切り下げ、切り下げられた30万円は損益計算書に損失として計上される。この損失は為替換算差損と呼ばれる。さらに決済時までに為替レートが変動し、$1=80円になったとしよう。このときの損失は為替決済差損と呼ばれる。損益計算書上では為替換算差益や為替決済差益では区別せず、為替差益や為替差損と記入する。1取引基準では取引が一連のものとなっているため売掛金の決済に発生した損益を仕入に関しては仕入勘定、売上に関しては売上勘定で処理をする。よって、次期に当期の仕入勘定、又は売上勘定の修正をしないといけないため処理が困難になる。一方、2取引基準は当期の決済日に仕入勘定、又は売上勘定が確定できるため処理が1取引基準と比べると簡単になる。
 為替レートには3つの適応区分があります。1つ目がHR(Historical Rate)と呼び、換算をし直さずに過去の取引時点での換算額のままにし、決済時現在からみるとその項目は取引発生時の為替レートで換算される。2つ目がCR(Current Rate)と呼び、決算日の新しい為替レートで計算し直すとその項目は決済時の為替レートで換算される。3つ目がAR(Average Rate)と呼ばれ、決算期末月もしくは半期などを算定期間とする為替相場の平均値である。
 換算方法は4つあり、1つ目は、流動・非流動法である。流動項目をCR、固定項目をHRで換算する。流動項目は決算日の翌日から1年以内に資金化・費用化などを行う項目で、CRの流動項目は早期のうちに決済されるので、為替相場の変動が企業にもたらす影響を確認することが出来ることがこの方法の根拠である。2つ目は貨幣・非貨幣項目である。貨幣性項目はCR、非貨幣性項目はHRで換算する。貨幣性項目は金銭債権債務などの将来において現金収支を伴う項目を言う。決済時のレートは取引時のレートと比べると最終的な決算額がより近いと考えられるので、貨幣性項目にはCRを使う。3つめはテンポラル法である。期末の時価を表す項目にはCR、原価を表す項目にはHRで換算する。4つ目は決算日レート法である。全ての項目をCRで換算する。
 外貨建の資産・負債は、輸出入取引以外に、資金の調達・運用からも発生します。これらの取引はいったん発生時点での為替レートにより日本円に換算されるが、決算の時点が到来すると、決済日レートを用いた新しい換算額に付け替える必要がある。外貨での預金や貸付金及び債券や株式を保有する場合がある。これらも資金調達同様に処理を行う。このようにして現行の会計基準は、為替レートの変動が企業の貨幣性項目におよぼした影響の全貌を明らかにするために貨幣性項目は全て決算日レートで換算しなおすことにしている。よって、企業は資金の調達や運用からも為替差損益を計上することになり、当期純利益は期間によって大きく変動する傾向が強くなる。
 以上で今回のゼミの報告を終了します。