資金の管理と運用(2016年10月20日)

 7期生の高尾です。10月20日のゼミ活動について報告します。

今回のゼミでは、より教科書の第7章「資金の管理と運用」についての発表をしました。発表内容について記述していきます。なお、発表内容は「余剰資金の運用及び各金融資産の貸借対照表上での区分」「現金及び預金」「有価証券」の3つに大別して記述します。

 まず、余剰資金の運用及び各金融資産の貸借対照表上での区分についてです。企業の主たる経済活動は営業活動ですが、この活動で得られた資金は再び営業活動に投下されます。この際に生じた余剰資金は金融資産にも投資され、利子や配当の獲得に利用されることとなります。また、金融資産には、預金・貸付金・有価証券等があり、その性質により流動資産と固定資産に区分されます。預金と貸付金に関しては、満期日が決算日から1年以内に到来するものは流動資産、満期日が決算日から1年を超えるものは固定資産に区分されます。有価証券に関しては、短期の利殖を目的として保有するものは流動資産、子会社株式その他流動資産に属しない有価証券は固定資産に区分されます。上記の余剰資金の運用成果には、インカム・ゲインとキャピタル・ゲインがあります。

インカム・ゲインとは、預金や貸付金から生じる受取利息、及び株式から得られる受取配当金のように安定的・継続的に受け取ることができる現金収入のことをいい、損益計算書の営業外収益に区分されます。それに対し、キャピタル・ゲイン(ロス)とは、有価証券の売却損益と評価損益から構成されます。流動資産に区分された有価証券から発生する売却損益・評価損益は営業外損益として損益計算書に計上され、固定資産に区分された有価証券からの損益は特別損益とされます。

次に、現金及び預金についてです。現金と短期の預金は、「現金及び預金」として貸借対照表に記載されますが、この現金には紙幣や通貨だけではなく、得意先から受け取った小切手でまだ銀行に預け入れていない場合のような金銭と同一の性質をもつものを、預金には、銀行や信託会社その他金融機関に対する各種の預金・貯金・掛金・郵便貯金・郵便振替貯金などが含まれています。また、企業が一般に保有する銀行預金には当座預金・普通預金・通知預金・定期預金がありますが、定期預金のような当初の預入期間が1年を超える預金であっても、解約などにより1年以内に期限が到来するようになったものは固定資産ではなく流動資産となります。

現金預金の管理についてですが、企業は現金の盗難や火災等による紛失といったリスクをなくし、また出納と保管の手数を削減するために、金銭の受払いに銀行振込や小切手を利用しますが、頻繁に生じる日常的な少額の支払いのつどに小切手を振出すのは不便です。そこで、企業内の会計係が各部署に配置された支払い担当者に少額の現金を前渡し日常的な少額の支払いに充てさせるのが一般となっています。この時の前渡しされる金額が一定額に固定されている制度のことを定額資金前渡制(インプレスト・システム)といいます。現金の収支についてはすべて現金出納帳に記入し、手許の現金有高を帳簿上の残高と照合することを通じ、厳密な管理を行わなければなりません。万一、手許の現金有高と帳簿上の残高が一致しない場合は、現金過不足勘定を設けて手許の現金有高と帳簿上の残高を一致させ、不一致の原因を調査し、原因が判明すれば適切な勘定に振替えますが、期末が到来した際に原因が不明の場合は雑損失または雑収入として、損益計算書の営業外費用・営業外収益の区分に計上されます。預金のうち、当座預金の預入れと引出しが頻繁に生じるので当座預金出納帳を作成し記録するとともに、自社の当座預金口座の出納記録を取引銀行から取り寄せ、当座預金出納帳と照合を行い管理します。また預金のうち、当座預金の預入れと引出しが頻繁に生じるので、当座預金出納帳を作成し記録するとともに自社の当座預金口座の出納記録を取引銀行から取り寄せ、当座預金出納帳と照合を行います。この際に自社と取引銀行間に不一致がある場合は、銀行勘定調整表を作成し不一致の原因を明らかにするとともに、自社の記録を修正することとなります。

最後に、有価証券についてです。まずは有価証券の範囲ですが、金融商品取引法(2条1項)に列挙された証券をいい、代表的なものとしては、「株式や新株予約権証書などの持分証書」、「国債・地方債・社債などの負債性証券」、「証券投資信託や貸付信託の受益証券」が挙げられます。また、株式会社以外の会社に対し出資した額は、有価証券の区分には入らず出資金として取り扱われます。有価証券の区分についてですが、時価変動から利益を得ることを目的に所有する株式や債券の「売買目的有価証券」、利子獲得を目的とした、満期まで継続して保有する社債などの債券の「満期保有目的の債券」、企業を支配したり、大きな影響力を行使する目的で保有される株式の「子会社株式・関連会社株式」、上記以外の目的で保有されている株式の「その他有価証券」のように、企業がそれを保有する目的により4つに区分されます。また、有価証券に類似するものとして自己株式というものがあります。これは会社が発行した自社の株を取得して保有している株式のことで、昔は企業財産の充実・債権者の権利を害するなどの理由から禁止されていましたが、現在は会社法により上限額を定められたうえで保有することが可能となっています。企業が自社株買いをする目的としては、株価が下がることによる資金調達が困難となることを避けるといったことが挙げられます。この自己株式は資金調達時に発行した自社株の買戻しのため、資産とはせず資本の減少とし、貸借対照表の株主資本から控除する形式で記載されます。

続いて、有価証券の取得原価と期末評価ですが、取得原価については、発行済みの証券を市場で購入する方法と新たに発行される証券に応募して払込により取得する方法があります。発行済みの証券を市場で購入する方法の取得原価の算出方法は購入代価に付随費用を加算し算出することに対し、新たに発行される証券に応募して払込により取得する方法での取得原価は払い込んだ金額が取得原価となり、すでに保有している銘柄と同じ有価証券を異なった価格で取得した時は総平均法や移動平均法により単位当たりの新たな取得原価を算出することになります。有価証券の期末評価についてですが、有価証券の期末評価は「1.期末ごとに時価で評価され生じた差額を当期純利益に含めるもの」、「2.満期まで保有する債券や子会社株式など、取得原価を基本とした評価を行い、取得原価が額面金額と異なる債券は償却原価法を適応するもの」、「3.それ以外の時価評価が可能なもの」の3つのグループに大別され、それぞれ異なった会計処理が行われます。また、企業が保有する株式などの銘柄には評価益を生じたものと評価損を生じたものがあり、これらの評価差額を銘柄別の評価差益と評価差損を相殺した残高を貸借対照表の純資産の部に計上するといった方法をとる「全部純資産直入法」と、評価差益は純資産の部に計上し、評価差損は当期の損失として損益計算書での純利益の計算に含めるといった方法をとる「部分純資産直入法」の2つの方法で取り扱われます。そして、上記の第2と3のグループ有価証券は、市場価格のある有価証券の時価が著しく下落し回復の見込みがある場合及び、市場価格のない株式について発行会社の財政の悪化により実質価格が著しく低下した場合に評価損を損益計算書に計上することが強制されていて、これを有価証券の減損会計といいます。

以上が発表の内容です。

ここで、橋本先生より部分純資産直入法が保守的とはどういうことかという説明がありました。まず、全部純資産直入法は投資有価証券の株価の上下に関係なく全ての場合に純資産を増減させる方法でした。それに対し、部分純資産直入法は評価がマイナスの場合のみ純資産を減らさず損益計算書上の損失とさせます。このような、費用は早く・収益は遅くという考えから部分純資産直入は保守的であるといわれています。

以上で10/20のゼミ活動報告を終わります。