企業の設立と資金調達(2016年7月7日)

7期生の山口です。7月7日のゼミ内容を報告します。
 今回は,教科書の第3章「企業の設立と資金調達」についての岩見君の発表と,ポイント制度の会計処理に関する新聞記事についてが主な内容でした。
 まず,岩見君の発表内容についてみていきます。
 企業・会社の種類には,1.個人企業,2.組合企業,3.合名会社,4.合資会社,5.合同会社,6.株式会社があります。会社の特徴については,出資者の責任に関する違いが最も重要であり,出資者全員が無責任であるのが合名会社,一部は無責任で残りは有限責任であるのが合資会社,全員が有限責任であるのが合同会社・株式会社となっています。有限責任であれば,会社が倒産した場合,出資者の負担分は自分が出資した金銭のみで済むのに対し,無限責任であると,個人の債務をなげうってでも会社の債務を返さなければなりません。
企業と会社の違いについては,企業は,一人でも事業を起こせば個人企業としてみなされますが,会社は定款という手続きが必要になります。さらに,合同・合名・合資会社は定款だけで良いのですが株式会社は公証人の認証を受けた定款と,出資払込金保管証明書か残高証明書が必要になります。
株式会社設立時の株式発行数は,最大で定款に記載した株式数を発行できますが,設立時にすべての株式を発行する必要はなく,最低4分の1以上発行すればよいことになっています。残りの未発行株式は,自己資本を追加調達するときに発行されます。また未発行数が少なくなれば,株主総会での決議で定款を変更することにより,発行株式の枠を現時点での発行済み株式数の4倍まで増加できます。これを授権資本制度といいます。
さらに,かつては「株式の発行価額は5万円以上でなければならない」などの規制がかけられていましたが,2001年以降は,会社が株式発行によって自由に資金調達を行う妨げとなる恐れがあることから,株式の額面制度や,最低発行価額を5万円とする規制もなくなりました。
 次に,会社設立時の会計処理についてですが,会社が発行する株式に対して,株主が会社に払い込んだ金額は,その全部を資本金とするのが原則となっています。しかし,発行価額の2分の1まで資本金としないことが,会社法によって許容されています。その理由としては,会社法では,利益を株主に配当する際に,利益の一部を利益準部金として積み立てることを要求しています。この積立は資本準備金と利益準備金の合計額が,資本金の4分の1に達するまで行わなければいけません。これは分配不可能な部分のため資本金が多いほど拘束額が多くなるので,2分の1をとる会社が大半です。
かつて株式会社の資本金は1000万円以上でなければならないとされていましたが,会社設立の妨げとなるため,この最低資本金背戸は2006年5月から廃止されました。
 また,創立費と開業費を負担しなければ,会社は利益を獲得できません。創立費は,定款制作費や銀行手数料などの会社設立のために必要な支出です。開業費は,建物賃貸料や広告宣伝費などの,営業を開始するまでに必要な支出です。これらの支出はいったん繰延資産に計上して,それを徐々に取り崩して費用計上していきます。
 次に,企業の資金調達についてです。
 企業が調達する資金は,それが株主から調達されたものであるか,株主以外の債権者から調達されたものであるかにより区別されます。株主から調達された資金を自己資本,株主以外の債権者から調達されたものを他人資本といいます。自己資本は返済する必要がありませんが,他人資本は所定の期限までに返済されなければなりません。
 社債による資金調達では,普通社債,転換社債,新株予約権付社債の3つのパターンに分けられます。普通社債は,満期日まで定期的に所定の利子を払うとともに,満期日にそれを償還して額面全額の返済を行うことを約束した債務です。他方,転換社債は,そのような普通社債の性質に加えて,要求すれば一定条件で既存の株式に変換できる権利を持っています。新株予約権付社債は,前もって決められた金額を払い込んで新株を引き受ける権利が付与された社債です。転換社債と新株予約権付社債は,普通社債に転換権または新株予約権を付加して社債投資の魅力を高めることにより,企業の資金調達を促進するのに役立っています。また普通社債より低い利率で発行できること,新株発行の可能性がある点で自己資本の充実にも役立つなどの利点があります。
 以上が発表の内容です。
 ポイント制度の会計処理に関する新聞記事については,日本のポイント制度の会計処理に,国際会計基準(IFRS)が適用される可能性が出てきた,という内容を先生に補足説明して頂きながらみていきました。
現在日本の企業では,通常売り上げは販売時に一括で計上し,ポイントは引当金として費用を先行計上しています。これに対し,IFRSでは商品の販売時点ではポイント分の収益は繰り延べられ,ポイントの利用時に収益として認識されることになります。このため,売り上げの計上時期と金額が異なる可能性があります。収益は,それぞれの独立販売価格(仮に商品とポイントを別々に販売するとした場合の価格)の比率で商品とポイントに配分され,計上されます。
 もしIFRSの新基準に基づくポイント会計処理が適用されれば,引当金を計上していた企業は,ポイントが利用されないケースにおいて販売時点で計上できる売り上げが減り,大きく影響を受けるだろうとされています。また,収益を繰り延べる会計処理はポイントの付与状況や利用率など様々なデータをもとにするため,複数企業間や制度間の相互作用といった「共通化」などにより,ポイント制度自体がより複雑になります。ポイント取引を詳細に把握するため,企業側に業務プロセスを再構築する負担が生じるかもしれない,といった問題点が挙げられています。
 以上で7月7日のゼミ活動報告を終わります。