財務会計のシステムと基本原則(2016年6月30日)


7期生の藤崎です。6月30日のゼミ活動について報告します。

今回のゼミでは私による教科書の2章「財務会計のシステムと基本原則」を発表と,それを経ての先生による会計基準についての補足,そして国際会計基準についての新聞の切り抜きについてという内容でした。

まず初めに,経済活動を資金調達活動,資金投下活動,営業活動の3つに分けて説明しました。

資金調達活動について。企業は株主などの出資によって成立していますが,その出資された資金を資本または自己資本(返済義務なし)といい,自己資本以外で銀行などから借り入れたものを負債または他人資本(返済義務あり)といいます。

資金投下活動について。資産=負債+株主資本という等式に基づいて作成さているのが貸借対照表(B/S)です。また,資金調達と資金投下の関係を企業の財政状態といいます。

営業活動について。貸借対照表でも営業活動の結果はわかるようになっていますが,その損益の原因はわかりません。そこで,その損益のプロセスを示すことが出来るのが損益計算書(P/L)です。また,そんな損益計算書で示される損益の状態を企業の経営成績と呼びます。

次に損益計算の方法について。損益計算は,企業の始まりから終わりまでの全体損益計算ではなく,1年を1会計期間とした期間損益計算が重要とされています。そして期間損益計算の方法は損益法と財産法の2つに大別できます。損益法は,1期間の収益から費用を引いて損益を計算する方法で,この方法には利益の発生原因が明らかになるという長所があります。これに対して財産法は,期末の純資産から期首の純資産を引いて損益を計算する方法です。こちらの方法には,実地調査によるものであるため確実な計算であるという長所がありますが,一方で利益の発生原因が明らかにされないというデメリットもあります。これらのことから,現在の企業会計では損益法が中心の期間損益計算が行われています。しかし,記録と事実が一致しない場合が多いため,実地調査による事実確認も行われているそうです。

次に,企業会計基準と企業会計原則の2つの会計基準について説明しました。

企業会計基準について。企業会計基準は,企業会計基準委員会(ASBJ)が制定する日本における財務会計の基準で,個別の論点ごとに作成・公表されており,後述する企業会計原則に優先して適用されます。

企業会計原則について。企業会計原則は,一般原則,損益計算書原則,貸借対照表原則の3つからなるものであり,今回はその中の一般原則について詳しく説明します。

では一般原則について。一般原則とは,損益計算書と貸借対照表の両方に共通するルールを示したものであり,真実性の原則とそれ以外の6つの原則とこれに準ずるものとして重要性の原則があります。

 真実性の原則…企業会計は,企業の財務状態および経営成績に関して,真実な報告をしなければならない。この原則は,他の原則の上位原則です。

 正規の簿記の原則…企業会計は,すべての取引につき,正規の簿記の原則に従って,正確な会計帳簿を作成しなければならない。

 資本取引・損益取引区分の原則…資本取引と損益取引とを明瞭に区別し,特に資本余剰金と利益余剰金を混同してはならない。

 明瞭性の原則…企業会計は,財務諸表によって利害関係者に対して必要な会計事実を明瞭に表示し,企業の状況に関する判断をあやまらせないようにしなければならない。

 継続性の原則…企業会計は,その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し,みだりにこれを変更してはならない。

 保守主義の原則…企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には,これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

 単一性の原則…株主総会提出のため,信用目的のため,租税目的のためなど,種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合,それらの内容は,信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって,政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

 重要性の原則…企業会計は定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきであるが,企業会計が目的とするところは,企業の財務内容を明らかにし,企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから,重要性に乏しいものについては,本来の厳密な会計処理によらないでほかの簡便な方法によることでも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

そして次に,現金主義会計と発生主義会計について説明しました。現金主義会計は,現金収入があったときに収益を認識し,現金支出が生じたときに費用を認識する方法です。しかしこれでは利益獲得活動に払った費用とその収益が適切に対応せず,販売しても売掛金や手形を受け取れば収益に計上されないため,すべての資産をリースで賄うサービス業の企業(映画興行会社)ぐらいでしか適用されません。一方,発生主義会計は,費用が消費という事実に基づき認識され(消費基準),収益は販売という事実が生じた時点で認識される(実現基準)方法です。このようなことから,現代の損益計算では主に発生主義会計で行われています。

最後に,費用配分の原則について。様々な資産の中で,設備や建物などの将来の費用(減価償却費など)になる資産のことを,費用性資産と呼びます。また,その費用性資産の取得原価は,資産計上された後,その消費に応じて各事業年度の費用として配分されなければならないという原則があります。これが,費用配分の原則です。

以上が私の発表の内容です。

その後,橋本先生から企業会計原則と企業会計基準についての補足説明がありました。具体的には,企業会計原則は企業会計基準よりも古く,公認会計士監査の拠り所として,1949年に現在の金融庁企業会計審議会の前身である経済安定本部企業会計制度対策調査会によって制定されたものであり,対して企業会計基準は,2001年以降,民間の財団が母体である企業会計基準委員会によって新しく制定されてもので,個別の会計的論点について,「企業会計基準○号」という形で設定されているそうで,現在26号まで公表されているとのことでした。

また,国際会計基準を日本国内でも採用している企業が増えているそうです。これにはもちろん海外進出をするためという理由もありますが,それ以上にM&Aの加速が理由のようです。国際会計基準と国内の基準では,MAの結果生じるのれんの会計処理が異なり,前者が減損の兆候が出たときに一括して償却処理するのに対して,日本基準では20年間で毎期償却処理せねばならず,企業側にとって年次の負担が大きいということが,国際会計基準が広がりを見せている原因の一つという見方もあるそうです。

以上で6月30日のゼミ活動の報告を終了します。