財務諸表の作成と公開(2015年12月10日)

6期生の中畑です。
12月10日のゼミ報告をします。

まず教科書第10章「財務諸表の作成と公開」の前半部分を宮本君に発表してもらいました。
財務諸表とは金融商品取引法に従った名称であり、会社法では計算書類と呼びます。
連結財務諸表を作成している企業は経営成績表示として損益計算書、財政成績表示として貸借対照表、株主資本情報として株主資本等変動計算書、補足情報として附属明細表、個別注記表を作成・開示する必要があり、連結財務諸表を作成していない企業は個別財務諸表の1つとしてキャッシュ・フロー計算書の作成・開示が必要となります。
1営業年度の収益と費用を対応させて企業の経営成績を表示する損益計算書、決算日現在の資産・負債・資本(純資産)の在高を示し企業の財務状態を表す貸借対照表、資本金などの株主資本とその他の純資産項目の期中変動表示する株主資本変動計算書、財務諸表の重要項目について、その内容と期中増減を示す附属明細表が財務諸表の体系です。

次に財務諸表の公開についてです。
財務諸表などを含む企業情報の開示のことをディスクロージャーといいます。
これには強制されたものと自主的なものがあります。金融商品取引法に従った財務諸表の開示、会社法に従った計算書類の開示、証券取引の規則に従った決算情報の開示、これらが強制されたディスクロージャーです。オンライン・ディスクロージャーやインベスター・リレーションズ(IR)は自主的なディスクロージャーです。

次に損益計算書の内容についてです。
営業利益の計算は「売上高−売上原価−販売費及び一般管理費=営業利益」となります。
経常利益の計算は「営業利益+営業外収益−営業外費用=経常利益」となります。営業外収益とは金融活動で得た収入であり、営業外費用とは借入金や支払利息、手形売却損、有価証券の売却損などの金融費用のことであり、経常利益とは本業の成果と継続的な金融活動の成果を合わせて示すものです。
当期純利益の計算は「経常利益+特別利益−特別損失−法人税等=当期純利益」となります。特別利益とは臨時的、偶発的に生じた利益であり、臨時的、偶発的に生じた損失を特別損失といいます。
売上総利益とは企業の根源的な利益であり、営業利益とは本業による利益であり、経常利益とは企業の経営的な収益力を示す利益であり、当期純利益とは分配可能な期間利益です。

最後に包括利益の表示についてです。
包括利益とは資産から負債を控除して算定した純資産額が、期首から期末へと変化した増加額のことです。ただし、株主との直接的な取引による純資産の変化額は除きます。

以上が宮本君の発表でした。

次に静態論と動態論についてです。
静態論(資産負債アプローチ)とは財産計算を目的とした考え方です。静態論においては貸借対照表(B/S)に計上される資産は、"時価"で表示されることとなります。
動態論(収益費用アプローチ)とは損益計算を目的とした考え方です。動態論においては日々の帳簿記録を基に損益計算(P/L)が行われます。
以前は動態論が主流であったが、現在は動態論から静態論の流れになってきています。
ドイツでは静態論が主流であり、日本では動態論が合うのでは?ということでした。

次に内部留保についてです。
内部留保とは企業が獲得した利益のうち、企業内部へ蓄積された部分のことです。
溜めすぎていると非難されたりしていますが、過剰な設備投資は在庫を生んでしまい、内部留保の積み上げはROEを引き下げ、企業の株価にとってマイナス要因なってしまう可能性があります。さらにこの内部留保の数字というのはすぐに給料には振り返られる数字ではないということでした。

最後に第10章の後半部分を高井君に発表してもらいました。
まずは貸借対照表の内容についてです。
貸借対照表の基本等式は資産=負債+資本です。資産は調達された資金の運用形態を表し、負債・資本は資金の調達源泉を表します。つまり貸借対照表とは資金をどこから調達して、何に使っているかを示しています。
貸借対照表は会社法(2006年)施行以来、資本に代えて純資産という語が用いられています。

次に資産項目についてです。
資産には流動資産、固定資産、繰延資産の3つの項目があります。
流動資産と固定資産の分類基準として、1年基準が基本となりますが、不都合を是正するために正常循環期間の基準を用いる場合もあります。
流動資産には当座資産と棚卸資産があります。
当座資産とは相対的に換金性の高い資産であり、当座の支払いに充当されます。買掛金や支払手形などの流動負債と比較され、短期的や債務支払能力の分析に用いられます。
棚卸資産とは営業活動の好不調を頻繁に反映するものであり、経営者は棚卸資産回転率に注意し、維持すべき棚卸資産のレベルを適切に決定する必要があります。

固定資産には有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産があります。これらは3分の1ずつとなっている場合が多いです。
繰延資産には創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費があります。

次に負債の項目についてです。
流動負債には営業債務、営業外債務、その他の流動負債に分類します。
営業債務とは買掛金や支払手形などがあり、営業外債務とは未払金、短期借入金、コマーシャル・ペーパーなどがあり、その他の流動負債とは経過勘定と引当金などがあります。

次に純資産の項目についてです。
純資産は株主資本、評価・換算差額等、新株予約権に分類されます。
株主資本の計算方法は資本金+資本過剰金+利益剰余金−自己株式です。
評価・換算差額等には土地再評価差額金やその他有価証券評価差額金があります。
個別財務諸表では評価・換算差額等として表記しますが、連結時にはその他の包括利益累計額として記載されます。

次に株主資本等変動計算書の内容についてです。
株主資本等変動計算書とは貸借対照表の純資産の部における1会計期間の変動額について、主として株主に帰属する部分(株主資本)の変動事由を報告するものです。
株主資本等変動計算書は株主資本、評価・換算差額等、新株予約権、非支配株主持分に分割されます。非支配株主持分は連結時に追加されます。
株主資本の変動要因として繰越利益剰余金の変動、自己株式の取得と処分、新株の発行による払込金があります。
評価・換算差額等ではその他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定が記載されます。為替換算調整勘定は連結時に記載されます。
これらの項目は市場での時価や為替レートの変動によって発生した未実現の利益であるので、当期純利益の計算や利益剰余金には含まれず、株主が払い込んだ資本でもないため、株主資本として区別して当期中の増減額を記載します。
財貨の価格変動等による損失の可能性の滅殺を目的とし、デリバティブを利用した取引をヘッジ取引といいます。
ヘッジ対象(損失可能性の滅殺対象)の損益とヘッジ手段(使用されるデリバティブ)の損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジ効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をヘッジ会計といいます。
繰越ヘッジ会計とは時価評価されているヘッジ手段の損益を、ヘッジ対象項目の損益が認識される期間まで、貸借対照表の純資産の部に繰延ヘッジ損益として繰り延べる方法です。
時価ヘッジ会計とはヘッジ対象の資産や負債に係る相場変動等を損益として当期に繰り上げて計上することにより、もともと時価評価されているデリバティブなどのヘッジ手段に係る損益と、同一の会計期間に認識する方法です。

新株予約権とはその権利を有する者からの権利行使により、会社が新株式を発行する義務を示しています。

次に附属明細表と個別注記表についてです。
附属明細表とは損益計算書や貸借対照表などに記載された項目の中の重要なものについて、その内容を詳細に示したものです。
求められる明細表として財務諸表等規制や会社計算規制があります。

個別注記表とは重要な会計方針、継続企業の前提、B/SとP/Lの記載項目の詳細、重要な後発事象をまとめたものです。
企業が財務諸表の作成に用いた会計手続きを会計方針といいます。企業は様々な領域で実態表示に最適な会計方針を選択することができます。
一旦選択した会計方針は毎期継続して適用されなければならない。これを継続性の原則といいます。
会計方針を変更した場合、変更後の会計方針を適用して過去の財務諸表を作り直すことを財務諸表の遡及処理といいます。

重要な後発事象とは決算日後から財務諸表の作成日までに発生した事象の中で、次期以降の経営成績と財務状態に大きな影響を及ぼすものです。財務諸表の作成から開示までの期間の乖離による情報損失を防止するためです。

最後に四半期財務諸表についてです。
四半期財務諸表とは企業の業績と財務状態などの変化を適時に示し、証券投資者の意思決定に有用な情報を提供するものです。
P/L及びC/Fは、四半期間におけるものではなく、その会計年度の期首からその四半期末までを累計したものが開示されます。

四半期を独立した期間とみなし、四半期の経営成績と財務状態などの情報を提供するために四半期財務諸表を作成する、という立場を実績主義といいます。原則的に財務諸表と同じ会計処理をします。

四半期を年度の一構成部分として位置付け、年度の業績予測のために四半期財務諸表を作成する立場を予測主義といいます。年度財務諸表と異なる会計処理が適用されます。

四半期財務諸表は、公認会計士、又は監査法人の監査証明を受ける必要があります。
監査証明は四半期レビュー基準に依拠して行われます。四半期レビューでは、年度の財務諸表監査よりも簡単や手続きを実施し、「不適正なのことは発見されなかった」という消極的形式の結論を表明します。
レビューを受けた四半期財務諸表は、原則四半期終了後45日以内に開示することが求められています。
四半期財務報告制度のメリットとして信頼できる会計基準をタイムリーに入手できることがあり、デメリットとして短期的や利益を追求し、近視眼的な経営が行われる可能性があるということでした。

以上が高井君の発表です。

これで12月10日のゼミ報告を終わります。