国際会計と連結納税制度(2015年12月3日)

6期生の北村です。12月3日のゼミ内容を報告します。今回のゼミでは、吉田君の「国際会計」の追加分の発表と小林君の「連結配当規制」の発表でした。
 まず、吉田君の発表についてです。為替差損は、ある通貨Aからほかの通貨Bに交換し、再び通貨Bを通貨Aに戻した時に被る損失のことです。これを回避する方法は、外貨建ての資産と負債をもち、一方から生じる為替差損を他方から生じる為替差益によって相殺する方法と為替レートの変動による差損益が生じるリスク(価格変動リスク・為替リスク)をリスクヘッジするための取引として、将来の一定時期においての為替レートを現時点で決めてしまう(為替予約)方法もあります。
在外支店と在外子会社の換算についてでは、支店というのは、本店と1つの法人を構成します。そのため、本店の個別財務諸表の一部になります。子会社では決算日レート法というARまたは、CRというほとんど単一のレートで換算する方法を使います。
資本の流通が国境を越えてグローバル化する中で企業と投資家で、国内で作成した財務諸表のほかにもう一組の財務諸表の作成と公開が求められることや作成の基礎となった会計基準の違いのような問題が起こります。そのため、国際会計基準の制定と適用が必要で、これについての歴史を説明してもらいました。国際基準の採用のベネフィットは、①連結財務諸表を作成するコスト削減②財務諸表から得られる共通の尺度を用いて効率的な経営管理③正確な業績比率に基づく的確な意思決定 のようなものがあります。
 この発表の後の先生のお話では、IMF(国際通貨基金)が人民元を採用したというニュースに触れ、為替の変動は自動車産業のような輸出産業に影響を与えるということでした。
 次に小林君の発表についてです。連結配当規制とは、連結財務諸表の剰余金が個別財務諸表の剰余金よりも少ない場合にその差額を分配可能価額から減額する制度です。この制度は、連結計算書類を作成している企業が任意に適用でき、適用の決定は事業年度ごとに行うことが可能です。この連結配当規制適用によるメリットは、市場や債権者から評価を得ることができること、連結グループ内における親会社株式の譲渡や組織再編が容易にできることが挙げられます。また、連結配当規制の趣旨はその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金を減額することと同じでした。そして、なぜ連結配当規制が強制されないかというと、 ①貸借対照表の作成や基礎となる具体的な会計処理が複数の会計処理からの選択になること ②連結計算書類の作成が任意の選択制 ③剰余金の額が資本金、準備金の減少として作出することができるということが挙げられます。では実際はどうなのかを見てみると、上場会社3500社のうち、連結配当規制を適用している会社は36社ということでした。最後に、①連結配当規制は子会社の損失を認識し分配可能価額から控除することで債権者を保護しようとしている。②多くの企業にすれば、連結配当規制はデメリットが大きく、その原因としては、日本が安定的な配当を重視する点が予想される。③連結配当規制は強制適用されるべきであり、そのためには日本の配当に対する意識を見直す必要がある。とまとめてくれました。
 この発表の後の先生のお話では、連結納税制度について説明してもらいました。この制度を適用している企業は、4000社調べ中500社で、平成22~25年にかけて50、60社ずつ増えていて、特に電気機器や建設、化学の企業の採用数が多いということでした。
そして、この制度については、例をあげて説明してもらいました。例えば、親会社が1000円の利益、子会社Aが100円の利益、子会社Bが500円の損失、子会社Cが800円の損失である企業グループがあったとします。連結納税でない場合は、会社ごとに課税・納税する為、税率を50%とした場合,親会社と子会社Aから1000×0.5+100×0.5=550円の税を徴収できます。BとCは非課税です。しかし連結納税の場合になると、企業グループ全体で考えるため、1000+100-500-800=-200となり、税を徴収することはできないということでした。つまり連結納税制度というのは、経済実態上は一体とみなしうる企業グループを課税上も一体の組織とみなして取り扱う制度です。この制度は上記のような場合、税を徴収できないので国としてはデメリットです。しかしなぜこれを作ったのかは、当面赤字が予想される新規事業を生み出しやすくさせるためにということでした。つまり、親会社の黒字と新規事業の子会社の赤字が相殺され、グループ全体では課税が回避されるか、少なくて済むというメリットがあるためです。
 最後になりましたが、今回のゼミはオープンゼミでしたので一回生の方々が来てくれました。ゼミの雰囲気などが少しでも分かってもらえれば、幸いです。会計学を学びたい方はぜひ、橋本ゼミへ!
ということで今回のゼミ報告は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。