税金と配当(2015年11月19日)

第6期生の武内です。11月19日のゼミ活動を報告します。内容は九章の前半(石崎君)と九章(小林君)の発表です。

九章 税金と配当 前半

企業は事業を営む過程でさまざまな税を負担します。その税金の種類の多さ、負担の大きさ、そして回収不能なコストという性格により、企業はタックス・マネジメントに力を入れるようになりました。他のコストと同様に税金も管理すべき対象と考えました。
課税の対象に基づいて税金を分類すれば、①所得にかかる税金(法人税、所得税、住民税)、②財政にかかる税金(固定資産税、相続税)、③消費にかかる税金(消費税、酒税)があります。誰が税金を課すかという視点で分類すると国税(法人税、所得税、相続税など)と地方(住民税、事業税、固定資産税など)税に分けられます。税金のかけ方からみると、直接税と間接税に分けられます。直接税は最終的に税金を負担する人に直接かける税金であり、所得税と法人税はその代表的項目です。間接税は、ものを作った段階で税金をかけ、それが物の代金に組み込まれ、最終的には消費する人が負担することを予定した税金である。消費税や酒税がこれにあたります。
企業に課せられる税金で代表的なものは法人税、住民税、事業税であり、これらは法人3税と呼ばれます。法人税は国税であり、各事業年度の所得に対して課税されます。一般企業の税率は23,9%であり、対象は損益計算書の利益額ではなく、課税所得になります。住民税は都道府県民税と市町村民税をあわせたもので、二つの要素で構成されています。一つは「均等割り」で所得の有無にかかわらず資本金と従業員によって構成される。二つ目は「法人税割り」で法人税の額に所定の税率を掛けて算定します。事業税は地方税で課税所得に所定の6%をかけて算定します。以前は赤字企業には課税されなかったが赤字企業も一定の負担をするように外形標準課税が導入されました。法人事業税は、法人の行う事業そのものに課される税であり、企業はその活動を行うにあたって地方自治体から各種の行政サービスの提供を受けています。このためこれに必要な経費を分担すべきであるという考え方にもとづく税です。従来の法人事業税は、原則として法人の所得を課税標準としていたため、事業活動の規模との関係が必ずしも適切に反映されていないため、外形標準課税が導入されました。外形標準課税とは、事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税方式のことです。法人税と事業税、および事業税と地方法人の「法人税割り」の三つを合計し、その額を課税所得で除いたものが実効税率です。それは企業の実質的な税負担率を示します。
 法人3税の税額はいずれも所得金額を基礎にして決定されます。法人税法の計算式は
所得金額=益金-損金

所得金額×法人税率=法人税額
したがって法人税額の決定には益金と損金を計上し課税対象となる所得金額を求めなければなりません。これを課税所得計算といいます。収益と益金の差異ならびに費用と損金の差異を調整して利益から所得金額を誘導していきます。法人税法はその差異について規定しています。
収益と益金の差異は
① 財務会計上の収益ではないが法人税法では益金になるもの
② 財務会計上の収益だが法人税法では益金にならないもの
① を益金算入項目、②を益金不算入項目という。

費用と損金の差異は
① 財務会計上の費用ではないが法人税法では損金になるもの
② 財務会計上の費用だが法人税法では損金にならないもの
① を損金算入項目、②を損金不算入項目という。

以下の差異項目に注目し、財務会計上の利益と課税関係を示せば次のようになります。

益金=収益+収益算入項目-益金不算入項目
損金=費用+損益算入項目-損金不算入項目

所得金額=益金-損金
   =利益+益金算入項目+損金不算入項目-益金不算入項目-損金算入項目
となります。
税効果会計
 課税所得と財務会計上の利益は一般的に異なります。従って、課税所得に税率を掛けて算定される税額と財務会計の利益に基づいて計算する税額は一致しない。この差額を税効果差額という法人税等の金額に税効果額を加減し、税引き前当期純利益に対応する税金費用を計上する。これが税効果会計という。

確定決算主義
 法人税法は課税所得の計算について、株主総会で報告又は承認された損益計算書が示す利益に基づき、それに前記のような差異項目をプラス・マイナスする方法を採用している。これを確定決算主義という。

株式会社が会社法に従い、作成・報告しなければならない計算書類は①貸借対照表、②損益計算書、③株主資本等変動計算書、④個別注記表である。また、会社法は事業報告と付属明細書の作成と開示を求めている。株式会社は会社法に従い決算日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催する。その2週間前までに株主総会招集通知を株主に贈る必要がある。その招集通知には監査積みの計算書類を添付するため、取締役は会社の監査役会と外部の会計監査報告書を提出する。会計監査人と監査役会が適正だと認めれば取締役会を経て計算書類は確定。問題があれば計算書類を確定するため株主総会での承認が必要になる。
配当金の決定
 報告される計算書類には損益計算書と株主資本等変動計算書が含まれている。この情報により、配当へのコンセンサスがある程度形成され、そのうえで配当に関する議案が株主
総会にかけられ配当の種類や金額が決定する。ただし、
① 監査役設置株式会社または指名委員会等設置会社または監査委員会設置会社である。
② 同時に会計監査設置会社である
③ 取締役の任期が一年を超えていない(ふつうは二年程度)
④ 定款で配当金の配当を取締役会が決定する旨を伝えている。
⑤ 計算書類監査で適正意見が付されている
この場合は取締役会での余剰金の配当を決めることができる(すべてを満たしていることはガバナンスがきいていると認められるため)

会社から株主への配当金への支払いは次のように行われる。
会社が配当金領収書を株主へ送付

株主は会社の指定した金融機関で配当領収書と引き換えに現金を受け取る。

九章後半

 株式会社の特徴の一つとして、株主の有限責任制度があげられる。これを債権者の側から見れば、債権者の権利は会社の純資産によって保障されるだけになる。したがって、配当が過大に行われ、資産が社外に流出すると債権者の利害は守られない。債権者を保護するため、会社法は配当にあたって資本準備金または利益準備金の設定を求めている。すなわち株式会社は、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで、配当総額の10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立てなければならない。企業の経営成績と財政状態を適正に表示するために、両者は厳密に区分しなければならない。剰余金区分の原則が、「資本取引と損益取引を明瞭に区分し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」として規定している通りである。ここに資本取引とは、企業の自己資本を直接的に変化させることを目的として行われる取引をいう。これに対し損益取引は、企業が利益の獲得を目指して行う取引であり、結果として間接的に株主資本が変化する。
 剰余金の算定は
最終事業年度末の貸借対照表の剰余金=(資産+自己株式)-(負債+資本金・準備金+評価換算差額・新株予約券)で求める。
剰余金を基礎として、さらに次の項目を控除した後の金額を分配可能額とする。最初に控除されるのは、会社が保有する自己株式の帳簿価格である。このほかに控除すべき項目が会社計算規則第158条で定められている。第1に、事業年度末の貸借対照表における資産の部に計上したのれんの額の2分の1と繰越資産の合計額が、資本金と準備金の合計額を超える場合、その超過額を分配可能額から除外することを求めている。第2に、事業年度末の貸借対照表に計上されたその他有価証券評価差額と土地再評価差額が借方残高のとき、その評価差額の額を分配可能額から除外することを求めている。第3に連結計算書類を作成している株式会社は、子会社の業績不振などにより、事業年度末の連結貸借対照表の株主資本が個別貸借対照表に計上された株主資本を下回る場合、その差額を分配可能額から控除することを求めている。第4に会社計算規則は、株式会社の純資産額(その他資本剰余金とその他利益剰余金の控除額)が300万円を下回った時に、その差額を剰余金の分配可能額から除外することを求めている。この規制は、最低資本制度の廃止により、資本金がきわめて少額の株式会社が設立される可能性に対応したものである。
 決算の結果、当期純利益ではなく当期純損失が計上されることもある。もしコリ腰利益剰余金があれば、繰越利益剰余金から当期純利益を差し引く。それでも当期純損失を補てんできない場合、会計理論上は、利益剰余金(任意積立金と利益準備金)を取り崩し、それでも損失があれば繰越損失にして次期以降の利益で補てんすべきである。それが「資本と利益の区分」を保証するからである。損失を繰り越す場合は株主総会の決議を必要としないが利益剰余金や資本剰余金を取り崩して損失を処理する場合は、その議案を株主総会に付議し承認されなければならない。それは、剰余金の配当と同様に、剰余金の処分を意味するからである。
 会社法は、株式会社が剰余金の処分として任意積立金を設定することを認めている。その場合、株主総会の決議を要する。任意積立金は、会社が自主的にあるいは契約に基づいて設定した留保利益の項目である。任意積立金には設定目的が定まっているものと、目的を定めない別途積立金がある。特定目的の積立金は、その目的を達成した時に、自動的に繰越利益剰余金に算入される。他方、特定目的をもたない別途積立金を取り崩すには、原則として株主総会の承認が必要となる。
以上です。