国際活動:外貨換算会計(2015年11月12日)

6期生 吉田です。
11/12のゼミ活動を報告します。
最初に新聞記事からで、
「三菱重、MRJが初飛行」という記事です。
この記事によれば,「三菱航空機(愛知県豊山町)が開発する国産初の小型ジェット旅客機『MRJ(三菱リージョナルジェット)』が11日、愛知県営名古屋空港(同)で離着陸し、初飛行に成功した。国産旅客機の初飛行は戦後初のプロペラ旅客機『YS-11』以来、53年ぶり。初号機は2017年にANAホールディングスに引き渡される予定。MRJは午前9時35分ごろ、滑走路を走行し、ごう音とともに初めて空へ飛び立った。機体が空中に浮いた瞬間、初飛行を見守っていた約170人の航空関係者から拍手がわき起こった。太平洋側の上空を約1時間半飛行。静岡県沖から伊勢湾へ向かい、上昇や下降、左右への旋回などの操作を確認した。三菱航空機と、親会社で量産を行う三菱重工業は今後、国内で飛行試験を続けた後、16年4~6月に米モーゼスレイク市(ワシントン州)でも試験を行う。MRJは半世紀ぶりの国産旅客機プロジェクトとして平成20年に事業化がスタートしたが、開発は難航を極め、計画は5度延びた。これまでにANAや日本航空、米スカイウエストなどから400機強を受注。当初計画よりも4年以上遅れたが、初飛行に成功したことで、受注に弾みがつきそう。機体は全長約35メートルで座席数は約70~90席。最新鋭のエンジンを搭載し、従来の小型旅客機よりも燃費性能が優れてて客席の快適性も大きな特徴」(日本経済新聞,平成27年11月11日夕刊記事を要約)だということで,今後の動きに世間の目が集まると考えました。
次に中畑くんの発表で、
第8章 国際活動
企業活動が国際化すると、輸出入や外資での資金調達と運用などによって、取引の一部が日本円以外の通貨で契約されるようになります。
売買価格その他の取引価格が外国通貨で表示されているこ取引を外貨建取引といいます。
外貨建て取引が行われると会計数値に外貨のものが混入してきます。しかしこの外貨で表示された部分も日本円に変換しなければなりません。このように外国通貨を用いて測定・表示された会計項目を日本円によって表現しなおす手続きを換算(translation)といいます。

企業活動の国際化に伴い、換算が必要とされるケースが増えてきています。
換算が必要とされるケースは3つあります。

1つ目は日本国内に所在する本店が外国の取引先との間で行う外貨建取引、その結果として本店の財務諸表に含まれる外貨表示の資産・負債項目の換算です。
外貨建て取引については、その発生時点で日本円に換算して取引記録を行い、外貨建て項目に関しては、貸借対照表への計上金額を決算時に再検討する必要性が生じます。

2つ目は日本国内の本店が外国に支店を設立して事業を営んでいる場合に生じる換算です。
外国通貨で表示されている在外支店の財務諸表の項目を、企業全体としての財務諸表を作成する前に、日本円に換算する必要があります。

3つ目は外国に子会社を持っている企業が企業全体の業績を示すために、連結財務諸表を作成するに際して必要とされる在外子会社の財務諸表の換算です。

連結財務諸表・・・法律的に別個の企業となる親会社とその傘下にあるグループ各社を、単一の組織とみて作成される財務諸表のこと。

1ドルが120円の時や80円の時があるように、為替レートの変動は企業に為替差益や為替差損をもたらします。

2.輸入取引の換算

 日本企業が製造原価150万円の乗用車1台を2万ドルでアメリカへ輸出し、この時の為替レートが1ドル=100円だったとします。この取引は企業に2万ドルの売上高と2万ドルの売掛金をもたらし、150万の売上原価生じさせます。取引時点のレートで換算した場合、売上高と売掛金の金額は200万となります。なのでこの時点では利益が50万となります。
しかし、売掛金が回収されるまでに為替レートが徐々に変化して、回収時に1ドル=80万になっていれば、アメリカから2万ドルの支払いを受けて、日本円に換算しても160万にしかなりません。結局、利益は10万しか得られなかったということになってしまいます。

この取引の成果を表現するためには1取引基準と2取引基準の2通りがあります。

1取引基準とは財貨の輸出入と代金の決済が分離できない一連の取引であるとみなし、輸出入の収益や費用を日本円での最終的な決済額で測定する考え方です。いったん200万で計上された売上高も、決済時に160万円に修正しなければならないので、実践的には面倒です。

2取引基準は、財貨の輸出入と代金の決済を、独立した別個の取引とみなす考え方です。輸出入による収益と費用は取引発生時点での為替レートによる換算額で勘定され、為替差益や為替差損は売買の利益とは区別して損益計算書に記載します。なので2取引基準の方が取引の実態を詳しく知ることができます。

先ほどの例は、輸出と代金決済が同じ年度中に完結していますが、売掛金が回収されるまでに決算日が到来するケースも多いです。このとき、未回収の売掛金を決算日現在の為替レートで換算しなおすかという問題が生じます。
輸出で獲得された売掛金2万ドルは、その時点での為替レートで換算して200万円で計上しています。しかしその後、円高により、決算日現在の為替レートでみた場合170万円にしかならず、すでに30万円の目減りが生じています。これを財務諸表に反映させるには、売掛金の金額を200万円から170万円に切り下げ、この切り下げ分30万円を損益計算書に損失として計上します。この30万円は、為替換算差損であり、翌年の決算時に記録される10万円は為替決済差損です。これらを損益計算書では区別せず、どちらも為替差益または為替差損と記載します。

この売掛金は決算日が過ぎてから決済されるので、決算日現在での為替差損はまだ未確定であり、決算日を過ぎてから円安になれば、為替差益が生じる可能性もあります。しかしこの場合は、決算日現在での実態を財務諸表に反映させる目的で、換算額の付け替えを行うのです。

換算しなおさず過去の取引時点での換算額のままにしておくと、決算日現在でみた場合、その項目は過去の歴史的な為替レートで換算されていることになります。この過去の歴史的な為替レートをCRといいます。決算時の新しい為替レートで計算しなおすと、その項目は決算時の為替レートで換算されたことになります。これをHRといいます。
決算時にCRで計算した換算額に付け替えを行うべき項目と、HRでの換算額のままとする項目の区分については1~4の4通りの考え方があります。

流動・非流動法は、外貨表示の項目を流動項目と非流動項目の分類し、流動項目にはCRを適用し、非流動項目にはHRを適用し換算する方法です。
流動項目とは決算日の翌日から1年以内に資金化、費用化などを伴う項目ですが、CRで換算される流動項目は早期に決済されるので、(取引時点の換算額と差額は生じるものの)
為替相場の変動が企業会計に与える影響を的確に認識することが可能となる、というのがこの方法の根拠です。


貨幣・非貨幣法は外貨表示の項目を貨幣性のものと非貨幣性のものに分類し、貨幣性項目にはCRを適用し、非貨幣性項目にはHRを適用し換算を行う方法です。
貨幣性項目とは、金銭債権債務などの将来において現金収支を伴う項目を言います。
取引発生時からより決算時に近づいた決算時のレートは、発生時レートよりも最終的な決算額を決める決算時レートの方がより近い値であると考えられるので貨幣性項目にはCRを適用します。(非貨幣性項目は前払金などを言いますが、これは計上時に貨幣を実際に受け取っているのでレート換算の必要はないのでHRを適用します)

資金調達と運用取引の換算
 外国の銀行から外貨で資金を借り入れたり、 米、欧の証券市場で現地通貨による社債を発行する取引をした場合、いったん発生時点での為替レートで日本円に換算されるが、決算の時点で、決算日レートで新しい換算額に付け替える必要があります。
1ドル=100円の時点で借り入れた1万ドルの返済期限が半年後に迫っており、
決算日の為替レートが1ドル=110円になっていれば、借入金の円換算額を100万円から110万円の引き上げ、10万円の為替差損を計上します。
1ドル=85円となっていれば借入金を85万円に減額して、15万円の為替差益を計上することになります。

逆に、余剰資金を外貨建ての資産で運用する場合、つまり、外貨で預金や貸付金または債権や株式を保有する場合も決算日レートで新しい換算額に付け替えます。そして、当初の円換算額との差額を、為替差損益として計上します。
為替レートの変動が企業の貨幣性項目に及ぼした影響を明らかにするために、貨幣性項目は決算日レートで換算しなおすことにしています。これにより企業は、資金調達や運用からも為替差損益を計上することになり、当期純利益は機関によって大きく変動する傾向が強くなります。

以上で11/12のゼミ活動の報告を終わります。