資金の管理と運用(2015年10月15日)

6期生の北村です。10月15日のゼミ内容を報告します。
 今回のゼミでは若林さんから財務会計・入門「第7章 資金の管理と運用」の前半部分を発表してもらいました。
 企業の主な経済活動は、財貨やサービスの生産・販売です。このことを営業活動といい、これで得られた資金は再び営業活動に投下されますが、余剰資金が生じれば、預貯金や株式などの金融資産にも投資されて、利子・配当金の獲得にも利用されます。このような利子・配当金の目的の金融資産には、①預金②貸付金③有価証券の三つがあります。これら三項目の資産は、その性質により流動資産と固定資産に区分して、貸借対照表に計上されます。
① ②のうち満期日が決算日から一年以内のものは流動資産、満期日が一年を超えるものは
固定資産になります。そして、③のうち短期の株式・債権は流動資産、それ以外のものは投資有価証券として固定資産に分類します。そのうち子会社の株式は子会社株式はという名前で特別に区分して記載することになっています。
 流動資産に分類された現金預金と有価証券は、ただちに支払い手段として利用できる性質をもつので、手元流動性と呼ばれることがあります。また、流動資産に分類された現金預金と有価証券に受取手形と売掛金を加えた資産を総称して、当座資産といいます。
 余剰資金を金融資産で運用したことによって得られる成果には、インカム・ゲインとキャピタル・ゲインがあります。インカム・ゲインとは、受取利息や受取配当金などのように、毎期反復して得られる収益をいいます。これらの収益は、損益計算書の営業外収益の区分に記載されます。キャピタル・ゲインとは、有価証券を買値より高く売ることから得られる売却益です。流動資産に分類された有価証券の売却益は損益計算書の営業外収益に計上し、固定資産に分類された有価証券の売却益は、損益計算書で特別利益として計上します。
 現金・短期の預金は、「現金及び預金」として貸借対照表の最初に記載されます。現金には、紙幣と通貨だけでなく、受け取った小切手でまだ銀行に預け入れていない場合のように、金銭と同一の性質を持つものも含まれます。預金には、銀行などに対する各種の預金・貯金・掛金などが含まれます。企業が保有する銀行預金には、当座預金・普通預金・通知預金・定期預金などがあります。
 現金の収支はすべて現金出納帳に記入し、手許の現金在高を帳簿上の残高と照合することにより、管理しなければなりません。また預金のうち、当座預金は自社の当座預金口座の出納記録の写しを取引銀行から取り寄せて、当座預金出納帳と照合することにより、これを管理しなければなりません。しかし、不一致が発覚した場合は現金なら決算時までに原因が判明しない場合は雑損・雑収入として損益計算書に記帳します。預金は自社と銀行の記帳にズレがある場合が一般的で場合によっては記録の修正を行わなければなりません。
 有価証券は、国債・地方債・社債などの負債性証券、株券や新株引受権証書などの持分証券、証券投資信託や貸付信託の受益証券などが、その代表的なものです。株式会社以外の会社に対して出資した額は、有価証券ではなく出資金として扱われます。
 有価証券は、企業が保有する目的により、①「売買目的の有価証券」②「満期保有目的の有価証券」③「子会社関連株式・関連会社株式」④「その他の有価証券(持合い株式など)」の4種類に区分されます。これらのうち流動資産となるのは、①と②のうちの満期が1年以内に到来する社債とその他の債権だけで、これ以外は固定資産に分類されます。
 また、有価証券に類似する項目として自己株式があります。自己株式は、資金調達のためのために発行した株式を、その会社自らが再び買い戻したものです。なので、自己資本を減少させる性質をもっています。これは会社法によって上限が決められています。そして取得した自己株式は、第三者の売却のほか、他企業を合併する場合の対価やストック・オプションとして交付するなどの用途に利用されます。
 有価証券の取得方法は、発行済みの証券を市場で購入する場合と、新たに発行される証券に応募しては払込により取得する場合が、その代表的な方法です。購入した有価証券の取得価額は、購入代価に手数料などの付随費用を加算して決定します。払込により取得した有価証券は、その払い込んだ額が取得原価になります。そして有価証券を売却した時には、取得原価と売価との差額が売却益または売却損になります。
 有価証券の期末評価は、2000年3月31日以前は、取得原価よりも低い場合、任意の評価減または強制的評価減が行われてきましたが、2000年4月以降からは所定の有価証券が時価評価されるようになりました。新しい会計基準では、有価証券を保有目的で分類し、グループ別に異なった会計処理を求めています。第一グループは売買目的の有価証券で、期末ごとに時価で評価し、生じた差額を当期純利益の計算に含まれます。第二グループは、満期保有の債権、子会社株式・関連会社株式、時価の把握が困難なその他の証券が含まれ、取得原価で評価するか、取得原価が額面金額と異なる債券は償却原価法を適用します。第三グループは、時価の把握が可能なその他の証券で、時価での評価が行われます。これの評価差額は、評価差額の純額をそのまま貸借対照表の純資産の部に計上する純資産直入法か、評価益は貸借対照表の純資産の部に直接計上するが、評価損は損益計算書に損失として計上して、当期純利益の計算に含めるという2つの方法があります。なお、前述の第二・第三グループは、①市場価格のある有価証券の時価が著しく低下し回復する見込みがあると認められる場合以外②市場価格のない株式について発行会社の財政状態の悪化により実質価値が著しく低下した場合(実務では、時価などが帳簿価額の50%を割り込んで低下する場合)は、評価損を損益計算書に計上することが強制されます。
 この発表の後の先生のお話では、まず有価証券の期末評価に触れ、純資産直入法と利益と損失を別々に計上する処理の違いを教えていただきました。純資産直入法では差額を貸借対照表に計上するだけになってしまいます。企業としては差額だけでなく、損失は損失で損益計算書に計上したほうが、わかりやすく、真実性もあるということでした。次に自己株式についてのお話をしていただきました。まず、自己株式の上限の金額について説明してもらいました。この金額は債権者の保護ができる量のお金、つまり配当可能価額ということでした。また、自己株式の議決権は、会計基準の380条2項により、有さないことがわかりました。この理由は、不当な株価操作や株主の不正が起こるからということでした。そして、なぜ自己株式を取得するのか?ということを説明してもらいました。教科書では自己資本を下げるためとしか書かれていませんでしたが、先生の説明では、PERとROEを上げるためということでした。PERは株価収益率のことで、これは高ければ高いほどいいというわけではありませんが、ROEの方は、外国の投資家が気にしている数値なので高い方が良く、経営者たちが上げたがるということでした。
 最後に明治大学との発表会のグループ決めをしました。他大学との交流できる機会もあまり無いと思うので、しっかりとした発表ができればいいと思います。
 以上で今回のゼミ報告を終わります。最後まで読んでいただきありがとうございました。