財務諸表による経営分析(5期生)(2015年4月9日)

5期生の宮本和雅です。

4月9日の学級明けゼミでは前年度の個別発表を引き続けて実施し、高橋君が発表を行いました。
テーマは「財務諸表による経営分析」となります。

 財務諸表は、企業の活動を計数的に測定、要約したものです。これは主に、投資者がリスクとリターンを考慮した意思決定をする際の重要な判断材料になるとされています。財務諸表による分析で重視されることは、各企業の「収益性」と「安全性」であり、近年では特に収益性に関する株主、投資者の要望の声が高まっているようです。

 企業はただ黒字であれば良いというものではなく、投入された資本からどれだけ多くの利益が出ているか(資本利益率…利益÷資本)によって効率のよさを常に監視され、場合によって企業資金をもっと投資、あるいは株主還元するよう要請が出されることもあります。企業の視点で見れば資本と利益の関係は総資本と利益・利息・配当金の割合によって効率を知ることが重要であり、これは
総資本事業利益率(ROA…営業利益+受け取り利息・配当金等÷期首・期末平均の使用総資本)
と呼ばれています。一般に企業の収益性と効率分析のみが目的であればこちらの指標を使うこととなりますが、投資者や企業の安全性を考慮した場合はさらに細かく、自己資本と他人資本の割合にも注目する必要があります。

 他人資本が借入金等による資金の調達であることに対して、自己資本は株主からの出資金を表しています。よって株主にとっては、自己資本という自分たちの投入資金がどれだけの利益を生み出しているかが重要であるため、そのための指標として
自己資本純利益率(ROE…株主が受け取る利益÷株主の拠出金)
が存在します。

 言葉は似ていますが必要とする団体、目的が異なるROAとROE。この2つにはある関連があり、ROAが増加/減少するとROEも同じ動きとなりますが、数値が大きくなるとROEの振れ幅がROAを上回るようになります。企業視点で見たROAの減少が想定の範囲内であっても、ROEの減少がマイナス値にまで達することが起こりうるためどの道この2つの要素は切っても切れない関係であるといえます。そしてこのことは見方を変えると、より多くの他人資本を用いてROAを変動させることでROE数値をさらに大きく変動させるてこの原理が働いていると言え、この増幅作用は財務レバレッジの名で呼ばれています。当然、他人資本が増えれば支払う利息は増えるので、増益のチャンスと同時にリスクが大きくなっていくことからその良し悪しを判断するためにも「他人資本の割合」は経営分析において常に意識しておく必要があるといえます。
 財務レバレッジを強く利かせて大きく増益を狙う企業が良いか、レバレッジを抑えて投資の安全性を高める企業が良いかは各人の判断となり、しばしば経営の意思決定に影響を及ぼす要因となります。

 最後に、複数の企業を比較する際は財務諸表の「重要な会計方針」を確認し、会計基準の違いや処理方法の差異を把握しておく必要があります。数字を見ることに長けているほど見落としがちな部分であるのでこの点を踏まえたうえで財務諸表分析を実施していくことが大切となります。
高橋君の発表は以上となります。

 この後は先生より、ROEに関連する近年の傾向として外国人投資家の増加と、それに伴う日本企業の安全体質から増益・増配当への方針転換への要望の増加についての資料と説明がありました。リーマンショックをはじめ様々な要因があり、日本の企業は借金を全額返済してなお余裕があるほどの手元資金を貯めている場所が多く存在します。しかしこのことは海外の投資家から見て良い印象であるとは言えず、手元資金が多い→資金が回転せずもたついていると考えられ、ある外国投資ファンドが日本のある企業に対して手元資金をより投資に回すか配当に回すようストレートに要望書簡を送った例もありました。このことを受け企業が取る対策は様々で、ROEの割合を増やす経営目標を立てたり、望みどおり配当を増やしたり、時には自社株買いによって一株の価値を高め株主還元とするなどの手段が模索され、取り入れられています。ROEの低さが原因で取締役選任を反対されて手も脚も出せなくなることもあります。そうした背景が日本企業に変化を迫っていることが現状あることを理解して企業研究・就職を意識してほしいとのことでした。

4月9日のゼミ活動は以上となります。