明治大学との合同研究会報告(2015年3月5・6日)

5期生の宮本和雅です。

 3月6日に行われた明治大学での合同研究会について、その内容を報告いたします。
研究発表の大枠のテーマとしては企業分析となっており、こちらのゼミからは2班がそれぞれ「すかいらーくの危険性」と「外国為替による日本への影響」を発表しました。

「すかいらーくの危険性」では、2014年に国際会計基準IFRSを用いつつ上場を果たしたすかいらーくについて、この「すかいらーく」が上場に当たって持っているとされる収益性に疑問を投げかけるといった発表です。平成26年12月期の決算短信によると、この企業はのれんによる資産計上が他の資産総額とほぼ同額となっており、本来であれば将来の伸びが極めて期待されている企業といえます。しかし日本会計基準であるのれん20年償却で考えてみると、毎年の費用計上額が企業全体の包括利益を上回っており、のれんによってギリギリ収益性プラスを達成できている企業といった姿も見えてきます。言い換えると、日本基準あるいはのれん計上が無い状態ではすかいらーくは赤字会社となっているのです。発表ではすかいらーくを巡る買収の歴史について触れ、すかいらーくの本業(総合生活サービス)と異なる面での、書類上での金銭の動きについて追っていきました。

「外国為替による日本への影響」では、日米に関わる企業(発表ではトヨタ)を例に円高・円安や為替差益といった事柄を幅広く見ていこうといった内容です。こちらの研究内容である為替による業績の変化も、ある意味では本業からやや離れた部分での金銭の動きと言えるかもしれません。為替に関わる企業では、あらかじめ各企業ごとに「想定為替レート」を設定しており、将来の取引に出る影響を把握しようとしています。トヨタの場合は、1円の円安が400億円の増益になるとも言われており、為替が業績に与える影響の大きさを伝える発表となりました。

明治大学の三和ゼミでは企業の「定性評価」と「定量評価」に注目し、特に本来数値になっていない企業の特徴を数値化して企業を分析することに重点を置いて各班が発表を行いました。

「TPPに負けるな 日本の食料自給率をあげる企業」ではその名の通り日本の農業に関わる127社に対しROE、ROA、売上高収益率、総資本回転率、流動比率、EVA(経済付加価値)といった面での定量分析に加え、環境への配慮やコーポレート・ガバナンスの実施具合、IR情報の発信頻度、CSRの明記有無、面白い所ではホームページの見やすさを点数とした定性評価の数値化を行い、それらを総合して17社に絞ったところまでが発表の内容となりました。

「ロボットが変える日本」では、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による推計である「平成22年度ロボット産業将来市場調査」等を元に、国内ロボット市場が今後成長することを考慮して各ロボット産業を企業分析するといった内容となっていました。人型ロボット、介護ロボット、建設機械、調理システム、各部品製造、ソフトウェアなど多岐にわたる業界にフィルターを通し、ロボット産業への貢献度や財務分析により絞った上で各業界の上位3社を選抜したそうです。このうち一部を紹介すると、竹内製作所、安川電機、ネクス、大和ハウス工業、豆蔵ホールディングス、サンワテクノス等の企業が名を連ねる結果となります。

「高齢化社会と市場の変化」では、日本の上場企業全3,442社(2014年11月30日時点)から、テーマを絞るなど計6段階の選定を行い、計6つの業種からそれぞれの上位企業を選抜する過程を43枚ものカラフルなスライドを用いて非常に丁寧かつきちんと整った形で説明し考察とまとめで締めくくられました。ここでのテーマとは「“高齢化”によってニーズが増している・増してくる業種」が設定されており、出発点とされています。

発表に関しては先生同士の討論もありましたが、一言に企業分析といってもただやり方を知り利益の面で将来性がある企業を選ぶよりも、やり方を押さえつつ利益とは別の面で世の中の役に立つ、あるいはとても魅力ある部分に注目して分析するといった「面白い発想からの企業分析」を各人積極的に取り組んでほしいとの言葉も飛び交い、今後の橋本ゼミが取り組む学習の指針が研究発表を通して一つ見えてきたのではと思います。
4月9日の学級明けゼミでは、5期生の今後の取り組みとして日経ストックリーグが現実味を帯び始めましたが、今回の研究発表で得た企業分析に関する知識・考えを早速生かせる場であるよう思えますのでもう一度学んできたことを再確認しつつ、次の学習に取り組んでいきたいと考えています。

最後のまとめとして、明治大学、三和ゼミの皆さんが用いた指標について紹介いたします。

定量分析
・売上高成長率…前期と当期の売上高から、売り上げの成長率を測定。
・営業利益成長率…前期と当期の営業利益から、営業利益の成長率を測定。
・総資産回転率・・・事業に投下した資本と売り上げの割合。(売上高÷総資産)

・ROE…株主資本利益率。株主からの出資と利益の割合。(当期純利益÷自己資産)
・ROA…総資本利益率。事業に投下した総資産と利益の割合。(当期純利益÷総資産)
・売上高経常利益率…売り上げと経常利益の割合。

・有利子負債依存度…総資産のうち、利息支払いと元本返済の義務付けがある有利子負債の割合。(有利子負債÷総資本)
・自己資本比率…総資産と自己資本の割合。返済の必要が無い資本である。(自己資本÷総資本)
・流動比率…共に1年以内となる、現金化可能な資産(流動資産)と支払い義務が生じる負債(流動負債)を比較することによる、短期的な支払い能力。

定性分析…各班により項目、基準は様々。

EVA(経済的付加価値)…投下された資本がどれだけのリターンを生み出しているかを示す。ROIC(投下資本利益率…税引き後営業利益÷投下資本)とWACC(加重平均コスト…有利子負債による負債コスト+返済の義務が無い株主資本に対する資本コスト)を用いて計算される。
EVA=ROIC-WACC

橋本ゼミ、3月の明治大学との合同研究会報告については以上となります。