財務諸表の作成と公開 後編(2014年11月27日)

5期生の西岡真理です。
引き続き、前回(11月27日)の報告です。

財務諸表の作成と公開

5.貸借対照表の内容
・貸借対照表は、決算日現在の資産・負債・資本(純資産)の有高 を示し、財政状態を表すもの。

2006年以降、資本に代えて純資産という語が用いられるように なった。
これは、株主が払い込んだ資本のほかに有価証券評価差額金などの 項目が「資本の部」に表示されるようになり、それらの合計額を示 すのに資本という用語が適当でなくなったからである。

資産には、流動資産、固定資産、繰延資産がある。
流動資産と固定資産の分類基準について、かつては1年基準が基本 であった。
しかし、1年基準では、資産の分類が不適切になる場合がある。

(例)ウィスキーのメーカー
このメーカーにとってウィスキーは販売対象物であるから、固定資 産にはならない。
しかし、販売するまでに12年も寝かしてから販売されるものがあ る。
1年基準に従えば、このウィスキーは、固定資産に分類されてしま う。

このような不都合を是正するために考えられたのが、正常営業循環 期間の基準である。
これは、企業の本来の営業過程である「現金→商品・製品→売上債 権→現金」というサイクルの中にある資産を流動資産に分類する基 準である。

したがって上記のサイクル外の項目については、1年以内に換金な いし消費されるか否かにより、流動資産と固定資産に分類されるこ とになる。

流動資産には、当座資産(現金、預金、売掛金など)、棚卸資産( 商品、製品、仕掛品など)、その他の流動資産(前払費用など)が ある。
当座資産は、換金性の高い資産である。
そのため、企業の短期的な債務支払能力の分析に用いられる。

棚卸資産の有高は、営業活動の好不調を敏感に反映する。
営業活動が好調であれば、在庫が減り、一般に棚卸資産は減少する 。

棚卸資産の増加は保管費などのコストの増加に結び付くので、経営 者は棚卸資産回転率に注意し、維持すべき棚卸資産のレベルを適切 に決定しなければならない。

繰延資産…
創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費は、支出の効果 が将来にわたって発現すると期待されるため、貸借対照表に繰延資 産として計上し、後の期間で償却することが認められている。
繰延資産の計上は、強制ではなく、許容されている。
したがって、上記の項目を支出時に一括費用計上するか、繰延資産 として貸借対照表に計上するかは、企業の選択に委ねられている。

負債には、流動負債、固定負債がある。
負債項目に流動・固定の分類基準は、資産項目で採用された基準と 同じものでなければならない。
そのため、正常営業循環の基準が適用される。

流動負債には、営業債務(買掛金、支払手形など)、営業外債務( 支払金、短期借入金など)、その他の流動負債(修繕引当金など) がある。
流動負債の中には法律上の債務でないものも含まれる。
それは、修繕引当金などの負債性引当金である。
通常1年以内に使用される見込みのものは、流動負債として貸借対 照表に記載される。

純資産には、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権がある。
評価・換算差額等のセクションに示される評価差額金には、土地再 評価差額金やその他有価証券差額金がある。

6.株主資本等変動計算書の内容
株主資本等変動計算書の目的は、貸借対照表の純資産の部における 1会計期間の変動額について、主に株主に帰属する部分(株主資本 )の変動自由を報告することにある。

区分は、貸借対照表における純資産の部の表示区分に従っており、 株主資本、評価・換算差額等、新株予約権に分割され、その合計が 純資産の合計額となる。

株主資本等変動計算書の意義は、各々の項目について当期変動額と 事由を把握できる点にある。

<株主資本>
定期的に株主資本の変動をもたらす事由は、当期純利益または当期 純損失の計上と、剰余金の配当および処分である。
いずれもその結果、繰越利益剰余金が変動する。

<評価・換算差額等>
評価・換算差額等のセクションには、その他有価証券評価差額金と 繰延ヘッジ損益が記載される。
これらは、未実現の損益であるため当期純利益の計算には含まれず 、利益剰余金にはならない。
また株主が払い込んだ資本でもないため、株主資本とは区別して、 当期中の増減額を記載するのである。

<新株予約権>
新株予約権は、その管理を有する者からの権利行使により、会社が 新株式を発行する(または保有中の自己株式を引き渡す)義務を示 している。
まだ株主ではない者との取引で計上されるため、株主資本等変動計 算書では、株主資本と区別し、示される。

7.付属明細表と個別注記表
<付属明細表>
付属明細表は、損益計算書や貸借対照表などに記載された項目中の 重要なものについて、その内容を詳細に示したものである。

企業を分析するための情報が多くあり、アナリストに役立つ情報を 伝えるのが、付属明細表なのである。

財務諸表等規則では、1有価証券、2有形固定資産等、3引当金の 明細表を求めている。
会社計算規則は、1有形固定資産と無形固定資産、2引当金、3販 売費および一般管理費の明細表を要求している。

<財務諸表注記と個別注記表>
財務諸表は簡潔なほうが良いが、投資者やアナリストは、多くの情 報を要求する。
そこで、財務諸表の明瞭性と豊富な情報量を両立するために用いら れる手段が注記である。

現在開示されている注記情報は、①重要な会計方針、②継続企業の 前提、③貸借対照表と損益計算書の記載項目の詳細、④重要な後発 事象など。

①重要な会計方針
会計方針には複数の方法があり、企業はそれぞれ最適な会計方針を 選択することができる。
したがって、どの会計方針を選択したのか明示しなければならない 。

いったん選択した会計方針は、毎期継続して適用されなければなら ない。
これを継続性の原則という。

正当な理由があれば変更でき、その場合変更の旨と理由を注記する 。
さらに、変更後の会計方針に基づき過去の財務諸表を作り直す。
これを財務諸表の遡及処理という。

④重要な後発事象
決算日後から財務諸表の作成日までに発生した事象の中で、次期以 降の経営成績と財務状態に大きな影響を及ぼすものを重要な後発事 象と言い、注記が求められている。

8.四半期財務諸表
四半期財務諸表を開示する目的は、企業の業績と財政状態などの変 化を適時に示し、証券投資者の意思決定に有用な情報を提供するこ とにある。

<四半期財務諸表の開示>
四半期財務諸表は、四半期末日の貸借対照表、および会計年度の期 首からその四半期末までを累計した期間の損益計算とキャッシュ・ フロー計算書が開示される。
期間比較のために前年の四半期財務諸表を伴わせて開示させる。

<実績主義>
四半期財務諸表を作成する方法として実績主義と予測主義がある。
実績主義は、四半期を独立した機関とみなす。
そのため年度の財務諸表と同じ会計処理をする。
予測主義は、四半期を年度の一構成部分とみなす。
年度財務諸表と異なる会計処理が適用される。

<四半期レビュー>
四半期財務諸表は、公認会計士または監査法人の監査証明を受ける 必要がある。
四半期レビューでは、年度の財務諸表監査よりも簡単な手続きを実 施する。

会計情報をタイムリーに入手することができる。
一方で、短期的な利益を追求し、近視眼的な経営が行われてるかも しれないという懸念もある。

あと今年も1か月を切りました。
気温も寒くなり、いよいよカイロが手放せない季節になりました( 笑)
皆さんも風邪を引かないように気を付けてくださいね!

今回(11月27日)のゼミ報告は以上です。