剰余金と配当(2014年10月30日)

5期生の西岡真理です。
更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
今回のゼミでは前回の続きでソウさんと、『剰余金と配当』につい て小林君が発表をしました。

「計算書類の作成と報告のスケジュール」
株式会社が会社法に従い作成と報告をしなければならない計算書類 は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表 がある。
このほかの会社法は事業報告と付属明細書の作成を求めている。

「計算書類の作成と監査」
株式会社は会社法に従い決算日から3か月以内に定時株主総会を開 催する。...
招集通知には監査済みの計算書類が添付されるため、決算日後所定 の期間以内に計算書類を作成し、計算書類を提出する必要がある。

「招集通知の発送と計算書類の間接開示」
株主総会の招集手続きは公開・非公開、取締役会設置・非設置など 会社の類型によって異なる。
原則的には、株主総会の2週間前までに招集通知を発行する必要が ある。
一方、株主全員の同意があるときは、招集手続きの省略も可能であ る。

株式会社は、各事業年度に係る計算書類および事業報告並びにこれ らの付属明細書を、原則として定時株主総会開催日の2週間前から 5年間、本店に備えおくこととされている。
そして、株主および債権者は、当該株式会社の営業時間内であれば 、いつでも、これらの書面の閲覧の請求等をすればできることとさ れている。
このように、投資家等が所定の場所に行くなどすれば、開示される 制度と間接開示という。

「配当の決定」
監査役会設置会社または委員会設置会社が同時に会社加算人設置会 社でもあり、取締役の任期が1年を超えず、定款で剰余金の配当を 取締役会が決定する旨を定め、かつ計算書類などの監査で適正意見 が付されている場合は取締役会で剰余金の配当を決めることができ る。

「配当の支払」
会社から株主への配当金の支払いは通常配当金領収書を株主名簿上 の株主に送付し、株主は会社の指定した金融機関で配当金領収書と 引き換えに現金の支払いを受ける。

ここまでがソウさんの発表でした。
ここからは小林君の発表内容です。
配当の決定と配当の支払については重複しています。

「配当の決定」
損益計算書と株主資本等変動計算書の報告される計算書類の情報か ら、利害関係者の合意がある程度形成される。
株主総会にて、配当に関する議案がかけられ、配当財産の種類や金 額が決定される。
金銭以外の財産を配当可能(2006年会社法改正より)だが、株 式は余剰金の配当として交付できない。

取締役会で余剰金の配当を決めることができるが、それには条件が ある。
・監査役会設置会社または委員会設置会社が、同時に会計監査人設 置会社である
・取締役の任期が1年を超えない
・定款で剰余金の配当を取締役会が決定する旨を定めている
・計算書類等の監査で適正意見が付されている
この5つに当てはまらなければならない。
取締役会で剰余金の配当を決めることができれば、いちいち総会を 開かなくて済むため、弾力的で機動性が出てくる。

「中間配当」
取締役会を設置した株式会社は定款で中間配当を行う旨を定めてい れば、1事業年度の途中において1回に限り、取締役会の決議によ り剰余金の配当をすることができる。
これは期末の配当とは異なり、株式総会の認証を得る必要がない。

「配当の回数制限」
旧商法での利益の配当は、決算に伴う利益処分か中間配当として行 うかの年2回であった。
2005年の会社法により配当の回数制限の廃止となった(配分可 能類の範囲内)。
このことにより機動的な配当が可能になり、戦略的な配当政策がで きる。

「事例 野村ホールディングス」
野村ホールディングスでは2006年第1四半期から四半期配当を 実施した。
株主に対して透明性を示し、安定株主の確保と定着を狙った。
その結果、投資者をひきつけ、個人株主数が急増。

「配当政策」
安定配当政策…
以前の日本の企業が採用
利益額に変動があっても1株当たりの配当額を一定額に維持する。

上場企業に関する2000年度の配当現状調査によれば、1988 年以降2000年まで3兆円前後に維持している。

減益企業667社の中で減配したのは77社(11.5%)
据え置いたのは408社(61.2%)

配当性向政策…
近年の日本の企業が採用
業績に連動して配当を決定する。

2006年3月期は前期より17%増加
そのあと、リーマンショックにより2期連続減配
2013年上半期に係る中間配当の金額は5年ぶりに過去最高(8 兆1000億円)

「債権者保護」
株主の有限責任制度は、債権者側から見ると、純資産で保証されて いるだけである
剰余金の配当において資本準備金または利益準備金の積立てを求め 、資金の内部留保を強制する

「配当における準備金の積立て」
資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで、 配当総額の10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立 てる。
※両方で配当した場合は、要積立額に資本剰余金配当割合(資本剰 余金を用いた配当額÷配当総額)を乗じた額もって資本準備金を積 立て

「任意積立金」
会社法により、株式会社が剰余金の処分として任意積立金を設定で きる
基本、株主総会での承認がいるが、一定の要件を満たせば取締役会 で決めることができる
目的のある積立金は総称して任意積立金と呼ぶ(例として、新築積 立金)
目的達成後、自動的に繰越利益剰余金に算入される
目的のない積立金は別途積立金と呼ぶ
取り崩す際、株主総会の承認が必要となる

例として、配当における準備金の積立ての仕訳を挙げてくれました 。
株主総会において、次の通り剰余金の金銭による配当をすることに した、株主配当金は1,000,000
なお、利益準備金は会社法で定められている最低額とし、決算日現 在の資本金は20,000,000
資本準備金は1,000,000、利益準備金は3,000,00 0であった。
(繰越利益剰余金)1,100,000 (未払配当金)1,000,000
              (利益準備金) 100,000

平成×2年3月20日の株主総会で、繰越利益剰余金を財源とした 剰余金の配当等が次の通り決定した。
配当金 200,000
利益準備金 会社法が規定する積立額
新築積立金 35,000
別途積立金 40,000

(繰越利益剰余金)295,000 (未払配当金)200,000
              (利益準備金)20,000
              (新築積立金)35,000
              (別途積立金)40,000

「分配可能額の規定」
会社法は…
利益配当、中間配当、資本金と法定準備金の前章に伴う払戻し、自 己株式の取得をそれぞれまとめて、「株主に対して交付する金銭な ど」として扱い、それぞれに分配可能額という統一的な財政規制を かけた
剰余金(その他資本剰余金 その他利益剰余金)の範囲を基礎に分 配可能額を規定

その他資本剰余金:自己資本の処分差益 資本金の減少差益
その他利益剰余金:任意積立金 繰越利益剰余金

「分配可能額から控除」
自己株式の帳簿価格
「のれん1/ 2」+「繰延資産」>「資本金と準備金」のときその超過額(のれん 等調整額分)
「その他通貨証券評価差額金」「土地再評価差額金」がマイナスの とき、評価差損の分
連結計算書類を作成している株式会社は、子会社の業績不振などに より、連結貸借対照表の株主資本(評価差損とのれん等調整額を控 除後)が個別貸借対照表の株主資本(評価差損とのれん等調整額を 控除後)を下回るとき、その差額分
株式会社の純資産額が300万未満のとき、その差額分

「分配可能額と配当上限額の計算」
資産総額1,000万円
のれん1/2+繰延資産=100万
負債総額310万円
純資産額690万円
資本金280万円 資本準備金5万円 利益準備金15万
任意積立金200万円 繰越利益剰余金100万円
土地再評価差額金85万円
その他有価証券評価差額金30万円
自己株式25万円

「分配可能額と配当上限額の計算(単位:万円)」
①剰余金の算定
資産1,000+自己株式25-負債310-(資本金280+資 本準備金5+利益準備金15)-土地再評価差額金85-その他評 価差額金30=剰余金300

②のれん等調整額があるか調べる
のれん1/ 2+繰延資産=100<資本金280+資本準備金5+利益準備金1 5=300
→超過分なし

③自己株式の帳簿価格を控除
剰余金300-自己株式25=分配可能額275

④配当上限額の計算
資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の1/ 4になるまで配当金の1/ 10を、資本準備金、利益準備金に積立てなければいけないので、そ の積立額を控除した金額が配当の上限金額になるため、
分配可能額275×10/11=配当上限額250

損失処理も仕訳で考えてくれました。
当期純損失300が計上された
(繰越利益剰余金)300  (損益)300

当期純損失500が計上された
(繰越利益剰余金)300  (損益)500
(利益剰余金)  200

当期純損失800が計上された
(繰越利益剰余金)300  (損益)800
(利益剰余金)  200
(繰越損失)   300

当期純損失800が計上された
(繰越利益剰余金)300  (損益)800
(利益剰余金)  200
(資本剰余金)  300

当期純損失1,000が計上された
(繰越利益剰余金)300  (損益)1,000
(利益剰余金)  200
(資本剰余金)  300
(繰越損失or資本金)200

10月30日のゼミの報告は以上です。