外貨表示額の日本円換算(2014年10月16日)

10月16日のゼミでは三谷さんより外貨や本支店についての発表がありましたが、やや難解な内容であるため適時先生からの解説を交えつつ全体で学習していきました。

発表「国際活動 外貨表示額を日本円換算する」
日本企業が対象の話ですが企業活動が国内外両方で行われる場合、取引の記録はそれぞれの国の通貨で作られるためいずれ日本円に直す必要があります。外国通貨で記録された取引のことを外貨建取引と言い、外国通貨で記録された会計項目を日本円に表示しなおす手続きのこと換算と呼びます。

換算が必要なケースは主に3つあり、国内に本店があることが前提です。
① 外国取引先との外貨建取引があるとき
② 外国で事業を営む支店があるとき...
③ 外国に子会社を持っているとき
これらは企業全体の財務諸表を作成する際に基準を統一する必要があるため、換算を行う基準となります。

 輸出や輸入のニュースでよく耳にする言葉に為替レートがあります。これは外国通貨の換算基準をあらわしており、たとえば昨日は為替レート1ドル100円だったが、今日は1ドル109円となったりするように常に変化するものでもあります。輸出入取引を換算するときは、為替レートの変動に応じて為替差益あるいは為替差損を計上することになります。

例)製造原価1,500,000円の車一台をアメリカに20,000ドルで輸出。
売掛金20,000ドル、売上原価1,500,000円で、このとき為替レートは1ドル=100円だった。その後、売掛金を回収したがその際為替レートが1ドル=80円となっていた。

この場合、換算するには2通りの取引基準による方法があります。
① 「1取引基準」…最終的な決済額をあてはめる。
80円(1ドル)×2万ドル(売掛金)=160万円(売上高)→
160万円(売上高)-150万円(売上原価)=10万円(純利益)

② 「2取引基準」…輸出入時と決済時を別々の取引として処理
輸出時:100円(1ドル)×2万ドル(売掛金)=200万円(売上高)→
    200万円(売上高)-150万円(売上原価)=50万円(売上総利益)
決済時:200万円-160万円(1ドル80円時の売上高)=40万円(為替差損)→
   50万円(売上総利益)-40万円(為替差損)=10万円(純利益)
といった結果となります。

(先生補足)1取引基準では、輸出入品の購入/販売時いくらだったかが記録できず、為替の差損なのか営業がイマイチでの損なのか分からなくなるため、現行の会計基準は2取引基準を薦めている。実際使われない方法だとしても、なぜ使われないかを把握しておくこと。

 次は為替レートの区分です。
為替レートはHR(Historical Rate)…取引発生時のレートとCR(Current Rate)…決算時のレート2つの時期に分けられます。為替レートに関する様々な項目は、HRまたはCRどちらか適切なほうで換算されますが、振り分け方法が主に4種類あります。
① 流動・非流動法…流動項目をCR、固定項目をHRで換算。
② 貨幣・非貨幣法…貨幣性項目をCR、非貨幣性項目をHRで換算。
③ テンポラル法(属性法)…期末の時価で表す項目をCR、原価で表す項目をHRで換算。
つまり、記録された時点によって振り分けている。
④ 決算日レート法…すべての項目をCRで換算。

会計基準と為替レート
現行の会計基準では、「幣性項目をすべて決算日レートで換算しなおす」ことを定めています。これには理由があり、為替レートによる変動が及ぼす影響を明らかにするためであるとされます。この決まりがあるため、企業は外貨での資金調達、運用の際に為替変動の影響がどれだけあったかを記録することとなり、その結果純利益の記載金額が期中→期末で大きく変動することもあります。

 為替リスクの管理
為替差損/益は日本限定の企業活動であれば存在しないものなので、特別な損益として認識されます。為替は数字上の変化でこそあれ、実際の営業活動や実態のある現物には関わりません。そのため為替変動による利益減で経営が悪化しているように見えても実際の設備に悪いところは無いこともありえます。ですから、為替の変動による損は誤解を生みやすいものといえます。そのため企業ではそうした危険性、為替リスクをなるべくなくす対策が採られています。
① 外貨建ての資産と負債を同時に持ち、変動による為替損益を相殺する方法。
② 為替予約…将来、外貨と日本円を交換する為替レートをあらかじめ定め、契約しておく方法。

在外支店と在外子会社。
在外支店の場合…本店の影響を強く受けているため、テンポラル法を用いて時点ごとの換算を行うことで本支店取引を明確にする。
在外子会社…子会社はそれぞれ独自の経営を行うケースが多い→ある程度の独立性があるものであるため、決算日レート法を用いて決算日に各子会社単一の為替レートで揃える。
このような方法が適切であるとされています。

 会計基準の国際統合
発表の最後は、国際会計基準IFRSの歴史についてです。
前身となる会計基準は1973年に設立された国際会計基準委員会が作り上げたIAS(International Accounting Standards)であります。
その後2001年に大幅な組織改革があり、以降の基準名をIFRSと呼ぶこととしたことが誕生といえます。ちなみに正式名称は国際財務報告基準となっています。
IFRSは現在、国際間での基準統一によるメリットと各国基準からの変更による様々なデメリットの間で現在も導入か否かで意見が分かれ続けています。

(先生補足)2017年に、IFRSにアメリカ式会計基準の一部をあわせることが発表された。両者の歩み寄りが強まれば日本の会計基準が孤立し海外投資の面でデメリットが強まるため、今後の動向に注目しておくこと。最近「日本にあわせたIFRS」なる基準が新たに作られようとしているらしいが、未知数である。

10月16日のゼミ学習は以上となります。