設備投資と研究開発(2014年7月10日)

橋本ゼミ5期生の宮本和雅です。

7月10日の5期生ゼミでは、阪下君による「設備投資と研究開発」についての発表が行われました。この日は接近する台風の影響があってか道路が混みがちだったようで、通学手段によっては時間に間に合うことが難しくなったようです。自分は大学近くなのであまり苦労はしませんが、遠方から来ているみなさん、雨の日は本当にお疲れ様です。

ここから本題となります。
阪下君の発表「設備と研究開発」は、企業が自社に関わる有形固定資産や無形固定資産に対しその価値を変動させる方法についての紹介がメインでした。古くなったモノの価値計上をどうするか、収益性が下がった固定資産の価値をどう変えるか、研究開発は資産か費用か等々の会計処理について説明していきます。

まず初めに「有形固定資産」と「無形固定資産」の定義について、
(1)1年を超えて保有する資産であること(固定)
(2)物として存在すること.../しないこと(有形・無形の区別)
であることを押さえます。この二項目が基本ですが例外もあり、
(3)長期貸付金、投資有価証券、出資金、長期前払い費用などは「投資その他の資産」とする(特別扱い)
このことも知っておく必要があります。

ここから企業の設備投資についての説明が始まります。設備投資と言うと製造機械や営業車の導入など、有形固定資産を扱うことがほとんどです。まず「有形固定資産の取得原価」を知り、設備投資に必要な金額を把握する必要があります。

「有形固定資産の取得原価」
A)購入する場合…購入代価+付随費用(買い入れ手数料、引き取り運賃、据付費など)
B)自家建設する場合…製造原価計算により算出。
C)発行した株式の対価として得る場合…出資者へ交付した株式の発行価額と同額
ここまではハッキリ計算しやすいのですが、
D)交換あるいは贈与で得る場合…計上してよい金額が複数種類ある(契約時と実際の受け取り時で価値が異なるから。ペンを交換するとして約束時と3日後の受け渡し時ではインクが乾いて少々価値が下がっているかもしれない)。
そのため、交換する場合は
(1)譲渡資産の簿価 (交換に出す資産の記帳額)
(2)譲渡資産の時価 (交換に出す資産の受け渡し時の時価)
(3)受け入れ資産の時価 (もらう資産の受け渡し時の時価)
のいずれかで計上することが認められています。実際には①を使う場合が多いそうですがその理由についてはまた詳しく調べてみようと思います。
    贈与で得た場合は、貸方科目に何か項目を作り適切な会計処理となるよう調整する必要がありますが、調整方法はハッキリと決められてはいないようです。
有形固定資産の取得方法に関してはこのような決まりに従い算出されています。

「減価償却」
上記の取得額で計上された固定資産は、使用することで年々価値が下がったりメンテナンス費用がかかったりします。そこで有形固定資産ごとに耐用年数を設定し、一定の方法で徐々に費用として価値を減少させることを「減価償却」と呼びます。耐用年数が到来した際に残っている資産の価値は「残存価額」と呼び、かつては取得原価の10%とされていました。現在の会計制度では2007年4月以降に使用開始した資産に対し、残存価額を0%とするよう規定されています。

ここからは、減価償却の計算方法3つを紹介します。
例)取得額200円、耐用年数4年、残存価額0の場合
A)定額法
耐用年数の到来まで毎期一定額を費用計上する方法。
200÷4=50円  この額が毎期支払う減価償却額です。
B)定率法
期首の未償却残高を一定率で割り、出てきた金額で費用計上する方法。
※償却率を50%とする
一年目:200×0.5=100円  → 二年目:(200―100)円×0.5=50円
と計算され、毎期支払う額がはじめ大きく後々少なくなるという特徴があります。
最終年度の計算は説明が難しいので、割愛させていただきます。
C)生産高比例法
実際の利用度に応じた額を支払う方法。
※限界走行距離80㎞の営業車を取得。今期計20㎞走行したとする。
200×(20÷80)=50円  今期支払う減価償却額です。
C)については先生より解説があり、物の使用限界を知ることは困難でなおかつ毎期ごとの測定に手間がかかるため生産高比例法を採用する企業は少ないそうです。
以上が減価償却の計算方法でした。

「減損会計」
固定資産は常に期待通りの利益を生むとは限りません。5年収益を見込んで携帯機器の工場を拡大したが、2年後にスマートフォンが普及したことで自社製品が人々の注目から外れてしまったりすると設備投資額を取り戻すことさえ困難となるかもしれません。
実際に減損処理として資産の価値を回収可能額まで下げることは、減益の兆候を測定し、減損処理の必要性を判定したうえで行われます。減った額は、減損損失として特別損失に計上されます。

「研究開発」
固定資産が様々な費用を抱えつつも利益をもたらす資産として扱われるように、研究開発もかつては資産として扱い、徐々に価値を減らす方法が認められ使用されていました。しかし情報社会の発展により物・技術の普及と衰退のサイクルが短くなったためでしょうか、現在において資産計上できるのは開発費の一部のみに限られています。上場会社で開発費を資産計上しているところはごく一部のみとなっているようです。

発表に関するまとめは以上となります。他にもいくつかの発表内容があったのですが、まとめることは中々難しく筆が思うように進まないものです。せっかく発表していただいた阪下君やゼミ生みんなのためにもこれから精進していきます。

最後に、今回の発表内で橋本先生が注目した「資産除去債務」及び「割引現在価値」について触れます。
固定資産としてアパート・マンションなどの建物を借りた場合、返却時に内装を元のプレーンな状態に戻す必要があります。こうした費用の発生は、資産を得た企業があえて資産をなくす処理をすることから資産を除去するといった言い方をします。「資産除去債務」とは、有形固定資産の除去に関して法令や契約で要求される法律上の義務のことです。

「割引現在価値」とは、将来の価値を期待される物事が、今現在ではどのくらいの価値となるかを表す言葉です。将来の120円は、今の120円と同じ価値でしょうか?
将来消費税率が上がり20%になるなら、将来の120円=今の108円で同じ買い物となるように貨幣もずっと同じ価値ではありません。「割引現在価値」は日常の様々な場所に潜んでいるといえます。

資産除去では、資産を得た際に将来発生する資産除去債務を予測して取得金額に上乗せしておきます。100円契約で建物を借りたとして
(建物) 120   (未払金)    100
         (資産除去債務) 20
取得時にこのような仕分けをした後、有形固定資産の金額の一部として毎期減価償却されていくというわけです。

予習、復習もいよいよ時間確保が必要になっています。次回、とうとうゼミで初めての発表となるのでもうひと踏ん張り!といったところです。
今回の橋本ゼミは以上となります。