財務諸表による経営分析(2014年6月5日)

4期生の石田裕明です
今週は「財務諸表による経営分析」の実践ということで実際に財務諸表を用い経営分析を行いました
先ず、私がソニーについて経営分析を行い発表をしました、次に西村涼太君が日本マイクロニクスについて経営分析を行い発表をしました
その後、余った時間で来週から本格的に始める共同研究の事前準備を行いました

ソニーの経営分析ですが、先ず過去5年度分の損益分析と財政分析を行いました
損益分析はエレクトロニクス、エンターテイメント、金融にセグメントを分けて詳細を見ていきました
エンターテイメント事業、金融事業は売上高営業利益率が高い数値で安定しており、2013年度には両事業で営業利益2721億円を稼ぎだしていることから高収益な優良事業であると分かりました
この両事業とは対照的にエレクトロニクス事業は長い間、不調に陥っており、現状はエンターテイメント事業と金融事業に支えられていると言えます...
しかしながらエレクトロニクス事業の売上高がほぼ同じである2009年度と2013年度を比較すると営業損失が約半分に圧縮されており、平井一夫氏が代表取締役に就任してからは徐々にですがエレクトロニクス事業が収益力を取り戻しつつあることが読み取れました
財政分析ですが、ここで注目したのは金融事業がグループ全体の自己資本比率を下げることで財務レバレッジを高めているところです
基本的に金融事業は自己資本比率が極端に低くなります、これは個人や法人の預貯金などは金融事業を営む企業にとっては他人資本となるためです
この金融事業が持つ特性によってソニーはグループ全体として財務レバレッジを高め、ROEを高めることが出来ていると言えます
それについてグループ全体のROE、金融事業を除いたROE、金融事業のROEを見ていき、実際にそうなっていることを確認しました
次に損益分岐点分析を行うため各事業の総費用を固定費と変動費に分解・検証していきました、手法としては最小二乗法を用いました
各事業の固定費と変動費を分解・検証した結果、ソニー全体の固定費の大半をエレクトロニクス事業が占めている事が分かりました
この事から分かることはエレクトロニクス事業はソニー全体の営業レバレッジを高め外部環境に対するリスクを増大させていること、エンターテイメント・金融事業はソニー全体の営業レバレッジを低下させ外部環境に対するリスクを軽減していることです
基本的に外部環境が良い場合は営業レバレッジを高めることが良く、外部環境が悪い場合は営業レバレッジを低下させることが良いとされています
ソニーは営業レバレッジの高い事業と低い事業を持つことでグループ全体として外部環境に対するリスクをコントロールする理想的な事業ポートフォリオを持っていると考えられます
しかしながら報道などでソニーの不調が伝えられています、それはエレクトロニクス事業が直面している外部環境がエンターテイメント・金融事業でカバーできないほど悪いという事を物語っていると言えます
このような環境下ではエレクトロニクス事業の固定費を削減し営業レバレッジを低下させていくことが必要になってきます、そこで固定費をどの程度削減する必要があるのか損益分岐点分析で見ていきました
損益分岐点分析を行った結果、エレクトロニクス事業が利益を出すためには現在のコスト構造のままであるならば売上高を1兆415億円伸ばすか、売上高が伸びないのであれば固定費を1261億円削減する必要がある事が分かりました

"エレクトロニクス事業の構造変革のために13年度と14年度に合計で3000億円以上の費用を計上。その効果として15年度以降に年間1000億円以上のコスト削減を見込む。"
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASFL220RN_22 052014000000

15年度以降に年間1000億円以上のコスト削減を見込むとされていますが、損益分岐点分析で判明した固定費を1261億円削減する必要がある事と整合性が取れます
今回行った財務諸表分析でソニーの経営課題はエレクトロニクス事業を今後どうするのかという一点にある事が分かりました
そこで財務諸表分析を元に戦略パターンを3つ考え、どれがベストな戦略か、一つ一つ検証を行い議論を行いました
①エレクトロニクス事業はスマートフォンやテレビなどの価格競争の激しいコモディティ製品群からは撤退し、カメラやイメージセンサー、ヘッドホンなどソニーが強みを持つ音響映像機器製品群に経営資源を集中させ、同時にエンターテイメント事業と金融事業を伸ばしていく
②スマートフォンやテレビなどの価格競争の激しいコモディティ製品群をグループに残しながらも損益に影響を与えないように外部環境を正確にモニタリングすると同時に構造改革を行い、他は①と同様の戦略を実行する
③売上高を伸ばして損益分岐点を突破する
難易度は③>②>①となります
③の売上高を伸ばして損益分岐点を突破する戦略ですが、これは平井一夫氏が代表取締役に就任して2年目までは採用していたと考えられます
ソニーの技術陣の奮起を促していた報道を良く目にしましたし、製品も良いモノが多く出てきていたと思います、ただ結果が付いてこなかったという点では残念でした
③の戦略が芳しくないとなると残るは①もしくは②となります
エレクトロニクス事業の中でもソニーが強みを持ち利益が出ているカメラやイメージセンサー、ヘッドホンなどの音響映像機器製品群に経営資源を集中させ、高収益なエンターテイメント事業と金融事業を伸ばしていく①の戦略が会計的な視点では良いように見えます
ただそうなると様々な事業の技術や経営資源を活かしてきた経営が取れなくなります、そのため外部環境を正確にモニタリングし損益への影響を与えないのならば②の方が良いと経営的な視点では見えます
現在のソニーは②の戦略を採用しているといえます、ただ想定以上に外部環境が悪化するような状況になれば①の戦略に移行する必要が出てくるというのが結論です

次に日本マイクロニクスの経営分析ですが過去5年度分の損益情報からROA、自己資本比率、キャッシュフロー、資本回転率、手元流動性などを見ていきました
2011、2012年度は減損損失と繰延税金資産の取り崩しによって巨額の損失が出たが、2013年度には回復に転じているという説明がありました
ただここで2013年度に設備投資額と研究開発費が大幅に削減されたことが利益が回復に転じた理由ではないかという質問と売上高が乱高下しており、不安定な事業構造ではないかという質問が入りました
これについては半導体関連の事業なため、設備投資の需要動向に大きく左右されるといった説明がありました
財務諸表分析は軽く終わり、そこからは日本マイクロニクスのチャートを見ながら西村君の株式投資論が始まりました
それは財務諸表の数値と株価はある程度連動しているが、何らかの先行情報が株価に影響を与えており、幅広く情報を集める必要があるとのことでした
確かに投資家心理は先行情報で形成されることが多いと思います、ただその内容は神のみぞ知る、この様なことをシュレーディンガーの猫と言うのでしょうか?

日本マイクロニクスが大幅反落、東証が信用規制強化
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201406030056

ゼミ終了後に西村君にこの銘柄、仕手株化してない?といった内容を聞いてみましたが、短期的な売買で勝つといった内容で短期投資家だなぁといった印象を持ちました(笑)
確かに短期的な売買で勝つというのは西村君が言う通り、良い面があるので同意するところは多かったです
ただ私、個人としては長期投資家を目指したいですね、短期的な売買で一喜一憂して精神を擦り減らすよりも、本当に良い企業に投資して時間を掛けて配当で元金を回収したほうが良いと思っています
そこで使えるのが社会的責任投資という考え方ではないかと最近思っております、従来の財務指標に加え、安定した配当を見込みつつ、社会的倫理的な基準を基に企業を精選し投資するというものです
著名な長期投資家にバークシャーハサウェイを率いるウォーレン・バフェット氏が居られますが、色々と彼に関連する記事を読むと社会的責任投資に近い基準で投資を行っているのかなという感じがします
やはり長期投資で大事なのは本当に魅力のある企業を選ぶという慧眼です、まだまだ修行が足りませんが、私もいずれは慧眼を身に付けたいです

財務諸表分析の実践が終わった後は各班に分かれて来週から行っていく共同研究の事前準備を行っていきました
各班とも良い研究成果が出せるよう頑張っていきます

今週の報告は以上です