財務諸表による経営分析(2014年5月22日)

4期生の石田裕明です
今週は始めに神山祭と合宿に関して話し合い、その後「財務諸表による経営分析」に関しての勉強を行いました
プレゼンテーションの担当者は西村涼太君でした
共同研究に関してですが、日経ストックリーグに参加することになりました、最優秀賞を目指して頑張りたいと思います

「財務諸表による経営分析」は先ず、分析の視点と方法について見ていきました
財務諸表分析を行う上で重要になってくる視点は「収益性」と「安全性」です
分析の方法には主に1.理論値、目標値、2.時系列分析、3.クロスセクション分析の3つがあります
1.理論値、目標値とは流動比率や在庫回転期間などがあります
2.時系列分析は趨勢比較とも言われ当期の数値を過年度のものと比較するものです...
3.クロスセクション分析とは企業間比較とも言われ自社の数値と他社の数値を比較するものです
これらは業種や業態によって区切り同業種や同業態の企業を比較する事に意義があるため比較対象の選択には注意が必要です
また複数の会計基準や会計処理が是認され、企業はその選択肢の中から自由に選択します
米国会計基準、国際会計基準では営業利益や「のれん」の処理などについて大きな違いがあることはこれまでに見てきた通りです
そのため会計基準や会計処理に差異がある場合には、その差異による影響を考慮し財務諸表分析を行う必要があります
それらの考慮を入れずに単純に財務諸表分析を行ったとしても正しい判断を行うための情報は得られません

次に「収益性」について見ていきました、主な指標としてROAやROEがあります
総資本利益率とも呼ばれるROA(return on asset)ですが計算式はROA = 利益 / 総資本となります
これは投資された総資本がどの程度利益を稼いでいるのか、つまり投下された総資本の効率性を示す指標です
株主資本利益率とも呼ばれるROE(return on equity)ですが計算式はROE = 利益 / 株主資本となります
これは株主の持分である株主資本を使いどの程度利益を稼いでいるのか、つまり投下された株主資本の効率性を示す指標です
ここで重要になってくるのは総資本における他人資本と株主資本の構成比です、総資本における他人資本の割合が大きいことを高レバレッジ、小さいことを低レバレッジといいます
これは高レバレッジ状態においてはROAが他人資本の利子率を上回っている場合においては低レバレッジ状態よりも高いROEを獲得することが出来るからです
このように総資本の他人資本と株主資本の構成比によってROEが増減する事を財務レバレッジと呼びます
その他には売上高利益率、資本回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率、有形固定資産回転率、手元流動性比率について見ていきました

そして「安全性」について見ていきました、ストックからの主な指標として流動比率や自己資本比率があり、フローからの主な指標としては損益分岐点分析があります
流動比率の計算式は流動比率 = 流動資産 / 流動負債となります
これは通常営業循環または1年以内に返済すべき負債と通常営業循環または1年以内に現金化される資産の倍率であり企業の短期的な債務返済能力を示す指標です
自己資本比率の計算式は株主資本比率 = 自己資本 / 総資本となります
これは長期的な企業の安定性を示す指標となり、この比率が高いほど財務の安定性が高いということになり健全性の目安は50%となります
損益分岐点分析とは総売上高線と総費用線を分析することで利益と損失が分岐する売上高を求めるものです、さらに総費用を固定費と変動費に分解することで営業レバレッジがどの状態にあるのかを分析することも出来ます
総費用に占める固定費の割合が大きいことを高レバレッジ、小さいことを低レバレッジといいます
その他には当座比率、負債比率、固定比率、固定長期適合率について見ていきました

さてここでROEと自己資本比率に矛盾が生じていることについて見て行きたいと思います
ROEを高めるためには総資本における他人資本の割合を高めることで可能となりますが、その場合は自己資本比率が低下することになります
逆に自己資本比率を高めるため、総資本における株主資本の割合を高めるとROEは低くなります
このようなROEと自己資本比率の関係があるためROEが高いからといって多くの負債を抱えている企業に関しては注意をしておく必要があると言えます
ただし他人資本による資金調達を行い財務レバレッジを高め株主の期待に応えようとしている場合もありますので実例を挙げておきたいと思います

ソフトバンク、個人向け社債3000億円 投融資などに充当
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ160ET_W4A510C1TJ1000/

ソフトバンクは米スプリントなどを筆頭に次々とM&Aを行っていますが、その原資を他人資本で調達しているというものです
こうすることで財務レバレッジが高まり、株主は高いROEを期待することが可能となっています

また金融事業を営む企業は自己資本比率が極端に低くなります、これは個人や法人の預貯金などは金融事業を営む企業にとっては他人資本となるためです
そのため金融事業へと多角化を行っているトヨタ自動車やソニーはグループ全体の財務レバレッジが高くなり、高いROEを狙う事が可能となります
そして製造事業は固定費が占める割合が大きいため高レバレッジになりますが、金融事業は変動費が中心のビジネスであるため低レバレッジになり、グループ全体としてバランスの取れた営業レバレッジとなります
さらに金融事業は製造事業と比べ利益率が高いためフローに厚みが増し、それはストックの安定度を高めることにも繋がります
このように製造事業を営む企業が金融事業へと多角化することで営業レバレッジ、財務レバレッジ、フロー、ストックの局面においてバランスの取れた強い経営体制を構築することが可能になります
ソニーが金融事業へと多角化したのは創業者である盛田昭夫氏の意思が大きく関わっているそうですが、下記のような言葉を残されています
「企業として伸びるためには金融機関が絶対必要だ。これは資金調達のためだけではない。企業の信用やバランスを保つ大切な存在となる」
これだけの大企業を築き上げた方はやはり偉大です、慧眼に敬服しました
まだまだ修行が足りませんが、私もいずれは曇りなき眼で物事の本質を見定めることが出来るようになりたいです

今週の報告は以上です