「財務諸表の作成と公開」(後半)(2014年5月1日)

4期生の石田裕明です
今週のゼミでは始めに先週に引き続き、神山祭と夏合宿についての計画を煮詰めていきました
その後は「財務諸表の作成と公開」の後半を行い、残りの時間は各々が最近、気になる経済ニュースを挙げ、それに関して議論していきました
プレゼンテーションの担当者はカクロさんでした

「財務諸表の作成と公開」は先ず会社法に基づいて作成する貸借対照表について見ていきました
貸借対照表は「資産=負債+資本」となりますが、これを基本等式と言い、負債と資本は資金の調達源泉を示し資産は資金の運用形態を表します
なお、2006年の会社法施後は資本に代えて純資産という語が用いられるようになりましたが、これは2000年以降、貸借対照表に株主が払い込んだ株主資本以外の項目が計上されるようになったためです
資産の項目の内訳ですが貸借対照表における資産は流動資産、固定資産、繰延資産の3つに大別されます
このうち...流動資産と固定資産ですが、これらを分類する基準には原則として正常営業循環基準と1年基準とがあります
1年基準とは決算日の翌日から起算して1年以内に入金の期限が到来する資産を流動資産とし、1年を超えて現金化される資産または現金化することを本来の目的としてないものを固定資産とする考え方です
正常営業循環基準とは企業の主目的たる営業取引過程にあるものは原則として流動資産とすべしという考え方であり、この過程にある項目は、たとえ現金化される期間が1年を超えることがあっても、その回収期間の長短に関わりなく流動資産とされます
これら2つの基準ですが、まず正常営業循環基準が適用され、ついで分類しえない資産項目に関して1年基準が適用されます
流動資産は当座資産、棚卸資産、その他の流動資産に分類され、固定資産は有形固定資産、無形固定資産、および投資その他の資産に分類されます

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簿記などを学習していて良く目にするのは1年基準であり、正常営業循環基準が適用される具体的な商品は何なのかという疑問をもたれるかと思われます
例としてはウイスキーやワインのような長期の熟成期間を要する酒類が挙げられます、これらは10年を超す熟成期間を要するもので
これらは現金化されるまでに10年間を要する棚卸資産であったとしても固定資産ではなく、流動資産として区分されます
しかしながら、流動資産として分類されたとしても現金化されるまでの期間は10年を超すというのは変わらず、早期のキャッシュ・インフローは期待できません
そのため現在のような四半期ごとの短期的な成果を追い求める金融市場とは相反しており、ウイスキーメーカーには上場による資金調達を行うメリットよりも経営に口を出される事によるデメリットの方が大きく見えている可能性があります
日本の代表的なウイスキーメーカーと言えばサントリーですが、サントリーHDは株式の約9割を創業家の資産管理会社である寿不動産が所有している非上場会社です
非上場の理由として「酒の醸造には時間がかかり、短期的な利益を要求される株式公開に馴染まない」、「株主に商品の味を左右されたくないから」と言われています
またサントリーは文化や芸術に理解のある企業として有名です、しかしながら文化や芸術に対するパトロンは直接的な利益に結びつかないため上場するとコストダウンを理由に株主から削減を要求される可能性があります
パトロンとして文化や芸術を保護するというノブレスオブリージュのような矜持を持ち、四半期ごとの短期的な利益を追い求める経営と自社の商品が適合しないため上場しないという崇高かつ合理的な非上場企業(プライベートカンパニー)の良さが出た経営をされていると思います
しかしながら2013年7月3日にサントリーHD傘下のサントリー食品インターナショナルが上場して以降はコーポレート・ガバナンスに若干ですが憂慮を感じています
具体的には寿不動産が支配しているサントリーHDがサントリー食品インターナショナルに対し支配力を保持したまま、サントリー食品インターナショナルが上場しており少数株主の利益に疑問符が付く点です
親会社と子会社が共に上場している親子上場もコーポレート・ガバナンス上、問題点があると指摘されていますが、サントリーのケースで問題があると感じるのは創業家のプライベートカンパ二ーが上場しているサントリー食品インターナショナルを実質的に支配している点です
つまり「創業家のプライベートカンパニーの利益>パブリックカンパニーであるサントリー食品インターナショナルの少数株主の利益」になってしまう可能性を孕んでいるということです
現在は米ビーム社の買収などのように海外事業展開の加速ををプライベートカンパニーの良さである機動性を発揮し、サントリーグループ全体の成長になっていますが今後、その機動性が仇となる可能性が無いとは言えません
色々と述べてきましたが個人的な憂慮を捨象するならば上場承認がなされており、市場的にはコーポレート・ガバナンスに関して問題はありません
個人的に文化や芸術に理解のあるサントリーは好きですし、日本のオーナー企業の代表格として頑張って欲しい気持ちがありますので応援しています

さて繰延資産ですが、これはその支出の効果が将来にわたって発現されると期待されるもので創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費の5つがあります
繰延資産は費用として一括計上するか資産計上するかは企業の選択に任されていますが、計上はあくまでも容認に留まっていることが重要です
繰延資産はキャッシュ・インフローを生成する資産ではない(擬制資産)ため費用として一括計上、資産計上したとしても早期の償却が望ましいとされています
貸借対照表における繰延資産の割合が大きい場合は財務的に悪い財政状態であると言えます
ここで質問があり、繰延資産以外にも形のない擬制資産として無形固定資産の「のれん」が挙げられました
これはM&Aの際に生じる買収額と買収された企業の純資産額の差額であり、超過収益力とされています
ここで問題になってくるのは日本会計基準、米国会計基準、国際会計基準における「のれん」の扱いの差です
日本会計基準では原則として20年を上限に償却されることが定められていますが米国会計基準や国際会計基準では非償却となります、これは米国会計基準や国際会計基準では「のれん」をバリュードライバーとして認識しているためです
のれんの償却が利益の押し下げ要因にならないため企業買収を積極的に行う企業においては名目的には利益は大きく計上することが可能となります
これらの問題に関してですが米国会計基準や国際会計基準を継続的に適用している企業に関しては問題ありません
しかしながら大型買収を繰り返した直後に国際会計基準を適用するといったケースに関しては注意をしておく必要があります

次に負債の項目ですが貸借対照表における負債は流動負債と固定負債の2つに大別されます
流動負債と固定負債の分類は資産項目で採用された基準を採用する必要があります、したがって正常営業循環基準を適用した後に1年基準を適用します
そのため正常営業循環過程にある買掛金や支払手形などの法的債務は全て流動負債とされます
営業外の借入金などの法的債務については1年基準が適用されます
そして純資産の項目ですが貸借対照表における純資産は株主資本(資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式)+評価換算差額等+新株予約権の3つに大別されます
株主資本は株主の持分であり、評価換算差額等には土地再評価差額金やその他有価証券評価差額金が含まれます

次に株主資本等変動計算書と附属明細表・個別注記表、四半期財務諸表について見ていきました
株主資本等変動計算書の目的は貸借対照表の純資産の部における1会計期間の変動額を主として株主に帰属する株主資本の変動事由を報告することにあります
区分には①株主資本、②評価換算差額等、③新株予約権に分割されます
附属明細表は損益計算書や貸借対照表などに記載された項目中の重要なものについて、その内容を詳細に示したものです
個別注記表ですが会社計算規則では①重要な会計方針、②継続企業の前提、③貸借対照表と損益計算書の記載項目の詳細、④重要な後発事象をまとめた個別注記表の作成を求めています
①については減価償却の方法や有価証券の評価方法に関する方針変更などが当たります
②については債務超過や継続的な損失計上で継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に重要な疑義ありと判断された場合に当たりま
③貸借対照表と損益計算書の記載項目の詳細ですが具体的には貸倒引当金の内容などの詳細があります、ソニーは家電事業に留まらず音楽事業や映画事業、金融事業に多角化している企業ですので連結財務諸表に「繰延映画製作費」や「銀行ビジネスにおける顧客預金」など普段目にしない勘定科目が計上されており個別注記表と共に見てみると面白いです
④については次期以降の経営成績と財政状況に大きな影響を及ぼすものが当たります
四半期財務諸表は四半期連結財務諸表と四半期個別財務諸表を言い、開示目的は企業の業績と財政状況の変化を適時に示し、証券投資者の意思決定に有用な情報を提供することにあります

最後に残りの時間で各々が最近、気になる経済ニュースを挙げ、それに関して議論していきました
そこではAppleの株式分割が挙がりました
そこで株式分割についての仕組み、株式分割によって得られるメリットと株式分割を成功させるための自社株買いに関しての説明を行いました

週末はGWも佳境です、皆様楽しい時間をお過ごしください

今週の報告は以上です