今回のテーマは、EXCELの見た目をさまざまに設定する「書式」と、複雑な計算を簡単に行える便利機能「関数」という、2つの項目について解説をします。
なおEXCELの基本操作については、前回の第9回 Excelの基礎を確認してください。EXCELでは基本操作を踏まえたうえで、さまざまな応用を行う流れになるので、基本をしっかり復習しておいてください。
教科書を持っている場合は、第4章5.3「表示形式の変更」P.114 および、6「関数を使った計算式」P.120 も合わせて参照してください。
演習するために、以下の練習問題をクリックし、ダウンロードして開いてください。
練習問題 syokyu10example.xlsx ← ここをクリックしてダウンロード
EXCELの演習では、毎回練習問題を配布しますので、ファイル内の設問に回答し、moodle に提出する流れとなります。
まずは「書式」について解説しましょう。
前回も少し触れましたが、今回はもう少し詳しく見ていきます。
EXCELでは、塗りつぶしの色や罫線など「見ために関する設定」をまとめて「書式」と言います。「書式」を設定することで、セルの見た目はさまざまに変化します。
書式は対象のセルを選択した後、ウインドウ上部のボタンを使ってさまざまな設定を適用します。おおむねWORDと似た機能が使えますが、一部異なる部分もあります。
各設定は「フォント」「配置」「数値」といったグループによって分けられています。各グループごとに、主な書式設定機能を紹介します。
下の説明を見ながら、練習問題の「書式」シートを開いて、自由に書式を設定してみましょう。
文字の字体(フォント)、サイズ、色などを変えられます。
ボタン一つで罫線が引けるのが便利です。それ以外はWORDとほとんど同じ設定画面なので簡単ですね。
上記の設定は範囲選択に対して設定が行われるので、選択範囲を工夫すれば広い範囲や複数の範囲にまとめて一気に設定できます。効率が大きくアップします。
主にセル内の文字の表示位置を変えます。
Alt
+ Enter
キーを押せば、セル内の好きな位置で改行できます。このように、「配置」グループを使って、セルの並び方や文字の記入方法を調整しましょう。
数値の見た目を変えます。数値が記入されているセルに対して効果を発揮します。
複数セルを範囲選択しておけば、まとめて設定を行えます。
たとえば小数点以下の表示桁数を増減するボタン
の場合、まとめて設定すれば小数点以下の桁数が全て揃います。下の例を参考にしてください。
上のように割り算を行った際などには小数点以下の桁数がバラバラになることがありますが、範囲選択した後、まとめて小数点以下の表示桁数を調整すれば、桁数を全て揃えられます。ボタンを何回か押すだけの簡単操作です。
範囲選択を工夫して、なるべく一括で設定するようにすると効率がアップします。ぜひ工夫しましょう。
全ての書式を解除するには「 クリア」→「書式のクリア」を選びます。
文字の大きさや形など、書式に関する設定が消去され、標準の状態に戻ります。結合したセルもバラバラに戻ります。
なお書式のクリアをしても、入力された値は消えません。クリアされるのはあくまで「書式」(=デザイン)だけです。
下の例では、色とりどりに乱れてしまった書式を「書式のクリア」を使って標準の状態に戻している様子が分かります。
このように、文字や色の設定を全て初期状態に戻せるので、「書式のクリア」は便利です。
各グループの下にある、小さなボタンをクリックすると、さらに詳しい設定ができます。
「書式」を使ってEXCELの見た目をさまざまにカスタマイズしてみましょう。
「」のような「日付」や、「」のような「時刻」が記入してあるセルは、「書式のクリア」をする際に注意が必要です。
これら日付や時刻が記入されたセルで「書式のクリア」を行うと、数値に変換されてしまいます。この値は「シリアル値」と呼ばれる特殊な数値で、EXCELが日付や時刻を計算処理するために格納している内部の値です。
もし書式のクリアをしてシリアル値が見えてしまった場合は、数値グループで日付や時刻の書式を設定しなおせば、正常な表示に戻ります。
日付や時刻の書式をクリアした場合は、上の動画のようなフォローが必要というわけです。
今回のもう一つのテーマは「関数」です。
「関数」とは、複雑な計算を自動で行ってくれる機能です。関数は「数式」の一種で、特別な書き方で計算式を書き込むと発動します。
そう、関数とはちょっと変わった書き方をする計算式で、いろいろな計算を自動的にやってくれる便利な奴なのです。関数はトモダチ! 怖くないですよ😁
関数は、おおむね以下のような書き方をします。さまざまな関数がありますが、どの関数も書き方はほぼ同じで、共通のルールになっています。
=関数名( 引数 , 引数 , 引数… )
=
を記入する必要があります。( )
を書きます。省略してはいけません。,
で区切ります。( )
は省略せずに書きましょう。引数は、さまざまな書き方をします。以下のような種類があります。
以上のルールを踏まえて、具体的な関数の使い方を見ていきましょう。
関数を使って、実際にEXCELにさまざまな計算を行わせてみましょう。
まず練習問題の「SUM」シートにアクセスして、下の解説を見ながら実際に計算を行ってみてください。
最初に、もっとも基本的な関数である「SUM」(サム)関数を紹介します。SUM関数は、多くの数値を合計したい場合に便利な関数です。範囲指定するだけで一括合計できます。
なお、SUMは「概要・要約」といった意味の英単語 summary(サマリー)が語源になっています(SAMではありません)。
summary [sˈʌm(ə)ri] サマリー / 概要、要約
もしSUM関数を使用しない場合は、=A1+A2+A3+A4+A5+A6…
のように合計する全ての数値を加算する必要があります。たくさん足す場合も、サボらずに全部のセルを加算しないといけません。よって足したい数が多いと数式も長くなって大変手間がかかります。うっかり足し忘れたり、2回足してしまったりすると計算結果は狂ってしまいます……。そんなときには SUM関数 を使えば楽勝です。
関数にはいくつかの入力方法があるので、順に紹介します。好きな方法を選んで入力してみてください。
関数は手書きで入力できます。慣れると速く入力できるようになります6)。
=SUM( 合計したい範囲 )
=SUM(
と入力します。=SUM(B6:D6
と自動的に入力されます。)
を入力し =SUM(B6:D6)
のようになったらEnter
キーを押すと、合計結果が表示されます。実際の操作の様子は、以下の動画を参考にしてください。
関数の書き方を詳しく知っておくと、間違いを修正するときも作業しやすいです。手書き入力は基本テクニックなのです。
ボタンをクリックすることで、文字入力を省略して楽に式を完成できます。初心者向きの方法です。
Shift
+F3
)ボタンをクリックします。SUM
関数を見つけ出します。
関数の綴りがうろ覚えでも入力できますし、マウス操作だけで関数を作れるので、初心者でも安心です。
SUM関数はよく使うので、特別に 「Σ オートSUM」という専用ボタンが用意されています。SUM(といくつかの代表的な関数)に対してのみ有効な、特別な操作方法です。
Enter
を押すと、合計結果が表示されます。
このように、関数にはさまざまな入力方法があります。好みの方法で入力してください。
EXCELに慣れていない場合や、よく知らない関数を入力する場合は「 関数の挿入」ボタンを使う方法がおすすめです。
慣れてくると、あちこちボタンを押すよりも直接入力したほうが速くなるかもしれません。
さあ、残りの数値も同様に合計を計算しましょう。
何回も関数を入力するのはめんどくさい? 大丈夫。オートフィルすればすぐにできます!
このように最初の式を作ったら、あとはオートフィルで同じ計算を繰り返し行えます。大量の計算も一瞬で行なえます。素晴らしい!
もちろん最初の計算式が間違っていると、オートフィルした結果も全部間違いになるので注意してください……😂
最初の計算式に間違いが無いかよく確認しましょう。
誰にでも間違いはあるものです。入力した数式は、もしかしたら間違っているかもしれません。🤔
合っているかチェックしましょう。
数式の内容を調べたくなった場合は、セルを「ダブルクリック」または F2
キーを押すと、その内容を確認できます。
計算に使っているセル範囲が色分けして表示されるので、見やすいです。
色のついているセルの位置が正しいか確かめましょう。
もし間違っている場合は、数式の内容を書き換えて Enter
キーを押せば修正できます。
もし間違いは無く、そのままで良い場合はESC
キーを押せば操作をキャンセルできます。
数式の編集中にうっかり別のセルをクリックしてしまうと、そのセルの位置(A1など)が数式に書き込まれてしまい、計算が狂ってしまうので、問題なかった場合は ESC
キーを押してキャンセルするのがおすすめです。
関数は、SUMの他にもさまざまな種類があります。ですが使い方はどれもだいたい同じです。
代表的なものを紹介します。
TODAY
(トゥデイ)関数は今日の日付を自動的に表示します。
=TODAY( )
TODAY関数は丸括弧( )の中に引数を何も書かない関数です(だからといって丸括弧を省略してはいけません)。
=TODAY()
と記入します。Enter
キーを押します。
TODAY
関数EXCELが今日の日付を計算して表示してくれます。書類に記入日を書かなくてはいけない場合などに、いちいち今日の日付を調べなくて良くなるので便利です。「今日は何日だっけ?」とカレンダーを見なくて済むわけです。
なお日付は計算によって求められるので、必ず今日の日付になります。明日この書類を開くと明日の日付になっています。よって残念ながら日付を記録しておく用途には使えません。
応用技として、日付に足し算や引き算をして、日をずらすこともできます。 たとえば =TODAY( )+7
と入力すると、7日後(一週間後)の日付が表示されます。未来の日付を計算する際などに使えます。引き算をすれば、過去の日付も計算できます。ちゃんと月末の日付を超えたら次の月の日付になるので安心です。かしこい!
なおTODAY関数は()の中に何らかの引数を書くと、エラーとなってしまいます。足し算や引き算をする時は、()の外に書きましょう。
=TODAY(+14) ← × 誤った例。エラーとなります。 =TODAY()+14 ← ○ 正しい例。14日後の日付が表示されます。
COUNTA
(カウント・エー)関数は、指定範囲のセルを調べ、何らかのデータが入力されているセルの個数を表示します。
文字でも数字でも数式でも、とにかく何らかのデータが入力されていれば1個と数えます。空白のセルは個数に入れません。
つまり指定の範囲に何件データが入力されているかを調べられます。
綴りにご注意ください。COUNTA
関数です。COUNT
関数を書き間違えたのではありません!
=COUNTA( 対象範囲 )
COUNTA
関数の基本形ここでは、表に掲載されている商品の数を、COUNTA関数にカウントさせます。
=COUNTA(
と入力します。)
を入力して丸括弧を閉じ、Enter
キーを押します。計算はリアルタイムに行われるので、商品の数が増えたり減ったりしても、常に正しい値が表示されます。下の例では、いくつか商品名を削除していますが、商品の増減に反応して画面右上にある商品数の値が変化している点に注目してください。
COUNTA
関数でデータの個数を数える動画
COUNTA
関数をつかえば、たとえばデータの入力件数を数えたり、名簿に何人登録されているのか、出席者数は何人か、といった事を瞬時に調べられます。人間が一つ一つ数えるのは大変ですので、ぜひ COUNTA
関数を活用しましょう。
COUNTA
とよく似た関数に COUNT
関数がありますが、こちらは数値が入力されているセルしかカウントされません。たとえば上のように商品名を範囲選択しても、商品名は数値ではないので、結果は「0」になってしまいます。
もしも「製造No」や「学生番号」のように数値のみが書かれているセルを選択したなら、正しく数をカウントしてくれます。ですがセルに数字以外の文字が含まれていると、数をカウントしてくれません。使用時は注意してください7)。
とりあえずEXCELでは COUNTA
関数を使っておけば無難です。
これらの関数を踏まえて、練習問題の「お昼ごはん2」シートにアクセスし、設問に回答しましょう。
AVERAGE
(アベレージ)関数は、選択セル内の数値の平均を求められます。
=AVERAGE( 平均したい範囲 )
AVERAGE
関数の基本形=AVERAGE(D5:I5)
のような数式を作成し、Enter
キーを押すと平均値が表示されます。
AVERAGE
関数で平均値を求める動画例えば =(A1+B1+C1+D1)/4
のように数式を組み立てても平均値は求められますが、AVERAGE()
関数を使うとさらに簡単に求められます。
注意点として、=(A1+B1+C1+D1)/4
のように平均を求めた場合は、空欄を 0 として扱うので、空欄があると平均値が下がります。
一方、AVERAGE()
関数の場合は、空欄の存在を無視するので、空欄があっても平均値は影響を受けません。
例えば下の例では、4つのセルに書かれた数値の平均を計算していますが、1つのセルが空欄です。
AVERAGE
関数の違い
上の図の左側では (1+2+0+3)/4=1.5
、右側では空欄が無視され(1+2+3)/3=2
のように計算されるので、計算結果が異なっている様子が分かります。
平均値の計算を行う際には、このように空欄の取り扱い方が原因で計算結果のずれを生む場合があるので注意しましょう8)。
MAX
(マックス)関数とMIN
(ミン)関数は、それぞれ選択したセルに入力されている値の中で、最も大きな値、最も小さな値を自動的に選んで表示します。
=MAX( 対象範囲 ) =MIN( 対象範囲 )
MAX
と MIN
関数の基本形語源は「最大」と「最小」を意味する maximum(マキシマム) と minimum(ミニマム)ですね。
練習問題の「MAX MIN」シートにアクセスし、同様の方法で「最大」と「最小」欄に計算をしてみましょう。
すでにお気づきかもしれませんが、関数名は違っても、使い方はほとんど同じです。関数名がちょっと変わるぐらいなのです。
PHONETIC
(フォネティック)関数は、選択したセルのフリガナを自動で出力します。
phonetic [fənéṭɪk] フォネティック / 音声(上)の、発音どおりの綴りにした、表音の
=PHONETIC( 対象範囲 )
PHONETIC
関数の基本形たとえば名簿を入力する際などに、フリガナを自動的に出力してくれる便利関数です9)。フリガナを書いておけば名前を検索したり、50音順に並び替えたりする際に役に立ちます。
=PHONETIC(A11)
のような数式を作成し、Enter
キーを押すと、指定したセルを参照して自動的にフリガナが出力されます。
PHONETIC
関数でフリガナを出力する動画このように関数を使うと、複雑な計算も簡単に行えます。ぜひ活用してください。
関数は数式の一種で、複雑な計算を自動で行ってくれる機能です。
入力は以下のような手順で行います。
=
に続けて、関数名を入力します。(
を記入し、参照するセル範囲を選択します。)
で式を閉じ、Enter
キーを押すと計算結果が表示されます。Enter
キーを押すと修正内容を確定でき、ESC
キーを押すと操作をキャンセルできます。関数には様々な種類があります。今回は代表的なものを紹介しました。
関数名 | 効果 |
---|---|
SUM | 合計を計算します。 |
TODAY | 今日の日付を出力します。 |
COUNTA | データが入力されているセルの個数を数えます。 |
AVERAGE | 平均を計算します。 |
MAX | 最大値を出力します。 |
MIN | 最小値を出力します。 |
PHONETIC | フリガナを出力します。 |
関数を使って複雑な計算も簡単にこなしましょう!
以上のヒントを踏まえて、EXCEL練習問題ファイルの全てのシートの設問に回答してください。
各設問に書かれているヒントをよく読んで、回答の参考にしてください。
解答が終わったら、学生番号 氏名 関数.xlsx
というファイル名で保存し、moodleに提出してください。
(例)1223451 山田太郎 関数.xlsx
提出期限は、次回の授業日いっぱいとします。
学習支援システム moodle
https://cclms.kyoto-su.ac.jp/
以上で今回の作業は終了です。おつかれさまでした。
A1:B1
」のような文字を手書きすることはあまりないかもしれません。COUNT
だと思いますが、このような謎仕様になっているので、初見では大混乱してしまいます。はっきり言って罠です。=(C2+C3+C4+C5)/COUNT(C2:C5)
COUNT()
関数を使うことで、入力されている数値の個数に応じて割り算されるので、AVERAGE()
と同じ結果になります……が、関数を使うのであれば素直にAVERAGE()
を使ったほうが速いですよね😂