例えばページを三段組のレイアウトにする際、従来は<table>を使用してレイアウトしていました。しかし
<table>
<tr>
<td>
などのタグを組み合わせる必要があり、HTMLが複雑になる問題があります。そこでレイアウトをCSSで行うことにします。下の「作成例」のようなレイアウトで表示されるページ
rensyu8.html
を作成してください。
これから作るページ (クリックすると別窓で開きます)
これから作るページのしくみがよく分かる図 (クリックすると別窓で開きます)前提知識
ここではレイアウトをするための基本テクニックを紹介します。
レイアウトの基本は「ボックス」
上の図のような段組みやレイアウトをする場合、CSSでは四角い箱を作って、その中に文字や画像などをつめこむことで作成します。この四角い箱のことを「ボックス」と呼びます。
ボックスの正体は
<div>
~</div>
にCSSを使って、幅や高さや位置を設定したものです。例えば下のHTMLとCSSを組み合わせると、ボックスができあがります。<div class="box1">BOX1</div>HTMLでは、上のようにボックスに収めたい要素を
<div>~</div>
で囲うだけです。
特別な設定を適用したいので、クラスclass
も付けておきましょう。ここでは仮にbox1
という名前にしています。.box1 { width:300px; /* ボックスの幅を指定します */ height:100px; /* ボックスの高さを指定します */ line-height:100px; /* 行間を調整します(文字を上下中央揃えにするおまじない) */ font-size:30px; /* ボックス内の文字の大きさを指定します */ color:#88aa22; /* 文字の色を指定します */ text-align:center; /* 左右中央揃えにします */ vertical-align:center; /* 上下中央揃えにします */ border:solid 2px #88aa22; /* 周囲を囲う罫線を指定します */ background-color:#eeff66; } /* ボックスの背景色を指定します */CSSを使って、上のようにいろいろとデザインしています。
BOX1CSSで指定したサイズで、「ボックス」ができあがりました。
この「ボックス」をいくつも並べることで、二段組みや各種メニューなど、さまざまなものを作ります。
上の「これから作るページのしくみがよく分かる図」の例でも四角いボックスが並んでいる様子が分かると思います。
レイアウトの基本テクニックである「ボックス」をふまえた上で、以降の作業に取り掛かりましょう。
ここからが本番です。
まずHTML部分を制作します。ボックスを意識して、
<div>
を使ってページをいくつかの部分に分けます。以下に示すHTMLをサクラエディタなどに貼り付けて
rensyu8.html
ページを作成してください。( body タグの外側は、表示を省略しています)・・省略・・ <body> <!-- ここからページボディ --> <div class="" > <!-- ここからヘッダ --> <div class=""> CSS Example </div> <!-- ここまでヘッダ --> <!-- ここから左メニュー --> <div class=""> 目的で探す<br> CSSとは<br> なぜCSSが必要か<br> CSSのメリット<br> CSSの書き方<br> </div> <!-- ここまで左メニュー --> <!-- ここからコンテンツ(本文) --> <div class=""> CSSは、Cascading Style Sheetsの略で、ウェブページの見栄えを設定するための言語です。 </div> <!-- ここまでコンテンツ(本文) --> <!-- ここからフッタ --> <div class=""> Copyright (c) ○○○○ All rights reserved. </div> <!-- ここまでフッタ --> </div> <!-- ここまでページボディ --> </body> ・・省略・・上記のHTMLは、ボックスが作りやすいように各部分を
<div>
~</div>
で囲んであります。最終的に各ボックスは、ヘッダ・メニュー・コンテンツ・フッタ といった役割を担います。HTML中に書かれているコメント(<!-- ~ -->
)が参考になるでしょう。
<div>
はたくさんあるので、クラスを設定して区別がつくようにします。それぞれの<div>
に、以下のようなクラス名をつけるものとします。
対象 クラス名 用途 ページボディ pagebody
ページ全体を囲い、レイアウトを整えます。 ヘッダ header
サイトのタイトルロゴなどを入れます。 左メニュー submenu
メニューなどを入れます。ページの左端に配置します。 コンテンツ(本文) content
記事など、メインとなる文章や写真を入れます。 フッタ footer
コピーライト表記などを入れます。ページの下端に配置します。 例えばヘッダ ( header ) クラスの場合、以下のように記述します。
<!-- ここからヘッダ --> <div class="header">
上の
header
の部分を書き足す感じです。他にも、ページボディ ( pagebody )、ヘッダ ( header)、 左メニュー ( submenu )、コンテンツ ( content )、フッタ ( footer ) といった部分があるので、それぞれ同様にクラス名を追加してください。
上の例の <div> タグを見て、
class=""
のようにクラス名が抜けているところを探し、そこにpagebody
やheader
…… といったクラス名書き込むと良いでしょう。計5箇所あります。<!-- ここからページボディ --> <div class="pagebody"> : <!-- ここからヘッダ --> <div class="header"> : <!-- ここから左メニュー --> <div class="submenu"> : <!-- ここからここからコンテンツ(本文) --> <div class="content"> : <!-- ここからフッタ --> <div class="footer">これで HTML ファイルの編集作業は完了です。
現時点では、単に文字が縦に並んでいるだけです。
CSSの編集にとりかかります。rensyu8.css ファイルを作成し、サクラエディタで編集します。以降は、CSS内の編集作業になります。
CSSで背景色などページ全体の初期設定を行います。
まず、<div>のサイズが狂わないためのおまじないを書きます。
box-sizing:border-box;
という設定を、すべての要素に設定するため、以下のように書きます。* { box-sizing:border-box; }画面にはまだ大きな変化は無いはずです。
セレクタは通常、
h1
のようにタグ名を指定するものですが、この例では「*
」と書かれています。これは「HTMLのすべての要素に対して設定を行う」という意味になります。とにかく全要素が影響を受けるので影響範囲が大きく、扱いに注意が必要ですが、HTML全体で設定をリセットするような目的で使われることがあります。box-sizing プロパティは、width や height で幅や高さを指定する際に、罫線(border)や余白(padding)を含めてサイズ計算をするためのものですが、少々難解です。ここではレイアウトを正確に行うためのおまじないだと思って書いておいてください。
以下の文章は聞き流してもらってもOKですが、気になる人のために簡単に解説しておくと、以下のような理由でbox-sizing:border-box;
設定を行っています。CSSでwidth や height を使って幅や高さを指定する際、その値はボックス内部の内容部分に対して適用され、パディング余白(
気になる場合は、padding
)や罫線(border
)は指定の幅や高さの外側に描かれるという仕様があります。 よってパディングを設定したり罫線を描いたりすると指定サイズからはみ出してしまい、レイアウト全体に狂いが生じます。 そこでbox-sizing:border-box;
という設定を追加しておくと、widthやheightの指定値にパディングや罫線の太さも含まれるようになるため、レイアウト上の誤差がなくなるので設定しています。box-sizing border-box
のようなキーワードでネット検索して調べてみましょう。ページ全体の背景色を設定します。body に background-color を使って背景色を塗れますので、好きな色を塗ってください。ここでは薄いグレー(#eeeeee)とします
body { background-color:#eeeeee; }ページ全体に色が塗れたら成功です。
ページボディを設定します。
ページボディはレイアウトの一番外側を囲うボックスです。以下のような設定を追加します。
- 幅は画面の80%にします。
width: 80%;
と設定します。- 全体を中央寄せにします。
margin: 0 auto;
と設定します。- 周囲に罫線を引きます。
border: solid 1px black;
と設定します。- 背景色を白色にします。
background-color: white;
と設定します。- 内部余白(padding)は無しにします。
padding: 0;
と設定します。.pagebody { width:80%; margin:0 auto; border:solid 1px black; background-color:white; padding:0; }全体を囲う枠が出来上がるはずです。
ヘッダを作成します。
ヘッダも同様に header クラスに対して以下のような設定を追加します。
- 幅は100%にします。
width:100%;
と設定します。pagebody の幅いっぱいまで使います。- 高さは80pxにします。
height:80px;
と設定します。- 罫線は下部分のみ引きます。
border-bottom:solid 1px black;
と設定します。
上や左右には罫線を引きません。pagebody によってすでに罫線が引かれているからです。- 内部余白(padding)を0.5文字分作ります。
padding:0.5em;
と設定します。
内部に余白がないと、文字が罫線に密着して読みにくいからです。.header { width:100%; height:80px; border-bottom:solid 1px black; padding:0.5em; }ヘッダ領域が仕切られました。
左メニューを作成します。
左メニューにあたる submenu クラスに対して以下のような設定を追加します。
- 左詰めで表示します。
float:left;
と設定します。- 幅は40%にします。
width:40%;
と設定します。- 高さは400pxにします。
height:400px;
と設定します。これはボックスの中身を書かない場合でも一定の面積を確保するためです。- 罫線は右側のみ引きます。
border-right:solid 1px black;
と設定します。- 内部余白(padding)を0.5文字分作ります。
padding:0.5em;
と設定します。.submenu { float:left; width:40%; height:400px; border-right:solid 1px black; padding:0.5em; }縦の仕切りができました。一旦はみ出ますが、気にしない。
コンテンツ(本文)を作成します。
同様に content クラスに対して以下のような設定を追加します。
- 右詰めで表示します。
float:right;
と設定します。左メニューの時に設定したfloat:left;
と合わせることで左右に配置されます。- 幅は60%にします。
width:60%;
と設定します。左メニューの幅40%
と合計すると、ちょうど100%になるようにします。- 高さは400pxにします。
height:400px;
と設定します。左メニューの高さと揃えます。- 罫線は引きません。すでに周囲を線で囲まれているからです。
- 内部余白(padding)を0.5文字分作ります。
padding:0.5em;
と設定します。.content { float:right; width:60%; height:400px; padding:0.5em; }それっぽいカタチになってきました。まだ下のほうに線が足りていない部分があります。
フッタを作成します。
同様に footer クラスに対して以下のような設定を追加します。
clear: both;
と設定します。これは本来左メニュー ( submenu ) や コンテンツ ( content ) の下に表示するべきフッタが「float」プロパティの影響で右側に回り込んでしまう場合があるからです。その対策としてclear: both;
を設定すれば、回り込みが起こらなくなり、フッタは想定どおり左メニューやコンテンツの下に並ぶようになります。- 幅は100%にします。
width:100%;
と設定します。pagebody の幅いっぱいまで使います。- 高さは40pxにします。
height:40px;
と設定します。- 罫線は上部分のみに引きます。
border-top:solid 1px black;
と設定します。- 内部余白(padding)を0.5文字分作ります。
padding:0.5em;
と設定します。.footer { clear:both; width:100%; height:40px; border-top:solid 1px black; padding:0.5em; }一番下の「Copyright」とか書いてあるところに仕切りができて、いいカンジです!
ここまでのCSSをまとめると、以下のような内容になるはずです。 (見やすいように、改行やスペースで形を整えています)
* { box-sizing:border-box; } .pagebody { width: 80%; border: solid 1px black; padding:0; background-color:white; margin:0 auto; } .header { width:100%; height: 80px; border-bottom:solid 1px black; padding:0.5em; } .submenu { float:left; width: 40%; height:400px; border-right: solid 1px black; padding:0.5em; } .content { float:right; width: 60%; height:400px; padding:0.5em; } .footer { clear:both; width:100%; height: 40px; border-top: solid 1px black; padding:0.5em; }動作確認をします。ブラウザなどから作成したページにアクセスし、以下のようになれば完成です。
完成例 (クリックすると別窓で大きく見られます)
CSSを使えば、
<table>
タグを使ったレイアウトのように、HTML が複雑になってしまう問題を解消できます。
以前の課題を思い出してください。<table>
を使ったデザインはとても複雑な HTML になっていたはずです……。今回の課題のように、HTML上で
<div>
などを使って「ボックス」を作り、残りのデザインをCSSで行うようにすれば、HTML はスッキリする様子がわかります。この方法には以下のようなメリットがあるので、最近多くのサイトで使われています。
CSSを使ったレイアウトのメリット
- レイアウト構造をあまり意識せずに、HTMLの編集に専念できる
- CSSを修正すれば、後からレイアウトを自由に変更できる
CSSでは苦労するかもしれませんが、デザイン周りはCSSに任せて、HTMLはなるべくシンプルな状態にしておいたほうが、あとあと楽であるということです。
今回作成したレイアウトをベースにして、さまざまなカスタマイズを施してもよいでしょう。