分泌タンパク質や膜タンパク質は小胞体内腔あるいは小胞体膜へ挿入された後、transitional elements (TE)あるいはER exit sites (ERES)と呼ばれる小胞体の限定された領域からCOPII輸送小胞によって輸出されると考えられている 1)。生成したCOPII輸送小胞はuncoatingした後にゴルジ体へと輸送される訳であるが、まずはvesicular tubular clusters (VTC)あるいはER-Golgi intermediate compartment (ERGIC)と呼ばれる膜構造物に融合すると考えられている 2)。VTC/ERGICは小胞体からゴルジ体への輸送中間体であり、電子顕微鏡ではその名の通り管状あるいは網目状の不定形な膜構造体として観察される。VTC/ERGICがどのようにして形成されるのか、分泌タンパク質や膜タンパク質がどのようにして通り抜けていくのかについては活発な議論が繰り広げられてきた 3)。特に、VTC/ERGICが安定に局在するタンパク質を保持していて、独立したオルガネラとして機能しているのか、小胞体からくびり取られた輸送小胞が融合しあってde novoで形成されるものなのかどうかが、一つの焦点であった。また、VTC/ERGICの膜は小胞体と地続きであり小胞体のサブコンパートメントであるという説や、反対にゴルジ体のシス側、シスゴルジ網と繋がっているという説も提唱されていた 4)。
このVTC/ERGICの正体解明に、2つのタンパク質が大きな手がかりを提供した。1つは、VTC/ERGICに濃縮して局在するマーカータンパク質として同定されたERGIC53/p58である 5)。このタンパク質を目印に、VTC/ERGICを電子顕微鏡レベルで明瞭に同定することが可能となりVTC/ERGICが小胞体やゴルジ体からは独立した膜構造体であることが確認され、現在ではそれがコンセンサスを得るに至っている 2)。その後の研究から、ERGIC53/p58は小胞体とゴルジ体の間を循環移動しているレクチン様タンパク質で、血液凝固因子VとVIIIの輸送に関与していることが明らかとなっている 5)。さて、もう1つは、温度感受性変異株(ts-O45)の水疱性口内炎ウイルスの膜タンパク質(VSV-G)である。VSV-G(ts-O45)はフォールディングに異常があって、39艪ナ細胞に発現させると小胞体に蓄積する。この細胞を32艪ノ冷やすと、VSV-G(ts-O45)が一斉に小胞体から輸出され、ゴルジ体へ向かって輸送される。これを経時的・形態学的に解析したところ、VTC/ERGICを経由してゴルジ体へと輸送されることが明確に示されたのである 3)。さらに、GFPと融合させたVSV-G(ts-O45)を用いて生細胞内でのタンパク質輸送の動態解析が行われ、VTC/ERGICの動態が明らかにされた 6)。VSV-G-GFPが、小胞体を出てVTC/ERGICに濃縮され、それが小胞体を離れてゴルジ体へ向かって輸送されていく姿がエレガントに示されている。VTC/ERGICはダイニン・ダイナクチンによって微小管の上をゴルジ体に向かって走っていくらしい 6, 7)。以上の結果は、TE/ERESから生成したCOPII輸送小胞が融合し合ってVTC/ERGICが形成され、それがモータータンパク質の働きで微小管にそってゴルジ体へ輸送され、ゴルジ体へ融合するという考え方を強く支持している。
COPIはゴルジ体のcis側とVTC/ERGICに濃縮して存在しており、主としてこの場所でCOPI輸送小胞を形成しているようである。COPIは、ゴルジ体層板間の正方向の輸送に働く小胞をつくるものとして同定されたが、その後の研究から、COPIが実はゴルジ体から小胞体への逆行輸送に働くという考え方が主流を占めるに至っている 8)。実際、COPIはゴルジ体の下流に行くほど少なくなっているが、これは逆行輸送されるべき“積荷”が減っていくからだと考えるとつじつまが合う。VTC/ERGICは、小胞体からある一定の割合で漏れ出てくる小胞体に返すべきタンパク質を選別し、分泌タンパク質や膜タンパク質を濃縮する場所として機能していると考えられる。すなわち、VTC/ERGICは、ゴルジ体へ向かって移動しながら、COPIによって不要なタンパク質が除去され“成熟”していくのであろう 2)。しかしながら、輸送小胞がVTC/ERGICでCOPIIからCOPIにコートを置き換えて、正方向への輸送が導かれるという報告もあり、COPIが正方向への輸送にも働いている可能性は完全に否定されている訳ではない 8)。これらの問題をいかに解決するかが今後の課題である。
さて、p115はゴルジ体層板間の輸送に必須の因子として同定された。その後筆者らの研究から、ゴルジ体からCOPIで生成された輸送小胞をp115がゴルジ体層板に繋留し、再融合を促進しているらしい事が示された 9)。p115は、ゴルジ体層板のシス側に局在するGM130と結合することによって小胞の繋留を行うようである 10)。一方、p115はGM130と違ってVTC/ERGICにも多く存在するので、VTC/ERGICの輸送中間体がGM130の局在するゴルジ体層板のシス側に繋留・融合させるのにも働いている可能性が考えられた。実際、p115がrab1 GTPaseによってCOPII小胞にリクルートされるという報告はこの可能性を濃厚に支持している 11)。残念ながら紙面の都合で詳しく述べられないが、最近p115がARFのGEFであるGBF1と結合することや、GBF1-ARFによるCOPIのリクルートがVTC/ERGICのゴルジ体への移動を制御している可能性を示唆する結果が報告された 12, 13, 14)。VTC/ERGICのCOPIによる成熟過程が、モータータンパク質との結合やp115を介したゴルジ体への繋留機構と密接に関連している可能性を示しており、今後の研究の展開から目が離せない。
1. Antonny, B., Schekman, R., Curr. Opin. Cell Biol. 13, 438-443 (2001).
2. Bannykh, S. I., Balch, W. E., J. Cell Biol. 138, 1-4 (1997).
3. Schweizer, A. et al., Eur J Cell Biol 53, 185-196 (1990).
4. Klumperman, J. et al., J Cell Sci. 111, 3411-3425 (1998).
5. Hauri, H.-P., Kappeler, F., Andersson, H., Appenzeller, C., Journal of Cell Science 113, 587-596 (2000).
6. Presley, J. F. et al., Nature 389, 81-85 (1997).
7. Stephens, D. J., Lin-Marq, N., Pagano, A., Pepperkok, R., Paccaud, J. P., J Cell Sci 113, 2177-2185 (2000).
8. Pelham, H. R. B., Rothman, J. E., Cell 102, 713-719 (2000).
9. Nakamura, N., Lowe, M., Levine, T. P., Rabouille, C., Warren, G., Cell 89, 445-455 (1997).
10. Shorter, J., Warren, G., Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 18, 379-420 (2002).
11. Allan, B. B., Moyer, B. D., Balch, W. E., Science 289, 444-448 (2000).
12. Alvarez, C., Garcia-Mata, R., Brandon, E., Sztul, E., Mol Biol Cell 14, 2116-2127 (2003).
13. Garcia-Mata, R., Sztul, E., EMBO Rep 4, 320-325 (2003).
14. Garcia-Mata, R., Szul, T., Alvarez, C., Sztul, E., Mol Biol Cell 14, 2250-2261 (2003).