2004/09/09
■■■■ 京都部落問題研究資料センター メールマガジン vol.070 ■■■■

□コラム□ ハンナン牛肉偽装事件にはうんざりさせられる

 本メールマガジン26号(2003/4/24)で、部落解放運動のジキル博士とハイド 氏の問題を論じた。「善良なジキル博士が薬を飲んでハイド氏になり欲望のま まに行動するうちに、薬が効かなくなってジキル博士に戻れなくなったり、つ いには薬を飲まないのにハイド氏になってしまったように、部落解放同盟もハ イド氏が主でジキル博士が従になるのではないか」という心配である。そして、 最近世情をにぎわせている「ハンナングループ」によるBSE(牛海綿状脳症) 対策を悪用した牛肉偽装事件を見ていると、まさにその心配が杞憂でないこと を証明している。
 部落出身者が犯罪を犯したからといって、部落民全体を犯罪者のように言う のはいいことではない。まして、今まで差別迫害のもとで苦しい生活を余儀な くさせられてきた部落民に聖人君子たれというのは、あまりに酷な要求であろ う。部落民にも善人と悪人が平等に存在するというしかない。しかし、「部落」 や「同和」を騙って悪事を働く輩が出てきたら、話は別である。まさにそれは 「エセ同和行為」というしかない。主犯格の浅田満氏は、かつて部落解放同盟 大阪府連向野支部副支部長もしていたことがあるそうで、また、偽造事件を起 こした団体には「全国同和食肉事業協同組合連合会(全同連)」や「大阪府同 和食肉事業協同組合連合会(府同食)」などと、部落印のオンパレードである。 部落の看板なしにあそこまであからさまな傍若無人の犯罪がまかりとおったと は私には到底考えられない。
 差別をなくすためには、それを主張する運動や団体の社会的信用が絶対に必 要である。また、その信用を失墜させるような行為をした人間の責任は厳しく 問わなくてはならない。差別をなくすために地道な努力をしている人々が、濁 った川を少しでも澄んだ水にしようと努力している時に、上流で泥水をぶちま けるような行為は絶対に許されるものではない。従来、部落問題業界ではそう した非行を行なった人への対応があまりに甘すぎる。今回の事件は、犯罪をお かした人が偶然部落民だったわけではなく、部落差別を悪用した犯罪である。 考えようによっては、一介の市民が差別発言したよりも犯罪的でさえある。部 落解放運動の内部から、今回の問題にたいして失望や怒りの声があまり聞こえ てこないのだが、この問題を部落解放同盟が放置するようであれば、同じ穴の ムジナと思われてもしかたがない。そうなれば、ついには「人権マフィア」と いう有難くないレッテルも甘んじて受けなくてはならなくなる。 (灘本昌久)

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