2004/07/30
■■■■ 京都部落問題研究資料センター メールマガジン
vol.065 ■■■■
□テレビ番組紹介□ 障害者ドラマ「オレンジデイズ」への異論
本メールマガジン52号のコラムで、障害者がテレビに多く登場することを
評価し、その中に、柴咲コウ主演の「オレンジデイズ」を紹介した。しかし、
このドラマを見ているうちに、少し聴覚障害者の現実からはずれているところ
が散見されたので、気になっていたところ、新聞紙上で明解な異論が出された
ので、紹介しておく。
自身が中途失聴者である、第一福祉大学助教授山口利勝氏は、『朝日新聞』
(2004年7月24日)に「中途失聴 ドラマと違う現実知って」と題して、次の
ように指摘している。 「まず、この主人公ような年齢で失聴した場合、声を
出して話す人が大半である。聴力が悪くなっても話す方は問題ないからだ。」
ドラマでは、柴咲コウ演じる主人公=沙絵が、自分の発音が変なのを恥ずかし
がって会話しない設定になっているが、そんなことはありえず、中途失聴した
沙絵は、まったく普通に話ができるはずである、ということだ。
「もう一つは手話である。確かに手話を使う中途失聴者はいるし、私も少し
は勉強した。だが、手話を知らない健聴者とのコミュニケーションには立たな
い。/手話をしない中途失聴者が耳に代わるコミョケーション手段にしている
のは、筆談や要約筆記である。つまり、自分が情報を伝えるときは声で、受け
取るときは見てわかる筆談で、というのが一般的な中途失聴者像といえるだろ
う。」だから、ドラマでは、沙絵が友だちに普通の声でなに不自由なく話かけ、
友だちが筆談で応じてくれるのが一番自然というわけだ。私もそう感じた。だ
から、中途失聴者が「オレンジデイズ」を見たら、おそらく相当気持ちが悪か
ったはずだ。朝の連続ドラマで、関西出身でない俳優が関西弁もどきをしゃべ
るのが、関西人には耳障りなように。
障害者が純真無垢でしかありえないという壁を打ち破ったのはこのドラマの
功績かもしれないが、障害者当人が見て自分の経験と照らし合わせても、なお
リアリティーのあるドラマができてほしいものである。でないと、単にドラマ
の起伏を作るために障害を借りているに過ぎないことになる。そういう使い方
なら、「白血病」で幸せな登場人物をお手軽に不幸に陥れるありきたりの手法
と変わらないことになる。(灘本昌久)
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