2003/4/24 ■■■■ 京都部落問題研究資料センター
メールマガジン vol.026 ■■■■
□コラム□ ジキル博士かハイド氏か
部落解放同盟中央本部「『別冊宝島Real 同和利権の真相』への見解」
(4月12日付→『解放新聞』2003年4月14日号4面掲載)
ある人が質問する。「部落解放同盟はジキル博士なのですか? ハイド氏な
のですか?」。部落解放同盟は答える=「ジキル博士だよ、安心しなさい。」
別冊宝島は答える=「ハイド氏だよ、用心しなさい。」そして、多くの人は、
実際はジキル博士(善良)とハイド氏(邪悪)は同一人物の善悪両面に違いな
いなく、人間とはそういう存在なのだと思っている。差別をするのがマジョリ
ティであり、差別されるのがマイノリティである以上、善良なジキル博士の顔
をしていては、差別撤廃が前にすすまず、ハイド氏の顔に頼ろうとするのだと。
しかし、イギリスの小説家R.L.スチーブンソンの小説『ジキル博士とハイド氏』
(1886年刊)を読んだ人は心配する。善良なジキル博士が薬を飲んでハイド氏に
なり欲望のままに行動するうちに、薬が効かなくなってジキル博士に戻れなくな
ったり、ついには薬を飲まないのにハイド氏になってしまったように、部落解放
同盟もハイド氏が主でジキル博士が従になるのではないかと。当然の心配だ。
特に、上記の中央本部「見解」はその心配を増幅してくれる。外からの批判に
たいして、黙殺で答えるのではなく、文書で反論したことは評価に値するが、中
味には大いに失望させられた。
「見解」は、部落解放運動・同和事業をめぐる数々の問題を軽く考えすぎてい
る。― 問題はあるが、組織として対処してきた。個々人の部落民の非行を解放同
盟や部落民に一般化するな ―という考えのようであるが、それは本当か。別冊宝
島が事実を2倍に誇張・歪曲しているとしよう。その誇張・歪曲を修正しても残
る50%はどうなるのか。部落問題の内情を知る人の多くは、別冊宝島の記述は、
極端で誇張されている点があるとは感じている。しかし聞きたいのは、誇張され
・歪曲されている部分ではなく、片寄りを修正してもなお残る事実の部分をどう
するか、部落差別撤廃の目的に照らしてどう考えるかという問題である。
「頭隠(かく)して尻隠さず」という言葉があるが、その頭さえ隠せないよう
な弁明で、どうして多くの人に部落解放への理解を求めることができるのか。別
冊宝島で指摘されていることに、事実でもって全面的に反論することは不可能だ
ろう。それを今の執行部にすべて押し付けるつもりもない。しかし、もう少し読
む人に「誠意」の伝わる見解を書いてもらうことはできないのか。別冊宝島に悪
罵を投げかけたからといって、問題が存在しないことになるわけではなく、まし
て解決するわけでもない。(灘本昌久)
《参考データ》
・部落解放同盟中央本部「『別冊宝島Real 同和利権の真相』への見解」
<http://www.bll.gr.jp/guide-seimei-20030414.html>
・灘本昌久「部落差別を根拠とする権利の合理性について」
<http://www.kyoto-su.ac.jp/~nadamoto/work/198806.htm>
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