2003/2/12
■■■■ 京都部落問題研究資料センター メールマガジン vol.021 ■■■■

□映画レビュー□
 「タイタンズを忘れない」特別版
        (2000年、ボアズ・イエーチン監督、アメリカ作品、114分)
            日本語DVD版、2003年1月、発売元=ブエナビスタ

 舞台は、公民権法が通過して間もない1971年、首都ワシントンにほど近いバ ージニア州アレキサンドリアだ。黒人と白人が別れて通っていた高校が統合さ れることになり、アメリカン・フットボールのチームも白人と黒人が「タイタ ンズ」に所属することとなる。このチームには、もともと白人の有名監督がい たのだが、そこへデンゼル・ワシントン演じる黒人監督(coach の訳が、字幕 では「コーチ」となっているがここでは「監督」の方が日本語の意味からは近 いと思う)ハーマン・ブーンが赴任してくる。これに対して、選手や父母など が猛反発するが、練習を重ねるうちに選手たちの人種的対立感情が氷解してき て、地域をあげての応援となり、ついには州大会で優勝し、全米でも2位にな るという物語。
 確かに青春映画としては、佳作に類するものかもしれないし、人種問題映画 としても、こういうテーマを選んだものが、商業的になりたつというのはすご いこととは思う。日本など、部落問題を扱った映画で、商業的に成り立ったの は市川雷蔵主演の「破戒」くらいのものだろう。しかし、実話なのにウソ臭い のはなぜだろう。そもそも、人種問題を扱った映画で、デンゼル・ワシントン が出てきた作品は、「遠い夜明け」にしても「グローリー」にしても、どこか 「被差別者の正義」という安全圏を前提にして安直に描いている感じがして、 個人的には好きではない。「被差別者の正義」神話の虚構性を暴いて余すとこ ろのない黒人監督スパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライト・シング」などが既に 存在するので、なおさらの感がある。
 しかし、映画はうそ臭いが、DVDの付録についている、本物の白人・黒人 の監督のインタビューは面白い。フットボール好きのふたりがケンカしながら 頑張ってチームを勝利に導いた感じがよくわかる。この映画の失敗している点 があるとすると、スポーツのために頑張って、結果として人種対立が解けたも のを、逆に解釈して、人種差別に反対する正義がチームを勝利に導いたような ストーリーになっているところかもしれない。 (灘本昌久)


《参考データ》
・ブエナビスタ
   <http://www.movies.co.jp/lineup/lineup.php3?code=VWRS4307&subcode=0> ・アマゾン書店 DVD(定価2500円)
   <http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00007GRGJ/> ・アマゾン書店 文庫本(価格571円)
   <http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/404287701X/>

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