2002/09/18 京都部落問題研究資料センター メールマガジン vol.011

□テレビ番組レビュー□
 スーパーフライデー 「乙武洋匡・五体不満足からの自立
      ”僕は車を運転したい” 汗と涙の自動車免許取得・完全密着750日」
             (読売テレビ、9月13日午後6時55分〜8時54分)

 またまた乙武君登場。本メルマガ3号で書いたように、乙武君は、スポーツライターとして修行中である。ところが、スポーツライターとして活動するには、不便なことがある。それは、まさに「足がない」ということだ。どこかに取材に行くときには、しばしばリフトつきタクシーをチャーターしなくてはならない。鹿島アントラーズ(茨城県)の取材、などといって東京から乗ると、片道34,510円なり。(^_^;) というわけで、なんとか自由に行動したいという思いから、乙武君は、自動車免許取得を決意する。時に2000年9月。乙武君のまわりの人たちは、「またまた、乙武ク〜ン」みたいな感じで信用してないが、乙武君はいたってまじめである。
 彼に免許証取得を決意させたのは、渡辺啓二さんとの出会いである。渡辺さんは、頚椎損傷で体が不自由になったが、ジョイスティックで運転できる車を運転し、その普及活動をするNPO「ジョイ・プロジェクト」を立ち上げて活動されている。それを見て、自分も運転できるのではないかと乙武君は思ったのだ。第27回国際福祉機器展で障害者用の車を見た乙武君は、ますます希望を膨らませる。日本では障害者用の車の改造がまだまだ低い技術レベルにあるので、彼はアメリカにまで足をのばして、専門家に乙武君用の車の改造を依頼する。
 ところが順調に見えた乙武君の前に、絶望的なほどの壁がたちはだかる。日本の道路交通法では、肘関節もしくは、足の甲の関節より先をなくしている人は、免許が取れないのだ。「関節がない」どころの騒ぎでない乙武君は、まったく免許の対象外である。しかし、幸福の女神は乙武君を見放さなかった。道路交通法が改正されて、その制限が大幅に緩和された。
 こうして、乙武君は自動車教習が許可され、2002年8月29日(つまり、今から1月ほど前)にめでたく自動車免許を取得した。そして、さっそく東京から仙台への300キロのドライブにでかける。
 「乙武君が運転免許?!」というのが日本人の普通の感覚だと思うが、アメリカあたりでは、ずいぶんバリアフリーが発達している。ある社会学者が、10年程前にカリフォルニア大学バークレー校に留学した時、ほとんど全身麻痺の学生が、かろうじて残っていた顎の動きで車椅子をあやつり、学内で自由に行動していたそうである。まして、乙武君は、小学校の時から友だちととっくみあいのケンカをしたり、バスケットもなかなかの腕前なので、車の運転はできても不思議はないのだ。障害者の能力を最大限に引き出すための技術。けっこう日本の得意とする分野ではなかろうか。アメリカまで行って、お願いしないといけないとは情けない。いっそ日本で育てて、輸出産業にしてもらいたいぐらいだ。

【関連情報】
国際福祉機器展 27年のあゆみ
 <http://www.hcr.or.jp/>
電動車いすのまま運転できる国産自動車、ついに発売!
 <http://www.nippon-foundation.or.jp/vol/topics_dtl/2002519/20025191.html>
ジョイ・プロジェクト
 <http://www.joyproject.jp/index.shtml>
乙武洋匡オフィシャル・ページ
 <http://www.ototake.jp/index.html>
乙武さんが運転免許取得 道交法改正で門戸開く(共同通信)
 <http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/culture/CN2002090901000279.asp>
乙武さん 免許取得750日(産経新聞)
 <http://www.sankei.co.jp/edit/bunka/02september/0912ototake.html>
手足が不自由な人の自動車支援
<http://village.infoweb.ne.jp/~fwhk4954/teashi01.htm>

 「人権関係テレビ番組情報」は、以下をご覧ください。
<http://www.asahi-net.or.jp/~qm8m-ndmt/tv/contents.htm>

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□インターネット案内□
 《部落問題研究所》<http://www.burakken.jp/>

 ついに、部落問題研究所のホームページが開設されました。部落問題関係の研究機関で最も歴史が古く、貴重な資料を所蔵する部落問題研究所にホームページがなかったこと自体不思議なことですが、ともかく遅まきながら真打ち登場です。デザインもシンプルで、好感が持てます。しかし、データベースなどの情報提供がないところが残念です。できれば、所蔵図書目録、文庫(三好文庫など)目録、雑誌『部落』の総目次などあたりから、データベースで公開していただければ、ありがたいです。めざせ、大原社研! ^^;

※参考までに、「法政大学大原社会問題研究所」<http://oisr.org>をご覧ください。特に、「大原デジタルライブラリー」<http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/dglb/index.html>は圧巻。水平社のポスターなども見ることができます。