研究内容

2.食道がんにおける線維芽細胞増殖因子受容体3アイソフォ-ム(FGFR3IIIc)のがん悪性化促進メカニズムの解析

線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor: FGF)の受容体である線維芽細胞増殖因子受容体3(Fibroblast growth factor receptor:FGFR3)の過剰発現や変異によるがんの悪性化は膀胱がん、メラノーマ、多発性骨髄腫で報告されている。最近の研究において膀胱が ん、多発性骨髄腫においてFGFR3特異的に結合する抗体、FGFR3のチロシンキナーゼ阻害剤により、FGFR3の過剰な活性化が阻害され、がん細胞の 増殖が抑制されることが示されている。これらの結果から、FGFR3の過剰な活性化はがん細胞の増殖などのがんの悪性化に関与しており、FGFR3を標的 としたがん治療薬の開発を期待することができる。FGFR3は、選択的スプライシングによりIIIbアイソフォームとIIIcアイソフォームを生じる。上 皮では主にIIIbアイソフォームが発現しており、間充織では主にIIIcアイソフォームが発現している。我々の以前の研究において、約86%の食道の扁 平上皮がん患者において、がん組織でFGFR3IIIcの遺伝子発現が亢進していることをRT-PCRにより見出した。この結果から、食道がんにおいて FGFR3IIIcの発現が亢進することにより、がん悪性化が促進されることが示唆された。本研究では、FGFR3IIIcの発現亢進によるがん悪性化促 進のメカニズムを解析する。