《next+最上級》の非標準的な用法

平塚 徹京都産業大学 外国語学部

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 《next+最上級》と言うと、「その次に最も〜な」と言う意味になる。例えば、以下の引用に出てくるthe next bestは、「その次に良い」である。

To love and win is the best thing. To love and lose, the next best. 愛して勝ち取るのが一番良い。愛して失うのがその次に良い。 ― William Makepeace Thackeray(ウィリアム・メイクピース・サッカレー)

Oxford English Dictionaryも、「すでに言及された、あるいは、もうすぐ言及されるものを除いて最も〜な」と言う意味だと説明している。これがお墨付きの正しい用法である。

 ところが、実際には、これとはむしろ逆の意味で使われていることがあるのである。

My next oldest cousin was 1½ years older than I, but the next youngest was 2 years younger. 私のすぐ年上のいとこは私より1歳半年上だが、すぐ年下は2歳年下である。 (The Washington Post 2002/12/11)

これを「私の次に年長のいとこは私より1歳半年上だが、次に年少のいとこは2歳年下である」と訳すと矛盾する。next oldestは「次に年長の」ではなく「すぐ年上の」、next youngestは「次に年少の」ではなく「すぐ年下の」としか理解できない。

 以下の例では、next brightestは、「次に明るい」ではなく、「1段階明るい」と理解せざるえない。

If the person is not able to see the dimmest light, the next brightest light is displayed. その人[=被験者]が最も暗い光を見ることができなかったら、1段階明るい光が表示される。 (Historical and practical uses of assessing night blindness as an indicator for vitamin A deficiency)

 つまり、これらの用例では、普通の用法とは逆方向のものを指しているのである。これはむしろ、《next+比較級》と表現すべきものである。このような用法を認めない話者もいるが、意外にちゃんとした文章にも出てくる。

 なぜ、このような表現が出てくるのだろうか。標準的な用法では、ある形容詞の最上級を使いながら、その形容詞の意味とは逆方向のものを指すことになる。例えば、the next largestは「大きな」の最上級を使いながら、基準となるものより「小さな」ものを指すことになる。これは論理的な帰結ではあるのだが、largestと言っておきなら基準より小さいものを指すのは矛盾しているように感じられうる。そこで、「大きい」と言う言葉を使っているのだから、nextと合わせて隣の大きなものを指してしまう方がその矛盾を解消できる。また、nextということから隣という範囲に限れば、基準よりひとつ大きなものは確かにその範囲の中で一番大きなものになっており、そう考えれば最上級で指すこともできる。そういったことから、問題の非規範的な用法が生じているのだろう。

 普通に論理的に考えれば《next+最上級》は「その次に最も〜な」という意味になる。しかし、人間にとって論理的推論は認知的負担が大きく、しばしば短絡的に考えてしまうものである。



©平塚徹(京都産業大学 外国語学部)

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