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2015−12−23
パリ・テロ事件から あすの世界を考える

ヨーロッパ言語学科フランス語専攻・国際関係学科 共催 )

 
パリ・テロ事件から パリ・テロ事件から、シリア空爆へと世界でいま起こっていることはとても深刻です。 戦場からのがれた数多くの難民は、行き場もなく厳しい冬を迎えています。 そうした時に、「理解」をキーワードにして、現在と、あすの世界について、 学生のみなさんといっしょに考えてみたいと思います。

■日時■ 12月23日(水)13:15〜15:15
■場所■万有館4F B405
■内容■
荒井文雄(外国語学部ヨーロッパ言語学科フランス語専攻教授)
「パリ・テロ事件とその後の世界をどう「理解」するか」
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北澤義之(外国語学部国際関係学科教授)
「「イスラム国」(IS)の成立の背景とイスラムの「理解」」
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コメント・感想(アンケートの結果など)

今日のフォーラム、とても刺激的でした。先日のパリ・テロ事件の背景には西欧とイスラム教徒の間に存在する数々の「非対称」(実際の死者数、哀悼の注目度、経済的な利益、社会の差別とくに就職率)があるとの荒井先生のご指摘は、非常に分かりやすく、的をえたものであると思いました。ただ、失業率の高さや労働の価値の下落は一般的なフランス人の若者にも共通する問題ですから、先生のご提案されていた「理解」だけでは解決はちょっと難しいのかもしれないなど、お話を伺いながら色々考えました。現在もシリアやイラク市民が誤射されたり爆撃に巻き込まれたりしていますが、いまの日本でそんなことが起こったらと想像したら、恐ろしくなります。
 1928年以降のイスラム世界において着々と形成されてきた反ヨーロッパの動向についての北澤先生のお話を通じて、1979年のイラン革命がジハード主義の国際的なイメージを形成するのに一役かったことや、ISが「イスラム・カリフ国」と名乗ることに対するイスラム世界の反発の理由などが理解できました。「国民」という概念が曖昧になった現代において、国の枠を越えて協力しなければ解決できないことが多いにもかかわらず、国を越えて協力するのは本当に難しいことなのだということも感じました。
 会場には、フランス語専攻の1回生から4回生のみならず、他の学科専攻の学生たちや教員など、様々な関心を抱くひとが集いました。学生さんたちが熱心に質疑応答に加わっていたのが印象的でした。非常に有意義な会であったと思います。荒井先生、北澤先生、ありがとうございました。(フランス語専攻 長谷川晶子)


学生のみなさんの声

参加者のアンケートから(抜粋)

【感想】
・難民の環境、状況、他の様々な問題は簡単に解決できることではないが、色々と考えるべきところがあったり考えさせられる講義でした。
・いろんな角度から話しを聞いてたのしかったです。フランスの爆撃事件のことから、その事件にかかわったIS組織その両方をこと細かく聞けてためにもなりました。差別というのはいつまでたってもなくならないのだな、と思いました。(・・・)もっともっと難民についての情報が知りたいと思いました。
・フランスの移民(特に教育において)がどの様な状況におかれているのかを知ることができてよかったです。
・移民に関するダブルスタンダードがあるという指摘は以前から個人的に感じていたものがあった(・・・)他の国(日本や米など)が移民に対して潜在的差別意識を有しているのではないかと感じた。(仏テロのときはやたら感傷的な報道がされていたような・・・)
・移民三世などによってテロが起こされてしまったというのは今のグローバル化されている社会にとって重大な事と思いました。また未だに宗教が絡んでしまっているということ、また経済の問題も絡んでいるということ。もっとテロ、戦争について学ばなければと思いました。そのためにはより多くの学問(経済、宗教など)を学ぶ必要があると思いました。また今日は知識は得る事ができたが、どうすれば良いのか。・・・今後どうしていくべきか、(・・・)日本がどうあるべきか、ひとつ意見を持たなければならないと思いました。
・このフォーラムを通して自分なりの考え方に幅や多様性が広がったと思う。前半の荒井先生の講義では、今まで想像しなかったような考え方やマイノリティへの歩み方など、非常に勉強になったお時間でした。北澤先生の講義では的確で正確なデータを用いての形で理解しやすかった。事件が起きた現実に目を背けず、それに至った背景を考えなければいけないことが重要。(・・・)フランスの言語的教育が充分に行われていなかった。
・今回のパリ・テロが起きて、ずっとずっとニュース報道を追っていましたが、一つ一つがわからないことばかりでした。点がたくさんバラバラになっていて「???」が増えていって、その点と点を結んでいくことが世界を知り、政治を考えるということなんだと思います。今日は自分の求めていた知識や観察を細ごま沢山学ぶことができました。どこの場所からもはじかれて、でも、フランスもイスラムも行き来できて理解できる人たちを、敵!!だとか、やっつけよう!なんて考えも違うのではないか、と私もずっと思っていました。(・・・)どうしたら彼らを、世界の輪の中へ少しづつとけこませることが出来るのか、そればかり考えていました。(・・・)彼らこそ本当は問題解決のためのカギをにぎっている人たちなんだととても納得できました。
まだまだ自分の中でもさらに考察を深めていきたいです。またこのような講義があれば、ぜひ参加したいです。ありがとうございました。
・ISについてよくわかりました。市民の人々は自分の国の政府、IS、その他の軍によって殺されていて、難民として逃げたくなるのも理解できます。フランスの移民の人々の非行に入ったりする人は、移民のグループみたいなものからも排斥されていて、助けてくれる人がいない中で、彼らなりの反発が非行という形で表れてしまっているのかと思った。
・たいへんくわしくて、とてもよくわかりました。フランス語を勉強する身として、しっかりとフランスやイスラム国のことを学び、理解することが大事だと思いました。
この前のテロで、私はフランスでの犠牲について心を痛めましたが、他での犠牲についてもよく考えるべきだと思いました。
・(・・・)移民の背景・育ち・社会で受ける具体的な理不尽なことがらを初めて知ってテロが起こる理由に納得ができた。
・普段、授業では学べないイスラム国の背景、フランスの移民事情について詳しく聞けて良かったです。
・ニュースでは聞かない長年の歴史背景がよくわかった。(・・・)多くの情報に目を通して正しい情報を得るようにしようと思った。荒井先生の話で、フランスで育った移民系の人たちがヨーロッパと中東をつなぐ重要な人間になるという話は自分にとって新しい視点で勉強になった。自分の知識のなさに気づいたので、もっと勉強したいと思った。たくさん学べたので、次回からも参加したい。
・パリの話では、テロの内容などはニュースで流れるので、わかりますが、移民の境遇などは知る機会がなかったのでよかったです。中東については、歴史さえ知らなかったので、学べてよかったです。国際関係を学ぶ面でも、言語を学ぶ大切さがわかりました。
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【今後取りあげてほしいテーマ】
・移民・難民に対する各国の姿勢、取り組みについて
・宗教対立
・民族浄化

・将来はどうすればよいか、テロ世界に対して。
・ヨーロッパ、中東諸国での宗教教育について。
・何が人々を戦争へ向かわせるのか。
・IS問題解決の国際社会の課題など、中東問題をもっと詳しく聞きたいです。
・日本の防衛、自衛隊について取り上げてほしい。