西表島マングローブ調査


はしがき
96年度夏、西表島離島合宿は、ほとんど手探りの状態から始まったものの、目的の調査も大体果たすことができた。 今回の調査目的は、海に棲む生物およびマングローブの生態であったが、前者はともかく後者はただそれを自分の目で確かめるだけでも、感動は大きかったように思える。調査はどちらかといえば完璧ではなかったが、良く言えば調査にとらわれず、南の島の開放的な雰囲気に流されるがままの合宿であったと言えば丁度いいだろう。
 
参加者 桜井章子 東喜史 原重実 仲谷優子 加納義之 福島真樹

1。西表島概要
北緯24’15〜25’、東経123’40’〜55’に立置し、石垣島やその他の小島とともに八重山諸島を構成している。面積は323平方kmで沖縄本島に次ぐ、東西に長く南北に短い正方形の島である。平均気温は23、4度で、一年のうち12月〜数ヵ月が春、あとはすべて夏である。  西表島は、古見岳(470m)波照間森(447m)などの山々を水源とし、仲間川、浦内川、仲良川が浸蝕して谷をつくりながら流れる。島の殆どが亜熱帯雨林で、海岸部のマングローブ原生林が特色である。

2。マングローブとは
マングローブ林は熱帯の河口や内湾に発達する独特の植物群落で、いくつかの種の総称である。マングローブには、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギモドキ、ヒルギダマシ、マヤプシギ、ニッパヤシの7種類がある。これらは胎生種子(種子の発芽が、潮が引いた時以外はいつも海水に浸っているという普通には悪環境と思える場所での繁殖を可能にしている)や気根をもつことが特徴である。マングローブ林は海水に浸されるという厳しい環境に生育するため、形態的に共通する適応が見られる。オヒルギに見られる膝根、ヤエヤマヒルギに見られる支柱根、ヒルギダマシとマヤプシギに見られる呼吸根などを特殊化した根をもつが、これらは空気中の酸素を呼吸しているといわれている。そしてマングローブは、海水に浸される時間や泥質、流速などの原因により、海側から陸側に向かって、群落が帯状に分布している様子がわかる。

〜マングローブ調査結果
ー目で見て、手で触れて感じたことー〜
調査を行った川毎にまとめてみることにする。
★仲間川;日本最大のマングローブ林。ここでは、4〜5種類のマングローブが生育しており、海側に向かって陸側からオヒルギ→メヒルギ→ヤエヤマヒルギ→ヒルギダマシ→マヤプシギが分布。ここでわかることは、7種類それぞれに生息しやすい位置があるということである。例えば、オヒルギは、どの川を調査しても内陸側にあり、ヒルギダマシやマヤプシギは仲間川の海側の波のかぶりやすいところに分布していた。
★後良川;ここでは、河口だったせいか仲間川同様マヤプシギが多く見られた。他には、ヤエヤマヒルギも多く見られたが、ヤエヤマヒルギはマヤプシギと同様に比較的海側に近い所に分布していたのだが、相違点は、ヤエヤマヒルギは満潮の時はかなり水深の所にあるということである。(ーたぶん。)河口すぎたせいか、2種類しか見分けることはできなかった。
★ゲータ川,西ゲータ川,クーラ川  仲間川や後良川に比べると小さな川であったが、マングローブが生育していたので、調査しておいた。しかし、オヒルギがあるということはわかったのだが、他の種類についてはいまいちわからなかったというのが本音である。これも事前の調査不足故だろう。ただ、河口に近い位置にマヤプシギはなかった。これが泥質や流速が要因なのかは定かではない。
★ピナイサーラへ,あがるまで,様々な川 この周辺は、調べるまでもなくヤエヤマヒルギとメヒルギの群落だった。満潮時には水をかぶって見えないだろう、たこ足状をしたヤエヤマヒルギの根も、干潮時に歩いた時には沢山見ることができた。メヒルギは比較的木の高さも高くなく、葉を見てメヒルギであるとわかった。1つ付け加えておきたいことは、西表島では船浦湾と内離島にしか見られないというニッパヤシを見ることはなかった。(ー否見落としていただけかもしれないが.....)

マングローブを見分けるときに役立つのは、根の様子、葉の形、果実、そして木全体を見ることである。どの木の下にどんなものが落ちているか、根が直立に突き出ているか、葉は先端がとがっているか丸みを帯びているか、などである。そして、マングローブは7種類(日本では)あって、各々上述の様な特徴があるということ、それは調べる上では大切なことである。 今回マングローブを見分けるのに役立ったのは、特有の根の様子、木の高さなどであった。しかし、分からなかったことも多く、専門的な域に達しないと素人の私たちが見ただけでは見分けるには困難なようである。 マングローブ林へひとたび足を踏みいれてみると、そこが不思議な世界のようであった。