第一次与論島洞穴調査報告書

はじめに

 鹿児島県の最南端に位置する与論島は周囲22キロ、高低差の少ない気候的にもおだやかな島である。大部分が石灰岩地帯であり、新洞の発見が十分に期待され、私たちは与論島で洞窟調査を行うことにした。現地で一緒になった合同隊の方をはじめ、多くの方に御協力を頂き結果的に数多くの洞窟に入ることができ、新洞こそ少なかったものの、充実した合宿にすることができたと思う。

1.隊員紹介

隊長  福島 真樹 (法学部・3回生)
副隊長 小倉 宏之 (経済学部・2回生)
食糧  太田 恭子 (外国語学部・4回生)
渉外  中川 美佐恵(法学部・3回生)
装備  山本 六久 (経営学部・3回生)
会計  川口 幸子 (経済学部・2回生)
救急  山口 智子 (外国語学部・1回生)
記録  武田 牧子 (外国語学部・1回生)

2.活動記録

プレ合宿
7月24日(木) 昇降訓練フリーロッククライミング場
  25日(金) 昇降訓練フリーロッククライミング場
  26日(土) 測量訓練課外活動棟
  28日(月) ミーティング課外活動棟探検部BOX
下調べ図書館
29日(火) ナベイケ昇降訓練中止
  30日(水) 河内風穴測量訓練河内風穴
8月 4日(月) ミーティング課外活動棟探検部BOX
  8日(金) 測量訓練課外活動棟

8/16

12:30 阪急前集合
17:00 上船
17:45 大阪南港 出港

8/17

台風のため鹿児島湾内に一時停泊

8/18

鹿児島湾 出発

8/19

9:00 与論島茶花港 入港
役場に挨拶 病院まわり  昼食
13:40 バス乗車(南タクシー)
14:30 大金久キャンプ場 到着 (百合が浜入口より徒歩)
    買い出し(スーパートップ)
18:00 ミーティング

8/20

7:00 起床
8:10 出発
聞き込み
  太田、福島、中川、武田→空港方面
  山本、小倉、川口、山口→麦屋方面
18:00 キャンプ場集合
19:30 ミーティング

8/21

6:30 起床
8:15 出発
 伊波方面→伊波の穴 探検、測量
      ガス穴 探検
  古里方面→ミゾウアブ(貯水池付近)探検、測量
17:00 キャンプ場集合
19:00 ミーティング

8/22

6:30 起床
8:10 出発
10:20 北原先生屋敷内の洞窟(シルカアブ)入洞、探検
11:15 出洞、昼食
12:30 測量
15:40 出洞
18:00 キャンプ場集合
20:00 ミーティング
23:30 合同隊と親睦会(海岸にて)

8/23

7:30 起床
8:30 出発
10:00 赤碕鍾乳洞入洞、観光洞の奥を探検
12:00 出洞、昼食
13:10 出発
    朝戸方面→ガス穴探検、測量(中止)
    古里方面→古里の穴探検、測量
18:00 キャンプ場集合
19:00 ミーティング

8/24

 OFF
18:00 キャンプ場集合
20:30 ミーティング

8/25

6:30 起床
7:55 出発
8:30 ガス穴の測量
10:00 ガス穴PART2の測量
    昼食
11:45 出発
    朝戸方面→中学校南に洞口発見
    伊波方面→伊波の穴探検
18:00 キャンプ場集合
19:00 合同隊と夕食会
21:30 ミーティング

8/26

6:30 起床
8:05 出発
    茶花、賀義野、賀補呂方面の聞き込み
    神泉洞の測量、与論鍾乳洞の洞口確認
18:00 キャンプ場集合
19:30 ミーティング

8/27

6:30 起床
8:05 出発
     町富夫氏宅を訪問、品覇の穴探検(11:30出洞)
    ナホバタクアブ洞口確認
    中学校南の穴測量
14:40 品覇の穴測量(17:00出洞)
18:00 キャンプ場集合
20:30 ミーティング
21:30 合同隊と宴会

8/28

6:00 起床
7:55 装備点検
8:15 キャンプ場撤収
8:41 バス乗車(百合ヶ浜入口→南タクシー前)
9:20 役場に挨拶
  解散

3.調査報告


 与論島はほぼ全域が琉球石灰岩で占められており、かなりの数の洞穴が期待できたが、結果的には洞口確認をした洞穴13個、そのうち探検を行った洞穴11個、またその中で、測量を行った洞穴は10個であり、そのうち測図のない洞穴は、7個でした。新洞発見の目的で行った合宿であったにもかかわらず、調査した洞穴の大部分が測図があるか、もしくは、人工的に手の加えられてある洞穴であり、どれが新洞かを決めることはむずかしいため、具体的に数字を出すことはできませんでした。    また、過去調査された洞穴の中にも、現在では消失している洞穴もありました。赤崎鍾乳洞に関しては測図があるのかどうかわからず、また、測量を行うにはかなりきびしいという判断から測量を断念し、探検のみを行いました。  当初の計画では、与論空港周辺と麦屋地区を重点的に調査する予定でしたが、ほぼ全域が整備されており、赤崎鍾乳洞を除いては洞穴を確認することはできませんでした。  総合的にみると、那間、茶花地区の海岸よりの地域に洞穴がみられ、また古里地区にも1個、朝戸地区と出毛地区の中間のあたりに2個、伊波地区に1個、そして屋川地区にも4個の洞穴を確認しました。(屋川地区は、同時期に調査を行った東京農業大、日本大、立正大の合同調査隊の方との調整上、調査をおこないました。)

○与論空港周辺
空港周辺にはドリーネ状になっているところもあるが、大部分は平地になっており、洞窟の存在は確認できなかった。しかし、国民宿舎近くの海岸に$海食洞を確認することができた。

○那間 茶花地区
賀義野地区と品覇地区に、洞窟を確認することができた。高さ数十メートルの崖状の部分では、数個のくぼみを確認することができるが、いずれも3〜5mで終わっており、大規模な洞窟は確認できなかった。主に、海岸に近い地域に洞窟の存在を確認することができた。

○朝戸地区
比較的、高低差のある朝戸地区の聞き込みを行った。 道路際に石灰岩が露出している箇所がかなりあったが、そのほとんどが1m足らずのくぼみで、人が入っていくことは困難である。また、中学校の北側に石垣状の数メートルの段差がある畑が続いているが、洞窟は確認できなかった。 しかし、朝戸地区と出毛地区の中間あたりにある貯水池、また道路の下に洞窟を確認することができた。

○麦屋地区
麦屋地区は、ほとんどの所が田畑となっており、全く洞口は確認できなかった。だいたい平地に近い感じで、周辺の人々は赤崎の観光洞しか知らない様子だった。

○伊波地区
屋川から大きい断層を越えた地区で、ほとんど平地であり、洞口がありそうな感じの所はなかったが、現地の人達の情報で道路のガードレール下に1つの洞口を確認できた。

○古里地区
さとうきび畑が多く存在し、現地の人の情報で洞口を確認できた。洞口の近くは、洞口を囲んで柵がはってあり、内側は薮になっており5mぐらい落ちた所に洞口があった。他に洞口は確認できなかった。

3.1測図、洞内記載、アプローチ図

3.品覇の穴
畑の北西方向に、直径約4m、高さ約4mの竪穴が開口している。洞口には人工的に積み上げたと言われるもろい岩があり、また全体的に木の枝が広がっている。確保をつけて降下すると、洞床は泥とごみで覆われており、そのまま高さ約0.8mの洞口をくぐると洞床が瓦礫で覆われ、なだらかな傾斜になっており、幅約5m奥行約15mのホールに達する。このホールは奥のほうにストローが発達しており、約1m四方のもうひとつのホール状の空間に達すると、それ以上奥へは行けない。ホールの西方向約3m上に高さ約0.8mのもうひとつのホールへ続く隙間があり、このあたりは二次生成物がよく発達している。上方のホールの南側には幅約0.5mのクラックがあり、フリーで降りることができる。洞床は泥で、南西方向と北西方向にのびる高さ約0.3mの歩伏前進する2つの支洞に分かれる。南西方向の支洞は約10m進むとストローで覆われている部分に達し、それ以上進むことは難しい。また北西方向の支洞は約2m進むと上方のホールへループしている支洞へ達する。
上方のホールの北方向には、支洞が伸び約3mかがんで進むとさらに北方向へ繋がる幅約0.3m高さ約0.5mのすきまがあり、そこを抜けると奥行き約3m幅約1mの小ホールに達する。また西方向にはさらに幅約1m奥行き約5mのホールがあり、徐々に狭くなっている。この部分にはフローストーン、石筍が発達し洞床は泥で覆われている。

鹿児島県大島郡与論町品覇              文責:福島真樹

ただいま工事中