仏教の世界観A

講義目的
 飽くなき欲望の追求と充足に向けて邁進する現代人の未来に思いを馳せるとき、
人は誰しも漠然とした危機感を持つ。人類の精神の荒廃に歯止めがかかる日がい
つか来るのであろうか。諸行無常・諸法無我・涅槃寂静という言葉から感じ取ら
れる心静かな世界、一切は相対的存在であるとして絶対的存在を否定する縁起思
想に見られる冷静沈着にして鋭く真理を照らす世界、一切衆生の救済のためひた
すら利他行に励む菩薩の世界、このような仏教の世界観を考察することによって、
物質文化の隆盛に反比例して細り続ける精神文化の復活の可能性を探る。仏教の
世界観Aにおいては、主に、原始仏典によって、ゴータマ・ブッダの覚りを中心
として講義する。できる限り、毎回10分程度の時間を割いて、ルンビニー、ブッ
ダガヤ、サールナート、クシナガラといったブッダの歩んだ道をビデオで見てみ
ることによって人間ブッダの理解の助けとしたい。

授業内容

1回目  I  イントロダクション
      1  仏教の特色
2回目   2 ブッダ出現時のインド
3回目  II 仏教の根本思想 
      1 ブッダの人となりとブッダの覚り
      (1)誕生と出家
4回目   (2)成道(覚り)と初転法輪(初めての説法)
       a.説法の躊躇と梵天勧請(説法の要請)---原始経典より
5回目    b.初転法輪(初めての説法)---原始経典より
6回目    c.初めての説法とその内容(縁起と中道)---原始経典より
7回目    d.初めての説法の内容(四聖諦と五蘊)---原始経典より
8回目   (3)教育者としての人間ブッダ
9回目   (4)入滅
10回目  2 縁起という世界観
           (1)再び縁起とは
11回目     (2)十二支縁起---原始経典より
12回目  III まとめ---三法印
      1 諸行無常
13回目   2 諸法無我
          3 涅槃寂静
14回目  IV 総まとめ    


履修上の注意
 この講義では、学生諸君にとっては予備知識のないことが多いと思われるので、
とにかく授業を休まないようにすることが必要である。授業中に配布する資料は、
内容的に高度な思索を必要とする難解な経文であることが多いので、事前に必ず
熟読し、授業後に再読して自己の理解を確認することが求められる。

授業の到達目標
 ゴータマ・ブッダの思想の根本がどのようなものであり、人間にとって如何な
る意味を持つものであるかが自分の言葉で表現できるようになりたい。また、縁
起、涅槃といった重要な仏教用語について、その正しい意味を理解したい。

評価方法
 定期試験と平常点(出席点、授業時に提出するレポート)とによって総合的に
判断する。

教材
教科書:長尾雅人『仏教の源流---インド---』(中公文庫)
参考書:長尾雅人他『世界の名著1バラモン教典・原始仏典』(中央公論社)


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Last modified: Sat Mar 12 11:20:18 JST 2005