公正な年金の取り扱いを要請する外国人教員

【京都】

さきごろ、この地域(京都)の私立大学に勤務する外国人と日本人の教員が、日本で働くほとんどの外国人に関わりのある年金制度の問題点を検討するグループを結成した。

外国人にとって、現在の年金制度では、長く働けば働くほど支給額が少なくなる。「現在の制度では、完全な年金を支給してもらうためには最低20～25年間働かなければならない。もし就労期間が所定の条件に満たない場合、年金制度に払い込んだお金の大半あるいはほとんどを失うことになりかねない」とグループの代表で龍谷大学教員の米国人ポール・ジャフ氏は語る。

日本の法律では、外国人が日本で3年間働き、その間年金保険料(私学共済長期)を納めた者は、帰国の際、平均月収×定数で計算された一時金を受け取る権利があることになっている。

厚生省が定めたこの定数は、滞在期間によって0.5～3.0までとされる。しかし、ジャフ氏が指摘するように、問題は3年以上、所定年数(20～25年)まで就労した外国人の場合、保険料を納めつづけても帰国の際支給される一時金は平均月収×3.0という、3年間働いた者と変わらない金額だということである。これでは、保険料のほとんどを失うことになってしまう。

「ある外国人が、理由はどうあれ、帰国せざるを得なくなった場合、出国後2年以内に一時金の支給を申請することはできる。申請しなければその権利を放棄したことになる。私自身の場合、1990年10月から保険料を納めているので、もし仮に今年6月末に米国に戻るとすれば、これまで680万円を納めたにもかかわらず、支給される一時金はわずか160万円に過ぎないという計算になる」とジャフ氏。

外国人教員の多くが同様の状況である。

7月に、ジャフ氏と彼の仲間は、インターネットを通して、在日外国人教員に滞在期間に関する全国アンケートを実施した。140人の回答者のうち、年金の保険料期間が3年未満の者はわずか25人だった。また、回答者の半数は6年から10年間保険料を納めつづけていた。

「滞在期間が長ければ長いほど、失うお金が多くなる可能性が高い。長期間日本で働いて、突然帰国することになれば、納めた保険料の5割以上を失う可能性もある」とジャフ氏。

一旦日本を離れても、2年以内に申請すれば、一時金は受け取れるが、その後同じ人物が日本に戻った場合、最初からもう一度やり直さなければならない。

年金制度から離れた期間を｢カラ期間｣と言う。

グループのメンバーの一人トム・ロブ氏(京都産業大学)は、「教員の多くは一旦帰国して、また日本に戻ってくることがしばしばあるので、この法律は見直されるべきだ」と主張する。

「海外在住の日本人教員や会社員の場合、完全な年金支給の条件となる20～25年間の中に、海外にいて保険料を納めることのなかった期間も算入することができるが、外国人にはそれは適用されない」とロブ氏。

その唯一の例外は、外国人が日本の永住資格を取得している場合だ。日本の永住者であれば海外滞在期間は日本人同様「カラ期間」として認められる。

昨年11月に、ジャフ氏は数名の外国人教員とともに年金問題に関するフォーラムを開いた。その最終的な目標は法の改正である。

外国人教員のためのよりよい年金取り扱いに努力している私学共済の京都・滋賀支部の代表者とともに、同グループはこの問題を研究し、全国にいる外国人教員の意見を収集している。

「私たちは先月、現在の年金制度におけるいくつかの問題点を指摘した報告書を厚生省に提出した。特に気になるのは、外国人教員が2，3年間日本を離れると、この期間は「カラ期間」として認められないが、日本人の場合は認められることだ」と言うのは、京都産業大学の労働法律学が専門の脇田重（？）氏である。彼はジャフ氏のグループを支援する日本人の一人である。

脇田氏によると、次の段階は、すでにいくつかの年金制度見直し案の検討に入っている厚生省に対し、9月か10月ごろ正式な意見書を提出することだと言う。

脇田、ジャフ、ロブ各氏の主眼は私立大学で働く外国人教員の状況の改善にある。

しかし、脇田氏によると、上記の年金制度上の問題は、私立大学外国人教員ばかりでなく、日本で働くすべての外国人に同様の影響を与えていることだと言う。

さらに氏は「日本の企業で働く外国人の多くは、10年間も働いた後、退職し帰国した際に、それまで納めてきた年金保険料のほんの一部しか払い戻されないと知ったら、きっと驚くに違いない」と言う。

〈新聞への投書〉

外国人に不利な年金法

日本で働く外国人労働者のための公正な年金の取り扱いを求めた私たちの活動に関する、8月29日付「公正な年金の取り扱いを要請する外国人教員」の記事は、大変喜ばしいことだったが、いくつか訂正や説明を要する個所がある。

日本を数年間離れた日本人でさえ、「完全な」年金を受け取るための所定の勤続年数にその数年間を算入することはできない。できることといえば、その期間（「カラ期間」）を、年金受給資格を満たすためにカウントすることだけだ。

つまり、実際に支給される年金額は、納めた保険料の年数に比例して計算される。たとえば、15年間保険料を納めつづけ、10年間日本を離れた者は、普通の年金額の60％程度が支給されることになる。しかし、これは日本国籍以外の者には適用されない。

記事に指摘されているように、永住資格を持つ在日外国人が「カラ期間」に関して日本人と同様の扱いとなるのは事実だが、これは矛盾している。なぜなら、1年以上日本を離れれば、永住資格は自動的に抹消されるからだ。

記事中に「これまで680万円を納めたにもかかわらず、支給される一時金はわずか160万円に過ぎないという計算になる」と言うジャフ氏の発言が引用されていたが、その160万円には、氏が所属する大学から支給される80万円が含まれていることを最後に付加えておく。

年金法改正運動や上記の問題に関するより詳しい情報を入手したい方は、私たちのホームページをご覧ください：

http://www.kyoto-su.ac.jp/~trobb/pension-j.html

トーマス・ロブ
（京都）

翻訳： Tony & Chisato Boys