「分泌経路と小胞輸送発見の歴史 」補足原稿

編集して掲載しようと考えていたのですが,4ヶ月かかってなかなか時間が取れないので,とりあえず,原稿から必要な部分を抜粋してきました。出版されている原著とかぶるところがあり,読みにくいですが,ご容赦ください。

  1. 「メンブレントラフィックと小胞輸送」について

    教科書的には,膜(による)輸送(membrane traffic),あるいは小胞輸送(vesicular transportあるいはvesicular traffic)と呼ぶことが多い。生化学辞典や医学辞典を調べると,日本では小胞輸送と呼ぶことが一般的であったようだ(私もそう習った)。最近では,カタカナでメンブレントラフィックと呼ぶ研究者が増えてきているが,本稿ではイメージが湧きやすい「小胞輸送」を用いることとする。
  2. グループIIイントロン

  3. イントロン部分のRNAにRNA前駆体からの自らの切り出しと両端に存在するエキソン配列の連結を行なう活性も持つ配列がコードされている(松浦, 2002)。

  4. Camillo Golgi(1843-1926)

    イタリア人の神経科学・病理学者(Dröscher, 1998)。カハール(訳注7)とともに「神経系の構造の研究」でノーベル賞を受賞した。

  5. ゴルジ染色法

    黒色反応とも呼ばれ,神経細胞の観察のために開発された。

  6. Adelchi Negri(1876-1912)

    イタリア人病理学・微生物学者。狂犬病の研究者として有名である。狂犬病に感染したヒトや動物の神経に特有の構造物が観察されることを発見した。この構造物はネグリ小体と呼ばれ,長らく狂犬病感染の診断に用いられていた。

  7. 神経細胞のゴルジ染色法

    1929年に新潟医大の青山によって改良され今も使われているとのこと(Aoyama:1929uc; Dröscher, 1998)。

  8. Santiago Ramón y Cajal(1852-1934)

    スペイン人病理学・神経科者。神経のネットワークは,一続きになったネットワーク上の細胞ではなく,明らかな切れ目がある(複数の細胞[ニューロン]がつながったもの)という,ニューロン説を提唱した。

  9. ボーエンの総説

    原著論文を読まれることをお勧めする。分泌顆粒がゴルジ体で形成され,それが分離して細胞外に運ばれることなど,形態観察のみからその背後にある分泌機構をかなり正確に推察している彼の洞察力に驚かされる。論文に写真を載せることがポピュラーになる以前であり,組織のイラストにも迫力がある(Bowen, 1929b; a)。ちなみに,ボーエンは,惜しくもこの総説を書いた直後に,37歳で亡くなっている。東大医学部,緒方正規が初期の分泌機構の解析に大きく寄与したことも記述されている。

  10. Arbert Claude(1989-1983)

    ベルギー出身の医師,細胞生物学者。リエージュ大学で学位取得後,1929年にロックフェラー医学研究所で研究を始めた。電子顕微鏡解析と細胞分画を用いた生化学的解析を融合させ,細胞生物学という研究分野の誕生を導いた(De Duve and Palade, 1983)。

  11. Keith Porter(1912-1997)

    カナダ出身の細胞生物学者。発生学の研究でハーバード大学で学位を得た後,プリンストンを経てロックフェラー医学研究所で研究を始めた。電子顕微鏡解析に精通していた(Satir, 1997)。

  12. 40年代のロックフェラー医学研究所

    この頃のクロードの業績はパラーデ(訳注12)がまとめている(Palade, 1971)

  13. George Emil Palade(1912-2008)

    ルーマニア出身の解剖学者,細胞生物学者。

  14. 60-70年代のロックフェラー医学研究所

    パラーデが独立して研究を始めたころの混沌とした中にも活気のある研究室の様子が(Palade, 1977)に描かれている。そのころパラーデ-ポーター研究室にいた東京大学の解剖学者,山田英智の昔話も面白い(http://www.microscopy.or.jp/magazine/46_4/pdf/46-4-277.pdf)

  15. Christian de Duve(1917-2013)

    イギリス生まれのベルギー人。インスリンと糖代謝の研究を行っていたが,クロードの影響によって,細胞生物学的研究に転向した(Blobel, 2013)。

  16. Günter Blobel(1936-)

    ドイツ出身の細胞生物学者。ウィスコンシン大学のポッター(Van Rensselaer Potter II:生化学者なら誰でも知っているPotter-Elvehjem型ホモジナイザーの開発で知られる生化学者)研で学位を取得したのち,ロックフェラー大学パラーデ研でポスドクの後独立。小胞体シグナルの発見の後,核膜孔の研究に転じ,現在もロックフェラー大学で研究を続けている。

  17. Bernhard Dobberstein(1944-)

    ドイツ出身の細胞生物学者。ボン,フリードリッヒ・ヴィルヘルム大学で学位を取得後,1974年にロックフェラー大のブローベル研ポスドク。1976年にドイツ,ハイデルベルグの欧州分子生物学研究所(EMBL)にて研究室を開く。1985年にハイデルベルグ大学に異動,2009年にハイデルベルグ大学名誉教授。

  18. Peter Walter(1954-)

    ドイツ出身の細胞生物学者。ロックフェラー大学で学位を取得後,カリフォルニア大学サンフランシスコ校で研究室を開く。SRPの発見のほか,折りたたみ不全タンパク質応答(unfolded protein response)の研究で有名。

  19. Tom Tapoport(1947-)

    アメリカ生まれで東ドイツ育ちの細胞生物学者。フンボルト大学で学位取得後,東ドイツ科学アカデミー分子生物学中央研究所で研究室をもち,ベルリンの壁崩壊後の1995年にハーバード大学医学部に異動した。彼は健脚で,ゴードンカンファレンス(Molecular membrane biology)では,シェックマンとともに毎回軽登山のリーダーである。

  20. Randy Schekman(1948-)

    細胞生物学者。アメリカ,スタンフォード大のアーサー・コーンバーグ(DNA合成酵素の発見者として有名)研で分子生物学をマスターした後,カリフォルニア大学サンディエゴ校のシンガー(生体膜の流動モザイクモデルの提唱で有名)研を経てカリフォルニア大学バークレー校で研究室をもち,現在に至る。2013年,ノーベル賞受賞(本文参照)。

  21. 小胞輸送(vesicular transport)

    パラーデは,このシステムのことをざっくりと(分泌タンパク質の)細胞内輸送(Intracellular transport [of secretory proteins])と呼んでいた。 小胞輸送という用語については,脚注1を参照のこと。

  22. Barbara Pierce(1948-)

    イギリスの細胞生物学者。MRC-LMBは,ワトソン,クリックがDNAの構造を決定したことでも知られる研究所。1962年に現在の場所に移り,最近新しい建物ができた(Pelham, 2013)。

  23. RothmanとShekmanが研究室を開設した頃

    シリコンバレーを牽引するIT企業アップル社の創業と重なる。アップル社の株式公開が1980年,初代Macの発売が1984年である。このためか,少なくとも小胞輸送の研究室のほとんどが今もMacユーザーである。

  24. James R. Rothman(1950-)

    ハーバード大から,マサチューセッツ工科大学のロディッシュ(Havey Rodsh: ロックフェラー大卒の分子生物学者。MRC, LMBのシドニーブレナー,クリック研でポスドクののちMITで独立。ユビキチン研究でノーベル賞を受賞したシカノーバーもOBである)研を経て,スタンフォードで独立。その後,1988にプリンストン大学に,1991年にスローン・ケタリング記念がんセンター,2003年にコロンビア大学,2008年にイェール大学医学部に異動し現在に至る。

  25. 無細胞系を用いた生化学的な解析

    生化学者にとっては王道である。

  26. VSVウイルスのGタンパク質(VSV-G)

    ロスマンはEMBLのシモンズ(Kai Simons)(脚注28参照)の研究室を訪れた時に,ウイルスタンパクをマーカーとして用いるアイデアを仕入れたらしい。

  27. Rerio Orci(1937-)

    イタリア出身の細胞生物学者。1963年にスイス,ジュネーブ大学医学センターで助教授となり,1972年から,ジュネーブ大学医学部で研究を行っている。ロスマンやシェックマンと多数の共同研究を行っており,電子顕微鏡解析のマエストロと呼ばれている。

  28. コートマー(coatomer)複合体

    コートマーのうちβ-COPは,欧州分子生物学研究所(EMBL)のクライス(Kreis)のグループがゴルジ体に局在する110kDaのタンパク質として先に発見し,先にクローニング成功した(Duden et al., 1991)。

  29. Richard Klausner(1951-)

    アメリカ,イェール大学卒。デューク大でMDをとったのち,マサチューセッツ総合病院勤務。ハーバード大学でポスドクを経て,1979年にNIHで研究室を開いた。1995年から2001年までNIHの国立がん研究所(NCI)所長。2015年現在,アジレント社の重役(Senior Vice President and Chief Medical Officer)。クラウスナーはとても気さくな人で,1994年ごろ筆者がクラウスナー研の友人を訪問した時,新しく買ったという日本車で空港まで迎えに来てくれた。

  30. Thomas Kreis(1952-1998)

    スイス人細胞生物学者。チューリッヒ工科大学卒,1983年にEMBLに研究室を持ち,1992年よりジュネーブ大学に研究室を持っていた。小胞輸送と細胞骨格,特に微小管との関連についての研究を精力的に進めた。抗体作成を得意とし,筆者も共同研究でお世話になった。惜しむらくも,1998年のスイス航空飛行機事故で大西洋に散った(Simons and Mellman, 1998)。

  31. Brefeldin Aとβ-COP

    一連の実験はロスマンのグループとの熾烈な競争のもとに行われ,論文は同時に発表された(Helms and Rothman, 1992)。東京薬科大多賀谷も,この競争に参加している(Orci et al., 1991)。

  32. Peter Novick

    アメリカ人細胞生物学者。シェックマン研出身。1985年,イェール大学に研究室を持つ。2008年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校(Ravindran, 2014)。

  33. 小胞体—ゴルジ体間の輸送を再現するin vitro解析系の確立

    この論文は70歳の誕生日を迎えたコーンバーグに捧げられている(Baker et al., 1988)。

  34. Sar1pの発見の頃

    この頃,ランディ(シェックマン)からアキ(中野)に連絡があり,「君の見つけたSar1pはとても大事なタンパク質だから,すまんが私たちも研究をせざるを得なくなったよ」と言われたらしい。シェックマンのフェアな人柄を知ることのできる逸話である。

  35. Scot Emr(1954-)

    アメリカ人細胞生物学・分子遺伝学者。ハーバード大で学位を取ったのち,シェックマン研でポスドク,1983年にCaltechで研究室を持った。1991カルリフォルニア大学サンディエゴ校,2007年よりコーネル大学。

  36. ゴルジ体膜ではなく,牛の脳を材料に切り替えてSNAREの同定を試みた

    切り替えた詳しい経緯は論文からは読み取れない。SNAPが牛の脳から精製されていたためかもしれない。多賀谷さん教えてください。

  37. Thomas Shüdhof(1955-)

    ドイツ出身の生化学者。ドイツ,ゲッチンゲン大学で学位を取得したのち,1983年テキサス大学ポスドク,1986年に同大学で研究室をもつ。2008年よりスタンフォード大学。

  38. シナプス小胞の細胞膜との融合の研究

    シナプス小胞の放出とエンドサイトーシスによる再形成の研究では,イェール大学のデカミリ(Pietro de Camilli)の寄与を忘れてはいけない(Saheki and De Camilli, 2012)。

  39. SNARE仮説の誕生

    筆者の留学直後である。グレアム(ウォレン)がかなり興奮して,仮説について研究室メンバーに語っていたのを記憶している。

  40. SNAREとNSF

    発見当初,NSFは膜融合を引き起こす因子(NSFのFはfusion proteinのF)と考えられていたが,現在は,膜融合を終えて複合体をつくったSNAREを解きほぐして再活性化する因子と考えられている(NSFのFはfactorのFに再定義された)。しかし,HspなどのATPaseの研究室にいた筆者は,1993年にNSFがSNAREをほぐすシャペロン様の分子だと予言していた。実に的を射ていたことになる。

  41. Michael S. Brown(1941-)

    アメリカ人分子遺伝学者。ペンシルベニア大学でMD取得後,NIHでポスドクを経て,1971年よりテキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターで研究室を開く。Joseph L. Goldstein(1940-)アメリカ人分子遺伝学者。テキサス大学でMD取得後,NIHでポスドクを経て,1972年よりテキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターで研究室を開く。長年パートナーとしてコレステロールの代謝に関する共同研究を行っている。同研究で1985年にノーベル賞受賞。

  42. William S. Sly

    アメリカ人生化学者。セントルイス大学でMDを取得後,同大学で研究室をもつ。ムコ多糖が蓄積するリソソーム病,Sly症候群の発見者として有名。

  43. David D. Sabatini

    アルゼンチン出身の細胞生物学者,MD。ロックフェラー大学で学位を取得したのち,同大学で研究室を開く。1972年からニューヨーク大学医学部(Adesnik, 2002)。

  44. Kai Simons

    フィンランド,ヘルシンキ大学でMD取得後,アメリカ,ロックフェラー大学でのポスドクを経て,ヘルシンキ大学でセミリキフォレストウイルスの生化学の生化学的解析を始めた。1975年のEMBLの創設に関わり,1998年までEMBLの重鎮として,ロスマンを始めとして,多くの小胞輸送研究者に影響を与えた。1998年にドイツ,マックスプランク分子細胞生物学遺伝学研究所(MPI-CBG)の創設に関わった(Sedwick, 2008)。

  45. Keath Mostov

    アメリカ人細胞生物学者。ブローベル研で学位取得後,1984年にホワイトヘッド研究所で研究室を持つ。1988年よりカリフォルニア大学サンフランシスコ校。

  46. Ira Melman

    アメリカ人細胞生物学者。音楽家を志していたが,科学者に転向し,カリフォルニア大学バークレイ校で学位取得。イェール大学,ロックフェラー大を経て1981年にイェール大学で研究室を持つ。2007年よりジェネッテック(Mellman, 2007)。

  47. Juan Bonidatino

    アルゼンチン出身の細胞生物学者。1982年からNIHのクラウスナー研でポスドク,その後すぐに独立して現在に至る。ascb.org/files/profiles/Juan_Bonifacino.pdf

  48. TGNとエンドソームやリソソーム,そして細胞膜を結ぶ小胞輸送のネットワーク

    筆者の留学当時,分泌経路の最下流である,エンドソーム界隈での輸送については,研究室ごとに結果が違っていてかなり混乱していたように記憶している(筆者は今でも混乱しているが)。細胞の種類(分化状態)で,この辺りの輸送過程はかなりカスタマイズされているようである。

  49. AP複合体

    ボニファチーの研のポスドクであった現・理研の大野らによって,AP複合体のクローニングが進められ,膜受容体結合特異性の分子基盤が明らかにされた。

  50. Hugh Pelham(1954-)

    イギリス,ケンブリッジ大学で学位取得後,アメリカ,カーネギー研究所でのポスドクの後,MRC-LMBで研究室を持って現在に至る。

  51. Sean Munro

    ペラムの研究室で学位取得後,MRC-LMBで研究室を持って現在に至る。酵母を主なツールとして小胞輸送研究分野で活躍している。図体は大きいが繊細・緻密かつ地道な研究を続けているナイスガイな研究者である{BenShort:2011fi}。

  52. Graham Warren(1948-)

    イギリス出身の細胞生物学者。ケンブリッジ大学で学位取得の後,イギリスでポスドク,1977年にEMBLで研究室を持った。1985年からイギリス,ダンディー大,1988年からICRF,1999年からイェール大学,2007年からオーストリア,マックスペルーツ研究所(Sedwick, 2010)。筆者は1993年から1997年までウォレン研究室のポスドクだった。

  53. Pierre Cosson

    現スイス,ジュネーブ大学,François Letourneur:現フランス,モンペリエ大学

  54. Arbert Luini(1947-)

    イタリア人細胞生物学者。ミラノ大学でMD取得の後,イスラエル,ワイズマン研究所,アメリカ,NIHでポスドク,1986年にイタリア,マリオネグリ研究所で研究室を持った。2009年よりナポリのイタリア国立研究機構タンパク質生化学研究所所属。

  55. William E. Balch

    ロスマン研OB。現アメリカ,スクリップス研究所。

  56. 当時,イェール大学にはパラーデがおり,小胞輸送の若手研究者を集めていた。ボルチも1987年あたりにはイェール大学にいた。

  57. Gerard Waters

    ロスマン研から独立したばかりであった。

  58. Elizabeth Sztul

    パラーデ研出身。現アメリカ,アラバマ大学

  59. p115とTAP

    当時,ウォーターズのグループとスツールのグループは,同じ建物しかも同じフロアで競争していたということである(Barroso et al., 1995; Sapperstein et al., 1995)。

  60. p115

    ちょうどその頃,筆者もイギリス・ロンドンのウォレン研究室でゴルジ体の膜タンパ質のアンカーとなる構造タンパク質画分からp115を同定していた。p115の報告で先を越されてしまった筆者は,同じ画分に含まれる分子量130のタンパク質(GM130)の同定とクローニングを進めた。

  61. Marino Zerial

    イタリア,トリエステ大出身。フランス,パリのジャックモノー研究所と,EMBLのシモンズ研でのポスドクを経て,EMBLで独立。1998年からMPI-CBGのディレクター。

  62. 酵母や植物の液胞が哺乳類細胞のリソソームに相当する細胞小器官であることが明らかになった

    液胞研究者が引用しないので,あまり知られていないが,酵母や植物の液胞がリソソームに相当することを発見したのは,スイス連邦工科大学のマタイ(Phillipe Matile)(1932-2011)らである。(Matile and Wiemken, 1967; Matile, 1969)。(http://www.fibl.org/de/service/nachrichtenarchiv/meldung/article/zum-tod-von-philippe-matile-die-knospe-ist-meine-sichtbarste-spur.html)

  63. Elizabeth W. Jones(1939-2008)

    アメリカ人遺伝学者。MITで遺伝学で博士号を取得したのち,1974年にカーネギー・メロン大学で研究室を持ち,終生ここで過ごした。教育熱心な教員だったようだ(Connelly et al., 2009)。

  64. Tom H. Stevens

    現,アメリカオレゴン大学

  65. William Wickner(1946-)

    アメリカ人細胞生物学者。イェール大学卒。1971年にハーバード大学でMD,1974年にスタンフォード大学でPhD取得。アーサー・コーンバーグ研を経て,1976年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で研究室を持つ。1993年からダートマス大学医学部所属。シェックマンとはコーンバーグ研での先輩にあたり,とても仲が良い。

  66. Yasuhiro Anraku安楽泰宏(1936-)

    東京大学薬学部卒の分子生物学者。東大薬学部水野伝一研を経て,1976年から東京大学理学部植物科学研究室主催,1998年から帝京科学大学に所属(安楽, 2004)。

  67. Daniel Klionsky

    シェックマン研のOB。現アメリカ,ミシガン大学

  68. Yoshinori Osumi大隈良典(1945-)

    1972年に東大理学部で博士号取得,1974年からロックフェラー大学ポスドクを経て,1977年に東京大学安楽研助手。1988年から基礎生物学研究所,2009年より東京工業大学所属。2015年にガードナー賞及び国際生物学賞受賞。2016年にノーベル賞受賞

  69. 終わりに

    筆者は1990年代初頭のKDEL受容体の発見や,BFAの効果に魅せられ,小胞輸送分野の研究に参入し,まさに,この分野の発展を当事者として目撃してきた。ここ10年ぐらいはスター研究者達によって研究が展開して行くのを,指をくわえて見ている状況が多かったが,GM130の発見など,少しは分野の発展に寄与できたかと思う。これから小胞輸送関連の研究を始めようと考える読者は,小胞輸送研究の歴史の中から,これから研究を進めるにあたってのヒントや,この業界での生き残りのための知恵を見つけていただければ幸いである。ベテラン研究者である読者は,研究の背景やそれに付随する研究者たちの紆余曲折ドラマを感じとって楽しんでもらいたい。できるだけ多くの研究者,特に日本の研究者について触れるように努力したが,関連分野の全ての先生方とその研究に触れることができなかったことをお詫び申し上げる。

Refferences

Adesnik, M. 2002. David Sabatini--a lifelong fascination with organelles. 12. 3 pp.

Baker, D., L. Hicke, M. Rexach, M. Schleyer, and R. Schekman. 1988. Reconstitution of SEC gene product-dependent intercompartmental protein transport. Cell. 54:335–344.

Barroso, M., D.S. Nelson, and E. Sztul. 1995. Transcytosis-associated protein (TAP)/p115 is a general fusion factor required for binding of vesicles to acceptor membranes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:527–531.

Blobel, G. 2013. Christian de Duve (1917-2013). Nature. 498:300. doi:10.1038/498300a.

Bowen, R. 1929a. The cytology of Glandular Secretion. Quart. Rev. Biol. 4:299–324.

Bowen, R.H. 1929b. The cytology of Glandular Secretion (continued). Quart. Rev. Biol. 4:484–519.

Connelly, T.D., S.K. Lemmon, A.P. Mitchell, and J. Woolford. 2009. Teach, then trust Elizabeth W. Jones (1939-2008): mentor to many. 181. Genetics. 9 pp.

De Duve, C., and G.E. Palade. 1983. Albert Claude, 1899-1983. Nature. 304:588.

Dröscher, A. 1998. Camillo Golgi and the discovery of the Golgi apparatus. 109. 6 pp.

Duden, R., G. Griffiths, R. Frank, P. Argos, and T.E. Kreis. 1991. β-COP, a 110 kd protein associated with non-clathrin-coated vesicles and the Golgi complex, shows homology to

β-adaptin. Cell. 64:649–665. doi:10.1016/0092-8674(91)90248-W.

Helms, J.B., and J.E. Rothman. 1992. Inhibition by brefeldin A of a Golgi membrane enzyme that catalyses exchange of guanine nucleotide bound to ARF. Nature. 360:352–354. doi:10.1038/360352a0.

Matile, P. 1969. Vacuoles as lysosomes of plant cells. Biochem. J. 111:26P–27P.

Matile, P., and A. Wiemken. 1967. The vacuole as the lysosome of the yeast cell. Arch Mikrobiol. 56:148–155.

Mellman, I. 2007. Ira Mellman: from endosomes to industry. Interview by William A Wells. J. Cell Biol. 177:570–571. doi:10.1083/jcb.1774pi.

Orci, L., M. Tagaya, M. Amherdt, A. Perrelet, J.G. Donaldson, J. Lippincott-Schwartz, R.D. Klausner, and J.E. Rothman. 1991. Brefeldin A, a drug that blocks secretion, prevents the assembly of non-clathrin-coated buds on Golgi cisternae. Cell. 64:1183–1195.

Palade, G.E. 1971. Albert claude and the beginnings of biological electron microscopy. J Cell Biol. 50:5.

Palade, G.E. 1977. Keith Roberts Porter and the development of contemporary cell biology. 75. 17 pp.

Pelham, H. 2013. Building for the future. Elife. 2:1–3. doi:10.7554/eLife.00856.

Ravindran, S. 2014. Profile of Peter Novick. 111. 2 pp.

Saheki, Y., and P. De Camilli. 2012. Synaptic vesicle endocytosis. Cold Spring Harbor Perspectives in Biology. 4:a005645–a005645. doi:10.1101/cshperspect.a005645.

Sapperstein, S.K., C.M. Walter, A.R. Grosvenor, J.E. Heuser, and M.G. Waters. 1995. p115 is a gerneral vesicular transport factor related to the yeast endoplasmic reticulum to Golgi transport factor Uso1p. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:522–526.

Satir, P. 1997. Keith Roberts Porter: 1912-1997. 138. The Rockefeller University Press. 2 pp.

Sedwick, C. 2008. Kai Simons: membrane master. J Cell Biol. 183:1180–1181. doi:10.1083/jcb.1837pi.

Sedwick, C. 2010. Graham Warren: Gaining ground on the Golgi. J Cell Biol. 188:448–449. doi:10.1083/jcb.1884pi.

Simons, K., and I. Mellman. 1998. Thomas Kreis (1952-98). Nature. 395:446–446. doi:10.1038/26639.

安楽, 泰. 2004. 蛋白質との不思議な邂逅. 学術の動向. doi:10.5363/tits.9.12_54.

松浦, 学. 2002. グループ 2 イントロンによるレトロトランスポジション--タンパク質と RNA がくり広げる華麗なダンス. 蛋白質核酸酵素.

 

分泌経路と小胞輸送発見の歴史
Dojin BioScience Series 24
メンブレントラフィック  
〜膜・小胞による細胞内輸送ネットワーク〜
福田光則・吉森 保【編】
ISBN 9784759817232
2016年7月10日刊行

07-Nov-2016