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         2013 Seminar on Civil Law I  民法演習T
  
Purpose


  民法の体系的・有機的理解、および紛争解決能力の修得である。ここにいう紛争解決能力とは、具体的な事実についてその基本的な法律関係を整理し、そこから法的論点を抽出したうえ、紛争解決に向けた法律構成を選択・提示し、要件・効果を含む規範を定立し、事実を規範に当てはめて結論を導く能力を意味する。この能力は、次の各要素に分けることができる。
 @第1は、民法全体について重要な法概念および法制度を正確に理解すること、および、現在の判例・学説の到達状況を把握したうえで、そこにおける標準的な法理論を正確に理解することである。
 A第2は、@の理解に照らして設例の法律関係・問題点を抽出し、紛争解決のための法律構成および要件・効果を示すとともに、設例の当てはめにもとづいて紛争の具体的解決を導くことである。
 B第3は、複雑な事例に対して、修得した知識をもとに紛争解決の様々な可能性を考えることである。とくに、従来の実務や学説において争いのある問題、未解決・未知の問題について、自ら様々な可能性を考えて論理を組み立てることが求められる。
  

Summary


 この演習では、おもに契約法、物権法、損害賠償法を対象とする設例が扱われる。
 授業は、主に教員からの質問、受講生の解答という手法を用いて、次の順序で進める。
 @設例が広い意味でどのような民法上の制度・理論のなかに位置づけられるのかを確認し、そうした民法上の制度・理論について概観し、その基本理解を確固としたものに高める。A設例の事実関係から当事者間の基本的法律関係を抽出し、紛争解決に向けた様々な法律構成の可能性、および各法律構成の要件・効果を明確化する。B上記の作業を前提として、設例の事実関係を各法律構成・要件・効果に当てはめて判断し、具体的な紛争解決を導く。


Plan


第1回・第2回(設例1)契約の効力否定と清算
 錯誤、詐欺、強迫、公序良俗違反など、契約の効力否定要因の広がりと体系的位置づけを確認し、設例の当てはめを行うとともに、履行済みの契約の効力が否定される場合の清算関係の枠組みを考える。

第3回・第4回(設例2)契約の効力と履行
 契約に基づく債務が履行されない場合や弁済が受領されない場合を中心に、いったん有効に成立した契約にはどのような効力が付与されるのかを、売買契約の設例を用いて総合的に検討する。具体的には、弁済の提供、同時履行の抗弁権、履行遅滞、受領遅滞などが対象になる 。

第5回・第6回(設例3)物権変動
 不動産物権変動と動産物権変動の基本構造を確認し、両者の共通点と相違点を明らかにしたうえ、物権変動に関連する主要論点(二重譲渡、対抗要件、対抗問題における第三者、背信的悪意者排除論、取得時効と登記、即時取得の要件など)を検討する。

第7回・第8回(設例4)賃貸借
 不動産の利用を目的とする法律関係の種類および特質、適用される特別法を確認したうえ、不動産賃貸借契約の設例を素材として、不動産の利用関係から生じる様々な問題点(契約の終了、費用償還請求、賃貸物の譲渡、賃借権の譲渡・賃借物の転貸、信頼関係破壊の法理など)を総合的に検討する。

第9回・第10回(設例5)代理
 代理の基本構造および要件と効果を確認したうえ、無権代理・表見代理の設例を素材とした検討を行う。その際、代理に関連する主要論点(無権代理にもとづく法律関係、無権代理人の責任、表見代理の種類とそれぞれの要件、代理権の濫用、他人物売買と無権代理の関係など)について検討する。

第11回・第12回(設例6)担保責任
 売主と請負人の担保責任について、その種類、要件と効果、特徴などを確認・比較する。また、売主の瑕疵担保責任については、その法的性質に関する有名な学説とその内容も確認し、建物の売主や建築の請負人に関する特別法についても概観する。そのうえで、建築された建物に瑕疵がある設例を素材として、債務不履行責任も視野に入れながら、総合的に検討する。

第13回・第14回(設例7)損害賠償
 損害賠償請求の根拠規定にはどのようなものがあるかを確認し、それぞれの要件と効果の共通点と相違点を明らかにしたうえ、債務不履行・不法行為の双方に関係する設例を用いて、主要論点(過失の判断基準と立証責任、履行補助者の責任、通常損害・特別損害、損害概念および損害額の算定、過失相殺など)を総合的に検討する。

第15回総合演習
 第1回〜第14回で十分に扱えなかった論点、関連する付随的論点の検討を行う。さらに、今学期の学習についての総括、来学期以降の学習についてのアドバイスを行う。




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