Lecture & Seminar      Lawschool

         2012 Seminar on Civil Law I  民法演習T
  
Purpose


 民法の体系的・有機的理解および応用能力の取得を目的とする。ここにいう応用能力とは、具体的な事実から基本的な法律関係を整理し、そこから法的論点を抽出したうえ、紛争解決に向けた要件・効果等の規範を定立して、具体的事実をその規範に当てはめて結論を導く能力をいう。
  

Summary


 この演習では、おもに契約法、物権法、損害賠償法を対象とする設例が扱われる。第1の目的は、契約法、物権法、損害賠償法における汎用性の高い基礎的な制度を正確に理解し、個々の要件に設例の具体的事実を当てはめて紛争解決に向けた論理を示す能力を獲得すること求められる。講義で得た知識を実際の紛争解決に用いることのできる能力は法曹に必須であり、これを達成するには演習形式の授業が最も適している。第2の目的は、民法演習Uとあわせて、汎用性の高い基礎的な論点の理解を積み重ねることにより、民法全体の体系的理解ないし有機的関連性の理解をより確実にすることに求められる。全体を見通す目を有していなければ、利益状況の錯綜する紛争に対応できないと考えられる。さらに、第3の目的は、全体的理解を基礎とした高度な応用能力を要請することである。法に複雑な事案を適用して解決を導く能力は、実務家として必須だからである。

Plan


第1回・第2回(設例1)契約の効力否定と清算
 公序良俗違反、錯誤、詐欺、強迫など、契約の効力否定要因の広がりと体系的位置づけを確認し、設例への当てはめを行ったうえ、履行済みの契約の効力が否定される場合の清算関係の枠組みを考える。

第3回・第4回(設例2)契約の効力と履行
 契約に基づく債務が履行されない場合や弁済が受領されない場合を中心に、いったん有効に成立した契約にはどのような効力が付与されるのかを、売買契約の設例を用いて総合的に検討する。具体的には、同時履行の抗弁権、受領遅滞、危険負担、債務不履行責任などの制度が対象になる。

第5回・第6回(設例3)物権変動
 不動産物権変動と動産物権変動の基本構造を確認し、両者の共通点と相違点を明らかにしたうえ、動産売買契約および不動産売買契約を素材として、物権変動に関連する重要論点(民法177条の「第三者」についての制限説や背信的悪意者排除論、即時取得の要件、取得時効の要件と効果など)を検討する。

第7回・第8回(設例4)賃貸借
 不動産の利用を目的とする法律関係の種類および特質、適用される特別法を確認したうえ、土地および建物の不動産賃貸借契約の設例を素材として、不動産の利用関係から生じる様々な問題点(契約の終了、費用償還請求、賃貸人の交替、賃借人の交替ないし信頼関係破壊の法理、継続的契約関係の特性から導かれる契約内容など)を総合的に検討する。あわせて、不動産の利用に関連する諸問題(不動産賃借権に基づく妨害排除請求など)についても、時間の許す限りで検討の対象する。

第9回・第10回(設例5)代理
 代理の基本構造および要件と効果を確認したうえ、無権代理・表見代理の設例を素材とした検討を行う。あわせて、代理に関連する諸論点(白紙委任状と表見代理の関係、代理権の濫用、無権代理と相続、他人物売買と無権代理の関係、民法116条の類推適用など)についても可能な限り検討する。

第11回・第12回(設例6)担保責任
 売主と請負人の担保責任について、その種類、要件と効果、特徴などを確認し、売主の瑕疵担保責任については、その法的性質に関する有名な諸学説とその内容も確認する。また、建物の売主や建築の請負人に関する特別法についても概観する。そのうえで、建物に瑕疵がある設例を素材として、債務不履行責任も視野に入れながら、総合的に検討るす。

第13回・第14回(設例7)損害賠償
 損害賠償請求の根拠規定にはどのようなものがあるかを確認し、それぞれの要件と効果の共通点と相違点を明らかにしたうえ、債務不履行に基づく損害賠償の設例と不法行為に基づく損害賠償の設例の双方を用いて、関連論点(過失の証明責任、履行補助者の責任、損害概念および損害の算定、民法416条と相当因果関係概念の関係、損害額の調整に向けた諸制度など)を総合的に扱う。

第15回総合演習
 第1回〜第14回で充分に扱えなかった論点の検討や、関連する付随論点の検討を行う。さらに時間が許せば、担当者の判断により、今学期の学習についての総括、来学期以降の学習についてのアドバイス、最近のトピックの分析などを行う。




Back