Lecture & Seminar      Lawschool

         2008 Seminar on Civil Law I  民法演習T
  
Purpose


 民法の体系的・有機的理解および高度な応用能力の取得を目的とする。ここにいう高度な応用能力とは、具体的な事実から基本的な法律関係を整理し、そこから法的論点を抽出したうえ、紛争解決に向けたルールを定立して事実に当てはめて結論を導く能力をいう。
 

Summary


 本演習では、おもに契約法、物権法、損害賠償法を対象とする設例が扱われます。本演習の第1の目的は、契約法、物権法、損害賠償法における汎用性の高い基礎的な制度を正確に理解し、個々の要件を設例に当てはめて紛争解決に向けた論理を示す能力を確実に達成する点に求められます。講義で得た知識を実際の紛争解決に用いることのできる能力は法曹に必須であり、これを達成するには演習形式の授業が最も適しているからです。第2の目的は、民法演習Uとあわせて、汎用性の高い基礎的な論点の理解を積み重ねることにより、民法全体の体系的理解ないし有機的関連性の理解を得る点に求められます。このような全体を見通す目を有していなければ、利益状況の錯綜する今後の社会において生じる新しい課題に対応できないと考えられるからです。さらに、全体的理解を基礎とした高度な応用力の養成もまた、本演習の目的に属します。複雑な事案に法を適用して解決を導く能力は、実務家として必須だからです。

Plan

第1回・第2回 様々な契約の効力否定要因と契約の清算関係
公序良俗違反,錯誤,詐欺,強迫など,契約の効力否定要因の広がりと体系的位置づけを確認し,設例への当てはめを行ったうえ,履行済みの契約の効力が否定される場合の清算関係の枠組みを考える。

第3回・第4回 契約の効力
契約に基づく債務が履行されない場合や弁済が受領されない場合を中心に,いったん有効に成立した契約にはどのような効力が付与されるのかを,設例を用いて総合的に検討する(具体的には,同時履行の抗弁権,受領遅滞,危険負担,債務不履行責任などに関連する)。

第5回・第6回 物権変動
設例を用いて,不動産物権変動と動産物権変動の仕組みおよび基本的相違を確認するとともに,背信的悪意者排除論などの関連論点を検討する。

第7回・第8回 信頼保護制度
民法典の中に点在する信頼保護制度を横断的に検討し,その基本構造を確認したうえ,民法94条2項と即時取得を素材とした事例によって,事案の解決能力を涵養する。

第9回・第10回 担保物権による債権回収
抵当権を中心とした担保物権の基本構造を確認したうえ,具体的な設例を用いて,担保物権によってどのように債権が回収されるのかを具体的に検討する。

第11回・第12回 担保物権以外の手段による債権回収
保証,連帯保証,連帯債務,債権者代位権,詐害行為取消権,弁済による代位の制度など,担保物権以外の債権回収手段ないしこれに関連する諸制度の機能を総合的に確認したうえ,設例を用いて具体的な検討を行う。

第13回・第14回 総合演習
第1回〜第12回で扱えなかった論点の検討,あるいは過去問を中心とした検討を行う。さらに時間が許せば,今学期の学習についての総括,来学期以降の学習についてのアドバイスないしヒント,最近のトピックの分析を行う。




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