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         2011 Seminar on Integrated Civil Law I  民事法総合演習T
  
Purpose


 民事系の最終の開講科目であり、修了直前の実力向上および総仕上げにふさわしい実践的な内容で開講する。今年度は実務家教員・研究者教員の5名が1クラスを担当し、民事法の総合的理解に努める。真に法曹を目指す者は、是非、受講していただきたい。
 具体的事例において、請求や反論に関して適切な法律構成を提示し、法的解決を導く能力(問題発見・解決能力)、また、その前提として、具体的事実を的確に整理・分析して法的に評価する能力(事実認定能力)を獲得することが、主な目標である。その際、法的分析・推論能力、演習・レポートにおける法的議論・表現・説得能力も必要であり、これらの獲得も求められる。そして、以上を通じて、具体的事例を受任した場合の法曹としての使命・責任の自覚も期待される。こうした目標のため、実務家教員と研究者教員による多面的な質疑議論の活用し、各事例後のレポートを通じて理解の検証という授業手法を採用する。

  

Summary


 この演習の目的は、民法(および商法)の基本的理解ができていることを前提に、具体的事例にその理解を適用し、法的解決を導き、かつ、論述する能力を身につけることである。とくに、具体的事例について、事実を注意深く分析すること、その事実を法的に評価し適切な法律構成を提示すること、また、その法律構成にとって法的に重要な事実とそうでない事実を判別すること、それをふまえてその法律構成の要件・効果に事実を当てはめて判断することを目指す。これらは、具体的事例について適切な法的解決を導くための不可欠の要素である。さらに、そうした一連の法的判断について、口頭および文書によって論理的に一貫した説明ができることも重視する。

Plan


 以下のような代表的な請求事件において、当事者の主張する事実や認識が必ずしも一致せず、相手方がその請求を争う事例を題材とする。取り上げる請求事件の種類自体は目新しいものではないが、むしろそれらの事件を具体的に解決するための法律判断の力を徹底的に磨くことに主眼がある。
 まず、各事例の第1回では、事実の整理・分析にもとづいて、「法律関係の全体構造」を確認し、請求や反論について考えられる法律構成を明らかにする。次に、各事例の第2回では、請求を根拠づけるためにどのような事実が法的意味をもち、どのような事実を主張立証しなければならないか、また、相手方がその反論を根拠づけるためにどのような事実が法的意味をもち、どのような事実を主張立証しなければならないかを検討する。そして、各事例の終了後に、「特定の事実の法的意味または主張立証の要否」に関する課題 →A4サイズ1枚程度の文書(レポート)の提出 →採点・返却 →それ以後の事例の検討への反映、というサイクルとする予定である。
 なお、以下の事例は、受講者や授業進行に応じて変更する可能性がある。

第1回、第2回 売買代金支払請求(基本)
 売買契約にもとづく売主の代金支払請求に対し、買主が詐欺による取消し、錯誤による無効を理由に請求を拒むが、買主に一定の落ち度がある事例につい検討する。

第3回、第4回 土地明渡請求(基本)
 二重譲渡の第一譲受人による所有権にもとづく土地明渡請求に対し、第二譲受人が先に登記を備えたことを理由に請求を拒むが、第二譲受人には背信性を疑わせる事情がある事例について検討する。

第5回、第6回 貸金返還請求
 金銭消費貸借契約にもとづく貸主の貸金返還請求に対し、借主が弁済、準占有者への弁済、消滅時効などを理由に請求を拒む事例について検討する。

第7回、第8回 賃借物返還請求
 賃貸借契約の終了にもとづく貸主の目的物返還請求に対し、借主が終了原因とされる解除に関して、賃料支払い、信頼関係不破壊(非背信性)などを主張し、請求を拒む事例について検討する。

第9回、第10回 動産引渡請求
 所有権にもとづく動産の引渡請求、果実引渡請求に対し、占有者が売買契約、即時取得などによる所有権の取得を理由に請求を拒む事例について検討する。

第11回、第12回 保証債務履行請求
 債権者の保証債務履行請求に対し、保証人が代理権濫用や無権代理による保証契約の無効を主張して請求を拒むが、債権者が表見代理などを主張する事例について検討する。

第13回〜第15回 請負報酬支払請求、損害賠償請求
 請負契約にもとづく譲受人の報酬支払請求に対し、注文者が瑕疵担保責任を理由に瑕疵修補請求、および各種の損害についての損害賠償請求を求める事例について検討する。




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