Lecture & Seminar      Lawschool

         2009 Seminar on Integrated Civil Law I  民事法総合演習T
  
Purpose


 紛争において、実体法と手続法の密接な関係を理解すること(法的知識の獲得)、および、実体法と手続法の両面から問題を発見し、訴訟・執行を含めた最終的な解決を図る能力を獲得すること(問題発見・解決能力)が、主な目標である。それとともに、設例の事実関係を的確に整理すること(事実認定能力)、それにもとづく法的分析・推論能力、演習における法的議論・表現・説得能力の獲得も求められる。また、これらを通じて、紛争を受任する法曹としての使命・責任の自覚も期待される。

Summary


  権利は、実体法と手続法(民事訴訟法・民事保全法・民事執行法および倒産関係諸法を指すものとする)の協働によって初めて実現することができる。各法固有の課題は、すでにそれぞれの講義・演習でとりあげられているが、この演習は、そうした実体法・手続法の理解を前提にして、1個の紛争を最終的に解決するために、実体法・手続法を駆使して総合的に検討すること、それを通じて、実体法・手続法の協働関係を理解するとともに、実体法・手続法の理解を一層深めることを目的とする

Plan


 研究者教員と実務家教員のペアによる演習という授業形態をとり、実体法・手続法および理論・実務の緊張・協調の複合的観点を意識して授業を運営する。

第1回 土地明渡請求の実体法と手続法1
 第1回〜第3回は、土地明渡請求という典型的な紛争について、実体法上の理論的問題、手続法上の理論的問題、および実務上の問題を検討する。
 まず、第1回では、設例の事件を受任した場合に、紛争の解決に向けて、まず調査すべき点、考えうる法的手段、講じるべき措置などを検討し、実体法・手続法・実務の3つの観点を接合する思考の重要性を確認する。簡単な設例を用いることにより、この演習のガイダンスを兼ねる。


第2回 土地明渡請求の実体法と手続法2
 まず、設例について訴訟を提起する場合の法的構成、訴訟提起の方法などを検討する。共有物たる土地の明渡請求の設例であるため、民法の共有理論、民事訴訟法の共同訴訟論、および両者の関係が問題になる。また、予測されうる被告からの反論についても、その法的構成などを検討する。

第3回 土地明渡請求の実体法と手続法3
 第2回で検討した法的構成について、要件事実を検討する。原告に関しては賃貸借の解除原因、被告に関しては所有権の取得原因が重要になる。また、それらの要件事実の具体的な立証方法についても考察する。さらに、原告勝訴の場合、被告勝訴の場合のそれぞれについて、判決後にとるべき措置を検討する

第4回 債権譲渡の法律関係と訴訟1

 第4〜6回は、売買契約上の代金債権が譲渡された設例を用いて、実体法上の理論的問題、手続法上の理論的問題、および訴訟の形態を検討する。
 まず、第4回では、譲受人が債務者に対し訴訟を提起する場合について、訴訟物、請求原因、抗弁、再抗弁を検討する。代金債権に譲渡禁止特約が付いていることなど、法律上問題となりうる点を踏まえる必要がある。

第5回 債権譲渡の法律関係と訴訟2
 この回では、代金債権が二重に譲渡されていたことが明らかになった場合について、いずれの譲受人が優先するかを検討する。設例の事実関係を丁寧に整理すること、および譲渡禁止特約、債権譲渡の対抗要件に関する理解が不可欠になる。

第6回 債権譲渡の法律関係と訴訟3
 この回では、債務者に対し訴訟を提起した譲受人が敗訴する可能性あると考え、譲渡人を訴訟に引き込もうとする場合のその方法と種類、それぞれの方法をとる場合の要件と効果について検討する。

第7回 債権者代位権の行使と訴訟1
 第7〜9回は、債権者代位権が行使された設例を用いて、実体法上の理論的問題、手続法上の理論的問題、および実務上の問題を検討する。
 まず、第7回では、債権者が第三債務者に対し債権者代位訴訟を提起する場合について、訴訟物、請求原因、抗弁、再抗弁を検討する。第三債務者が反対債権をもっている可能性があることなど、法律上問題となりうる点を踏まえる必要がある。

第8回 債権者代位権の行使と訴訟2
 この回では、債権者代位権が裁判外で行使された場合と債権者代位訴訟が提起された場合のそれぞれについて、債務者や第三債務者がどんな法的影響を受けるか、判決がどのような効力をもつかを検討する。これにより、債権者代位権をめぐる実体法と手続法の交錯について考察する。

第9回 債権者代位権の行使と訴訟3
 前回に引き続いて、債権者代位をめぐる実体法と手続法の交錯についての考察を行う。また、設例の訴訟の具体的な帰趨を予測しつつ、実際上、第三債務者としてどのように対処すれば、どのような効果が得られるのかについて検討する。

第10回 損害賠償請求訴訟1
 第10〜12回は、建築された建物に欠陥があるという設例を用いて、専門的知見を要する損害賠償請求訴訟に関する実体法上の理論的問題、手続法上の理論的問題、および実務上の問題を検討する。
 まず、第10回では、損害賠償請求の法律構成を明らかにし、訴訟物、請求原因、および設例の当てはめを行う。被告とする者が、建築請負人と建築士であるため、ぞれぞれれの法的地位に応じて法律構成を考える必要がある。

第11回 損害賠償請求訴訟2
 この回では、前回の法律構成による場合に、訴訟の提起までに原告としてなすべきこと、利用できる各種の制度と手続きなどを検討する。また、訴所が提起された場合に、裁判官として訴訟運営上どのような工夫をすべきかを検討する。いずれも、本設例が建築に関する専門的知見を要することを踏まえる必要がある。

第12回 損害賠償請求訴訟3
 この回では、建築士が、工事監理はしておらず報酬も受けていないと反論した場合、それが法律上どのような意味をもつかを検討する。これにより、近時の最高裁判決を理解するとともに、それが実務上もつ意味について考察する。

第13回 土地売買をめぐる実体法と手続法1
 第13〜15回は、土地売買をめぐるやや複雑な設例を用いて、実体法上の理論的問題、手続法上の理論的問題、および実務上の問題を検討する。
 まず、第13回では、売買された土地がその前に譲渡担保に供され、所有権移転登記が経由されていた場合に、売主が買主に対し、所有権移転登記請求以外に、どのような請求をすることができるか、両請求は手続法上どのような関係になるかを検討する。

第14回 土地売買をめぐる実体法と手続法2
 この回では、前回の両請求について訴訟物と請求原因について検討する。また、譲渡担保の被担保債務に関して、借用証書に微妙に異なる2種類のものを想定し、それぞれのケースについて被担保債務の効力を検討する。

第15回 土地売買をめぐる実体法と手続法3
 この回では、前回までの訴訟において、被告に十分な判断能力がなく、実際にはその子が応訴していた場合について、訴訟係属中にその事実が判明したときの訴訟指揮、確定判決後にその事実が判明したときの判決の効力について検討する。




Back