第1回 相殺
相殺は、簡便な決済機能としてだけでなく、現在では担保的機能が重要になっている。相殺一般の要件、効果を理解することはもちろん、相殺予約、相殺と差押え、債権譲渡と差押えの問題を通じて、相殺の担保的機能がどのように実現されるか、どのような制限があるかを検討する。
第2回〜第4回 保証、多数当事者の債権関係
債権の人的担保の代表例は保証であり、実務的な需要はいまなお衰えていない。保証の成立要件、付従性・補充性・随伴性などの性質をもつ保証債務の内容、また、保証人が債権者に弁済した場合の保証人の求償権について検討する。また、人的担保として機能しうる債務引受や連帯債務、および、その他の多数当事者の債権関係である連帯債務、分割債務、不可分債務についても、比較検討する。
第5回〜第8回 抵当権
債権の物的担保・担保物権の代表例は抵当権であり、極めて広範囲で利用されているが、理解すべき点も多数にのぼる。抵当権の成立要件、対抗要件としての抵当権設定登記、抵当権の効力が及ぶ被担保債権の範囲と目的物の範囲など、基本的事項は確実に理解する必要があり、また、抵当権と目的物の賃借人の関係、譲受人との関係、侵害者との関係も重要である。さらに、物上代位、担保不動産競売、担保不動産執行は、抵当権によって債権が回収される実行局面に関するものであるり、共同抵当についても実行時に複雑な問題がある。このほか、法定地上権、根抵当権、および、根抵当権と同じく不特定の債務を担保するための根保証についても検討する。
第9回〜第10回 担保・求償・代位
第三者(担保していた保証人や物上保証人が代表である)が債権者に弁済した場合、被担保債権自体は消滅するが、第三者は債務者に対し求償権を取得する。その求償権を担保するために、弁済による代位が存在するが、その制度としての仕組みの理解は容易ではなく、またその効果についても理解において注意すべき点が多い。
第11回 質権、留置権、先取特権
抵当権以外の約定担保物権として、質権、また、法定担保物権として、留置権、先取特権がある。実務的意義は必ずしも大きくないが、それぞれ一定の場面では重要な役割を果たしている。それぞれの意義、要件、対抗要件、効力などについて検討する。
第12回〜第15回 非典型担保
非典型担保として、仮登記担保、譲渡担保、所有権留保について検討する。仮登記担保については詳細な特別法があるが、譲渡担保、所有権留保については明文の規定はなく、その規律は判例・学説を中心とする法理に委ねられているため、その理解には注意が必要である。また、あわせて動産担保という観点から動産売買先取特権、債権担保という観点から債権質と債権譲渡担保についても、ここで詳しく検討する。
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